「二人だけの。」
(※7/9「届いて……」の続きのお話。)
彼女が居なくなってから1ヶ月が過ぎた。
学校中探し回っても人に聞いてもなんの手掛かりもなかった。
放課後、気分転換に屋上へ上がると珍しく誰も居ない貸切状態だった。フェンス越しに景色をぼんやり眺めて溜息をつく。
「なぁに?まーた悩み?溜息つくと寿命縮むんだよ?知ってた?ヤバくない!?」
突然後ろから声をかけられてビクッとなる。
聞き覚えのある声色と調子のいい話し口調にピンときた。
ずっと探し回ってた金髪派手ギャルのあの子だ!
「…も〜びっくりさせないでよ!ずっとあなたを探してたのに…。今までどこに居たの?学校中探したのにどこにもいないし誰も知らないし。」
「え、えぇ〜っとぉ、休んでた!ははっ。」
「そんなの嘘。あなたこの学校の人じゃないでしょ?」
「うげっ!んー…あ〜ってか、なんで私の事探してたの?」
図星なのか、あからさまに動揺して話題を変えようとした。
「それは、あなたにお礼を言いたかったから。おかげで彼と付き合うことができたって!…で、あなたどこの学校の人なの?」
逃げられないようにフェンスに追いやって問い詰める。
すると観念したのか彼女は重い口を開いた。
「言っても絶対笑わない?」
「もちろん。」
「…私、実は人間じゃないんだよね?」
「……(ん?)」
「あー、えっと、お化けとかでもなくて、あの〜その…か、神様、代理?みたいな?」
「……。」
「キャー言っちゃった!ねぇ、これ絶対他の人に言っちゃダメだよ!!!ふたりだけの秘密、ね!」
「……は?」
「夏」
夏と聞くとなぜか物寂しく感じる。
皆さんは「夏」と聞くとどういう感情が湧きますか?
上手く言葉に言い表せないけれど、私にとって夏はまるで俯瞰的に見ている誰かの夢のように、現実離れしていて。
沢山の楽しいできごとがあったはずなのに、なぜか心には寂しさが残る。
そんな奇妙な相反する感情がどこからともなく湧き上がる季節なのです。
もっと直接的にいうと、私にとって夏は夢見心地で気持ちの悪い季節だということ。
そして、そんな気持ち悪い季節が好きだということ。
「隠された真実」
俺の仕事は社会の裏で動くこと、すなわちスパイというやつだ。
所属の無い野良スパイの俺は表向き"探偵"として個人的に依頼者の依頼を請け負っている。
ある日、事務所に1人の女子高生が来た。
「…オセロ。」
彼女はポツリと呟く。俺はニヤリと笑って応える。
「…あ〜はいはい。オセロね。で、依頼は?」
「消して欲しい人がいる。」
「ほぉ。女子高生からなかなか物騒な言葉が聞こえたけど、まぁ、ご依頼とあれば。」
オセロとはごく一部の人間しか知らない暗号。表向きの探偵の依頼ではなく、裏のスパイ活動の依頼ってことだ。
数日後、ある政治家が自宅で急死したニュースが流れた。持病の悪化で事件性はなく不慮の事故死、と。
まぁ、俺の仕事だけど。
今日も平和のため探偵 兼 スパイとしての非日常のような日常は続く。
「風鈴の音」
「チリンチリーン、チリンチリーン」
風に揺られた風鈴の爽やかな音が聞こえてくる。
隣の家には年配のおじいさんが1人で暮らしていた。
おじいさんは毎年夏頃になると風鈴を軒先に出す。僕にとってあの風鈴の音はいつの間にか夏の風物詩のひとつになっていた。
今年の夏、ついに風鈴の音は聞こえなかった。
おじいさんは夏前に天国へ旅立ってしまったのだ。
風鈴の音が聞こえないと無性に寂しく感じる。
僕は雑貨屋に行って風鈴を買った。
「チリンチリーン、チリンチリーン」
おじいさんがいた頃とかわらない風鈴の音色に今日も癒される。
「心だけ、逃避行」
午後の授業はどうしても眠くなる。
意識が半分遠のいていき、変な浮遊感のままグラウンドをぼーっと眺める。
すると、まるで目を開けたまま夢を見ているような不思議な感覚になる。
体は教室にあるけど、心はグラウンドの方へ逃避行している。
所謂、白昼夢というやつだ。
僕は今日もこうして体を置き去りにして、心だけで夢の世界へ逃避行する。