「半袖」
真っ直ぐ伸びた綺麗な黒髪に、可愛らしい花柄ワンピースのあの子。
まるで人形のように愛らしい、
可憐な少女を体現したかのような女の子。
僕はそんな彼女の秘密を知った。
ラフな半袖姿でいつもとはだいぶ違う格好の彼女を街で見かけた。
陶器のような細くて真っ白な腕をあらわにして。
そんな腕の辺りにチラチラ見え隠れするものがあった。
僕は思わず彼女を追いかけて咄嗟にその腕を掴んでしまった。
「うわぁ!びっくりした…君、同じクラスの子だよね?」
「あ、ごっ、ごめん!いきなり掴んだりして!あのっ、この腕のって…。」
僕が掴んだその腕には肩から二の腕にかけて龍や桜の和彫りが入っていた。
「あー…驚いた?うちの家系そういう所だから。怖がらせちゃうから、みんなには言ってないんだよね? 君も、内緒にしてくれるかな?」
あぁ、だから彼女はどんなに暑い日でも半袖を着なかったのか。
思いがけない出来事に言葉が上手く出てこなくて、コクコクと頷いた。
「ふふっ、ありがとう。約束、ね?」
おそるおそる彼女の小指に自分の小指を結んだ。
「もしも過去へと行けるなら」
「過去に行って、変えたい未来はありますか?」
大学の講義中に教授から質問されたある学生。
「ありません。」
間髪入れず顔色ひとつ変えずに首を真横に振ってそう答えた。
なぜか、そんな彼女のその発言が脳裏に焼き付いて、閉講後、思わず彼女に声を掛けた。
「あ、あのっ。今の講義で…過去へ行けるならっていう質問の答えなんですけど…。」
「…あぁ、今までたくさんの選択をしてきて、私の人生がある。変わることない過去の事なんかクヨクヨ悩んでても仕方がないと思ったから、ああ言ったまで。まぁ、究極のポジティブってかんじ?」
「ふふっ。(相変わらず最高にポジティブだな。)」
「?」
明るくそう言った彼女から目が離せなかった。
もっと彼女を知りたい、私に無いものを持っている彼女に。
そしていつか打ち明けたい、私があなたと出会うために過去へ戻ってきたことを。
「True Love」
ピンク色のマーガレットや青い勿忘草、ローズクォーツやアメジスト。
意味は全て『真実の愛』。
こうして愛を伝える物は沢山ある。
けれど、僕は勇気を出して自分の口で君に伝えたい。
気恥ずかしくて顔を真っ赤にしながら、少しぶっきらぼうに呟く。
「心から、愛しているよ。」
「またいつか」
幼い頃、小児病棟に入院していた時期がある。入院期間中にある男の子と仲良くなり、暇潰しの遊びとして文通ごっこをしていた。
毎日、今日あったちょっとしたできごとや面白かったことを書いて手紙を交換しあう。
文通ごっこのおかげで入院期間は退屈せずに過ごせた。
ある日の文通で彼の手紙には『明日、手術がある。すごく嫌だなぁ。…この手術が終わったら僕は退院なんだ。でも、君に会えなくなる方がもっと嫌だよ。君も早く元気になってね。またいつか。』とあった。
翌日、彼の手術は成功した…と思ったのに手術後状態が急変してしまい、助からなかった。
本当にもう、彼に会うことはできなくなってしまった。悲しくて辛くて苦しくて一日中泣いた。
それから彼に向けて私は最後の手紙を書いた。
『私が入院していた時、退屈しないように沢山、楽しませてくれてありがとう。私だって君に会えなくなるの嫌だよ。でも、私は君の分まで生きる。またいつか、必ず会おうね。』
「星を追いかけて」
友達に誘われて、インディーズバンドのライブに行った。
最初はバンドなんて興味がなくて、単に暇潰しのつもりで行ったが、いつの間にか彼らの演奏に夢中になってしまった。
暗闇の中で舞台上はキラキラ光り輝いていた。
私は無我夢中で彼らへ手を伸ばしていた、まるで届く事がない星を追いかける無邪気な子供のように。