光と霧の狭間で
友人がある日、突然仕事をやめて消えた。
人づてに半月も色々と探して、ようやく居場所を突き止めたが、友人は地方の山奥にいた。
「おい、探したんだぞ!急に連絡がつかなくなって心配したんだ。お前ひとりなのか?奥さんはどうしたんだよ。連絡つかなくてさ。」
「…。」
「おい、おい聞いてるのか?もう少しで捜索願い出すとこだったぞ?」
「…。」
友人がおかしい。目が据わったまま口角だけ上げて、ずっと山の方を見ていた。
俺の質問には全くの無反応で、しばらく俺も無言で様子を伺っていると突然口を開いた。
「…光と霧の狭間で。」
「は?光と、霧?狭間?なんの事だよ?」
「光と霧の狭間で。」
顔は俺の方を向こうとせず、口だけが動いた。
俺は気味が悪くて、逃げるようにその場を後にした。
友人は「光と霧の狭間で、光と霧の狭間で、光と霧の─────」まるで壊れたロボットのようにそれだけをずっと繰り返していた。
砂時計の音
子供の頃、祖父の家にあった砂時計が私のお気に入りだった。
暇があれば砂時計をひっくり返し、「サラサラ」と耳触りのよい音と滑らかに流れ落ちる砂を眺めては癒されていた。
大人になると時間に追われて砂時計を見ている余裕なんてなくなってしまった。
そんなある日、久しぶりに予定のない休日、あてもなく街を散策していると、少し奥まった路地の裏に平仮名で『あんてぃく』と書いてある雑貨屋を目にした。
不思議と私の足は無意識にその店へ向かっていた。
古めかしい重厚な扉を開けると、どこか懐かしく、沢山の品物が雑多に置かれたごく普通の雑貨屋だった。
「いらっしゃい。…うーん、欲しいのはこれかな?」と声をかけてきたのは、エプロン姿の店主と思しき老紳士。
私を見てそう言いうと、そこら辺の棚からヒョイと砂時計を取り出した。
「時間に追われているんだろう?たまには砂時計の音を聞く時間の余裕を持つとよいよ。」
それから私はこの店の常連になった。
消えた星図
天体観測は良い。
快晴の夜、空を見上げると満天の星空。
ある夜、僕は友人を誘って星を見に行った。
赤いセロハンを貼った懐中電灯、コンパスに折りたたみ椅子、双眼鏡と星図を持って友人と意気揚々と観測ポイントへ向かう。
観測地に着いた時、僕の右手にしっかり握られていたはずの星図がどこにも見当たらないかった。
どこかで落としてしまったようで、必死に探したが一向に見当たらない。
肩を落としていると、友人が慰めるように言う。
「俺は天体観測?なんて今日が初めてだけどさ、その、星図?だっけ?がなくてもホラ!上、見てみろよ、すげぇ綺麗だぜ。」
子供のように無邪気に笑う彼につられて僕も空を見上げた。
「…あ、本当だ。」
愛-恋=?
愛は打算無しに無条件に相手を想いやる心。
対して恋は自分が相手に抱く感情だから…
愛から恋の感情を引いた時、少しの邪念もない本当に純粋な愛が生まれると思う。
ただひたすら、相手のことだけを想う真実の愛。
よって答えは、
愛-恋=真実の愛
になると考える。
梨
卒業アルバムを見ていたら最後のフリースペースに同級生の連絡先を見つけ、繋がらないだろうと思い面白半分で連絡をしてみた。
案の定、連絡は帰ってこない。
そんなある日たまたま散歩に出かけた。
無意識に普段は行かない道に進み、角を曲がると真横に斎場が見えた。
「こんなとこに斎場があるとは」と思ってチラと見ると、誰かの葬儀の最中だった。
好奇心から名前を見ると、この前たまたま卒アルで見つけた彼の名前だった。
「あぁ…どうりで、彼からの連絡が梨の礫だったわけだ。」