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4/8/2023, 10:17:16 AM

【 相棒 】

「待ってくれよホームズ!」
「ハハハ!こんな面白い事件、待ってなんて居られないよワトソン!!!」

ぜぇぜぇ。と息を切らしながらホームズの後ろ姿を追いかける。全く、君より私の方が歳老いているのをわかって欲しいものだ。いや、それは一生無理だろう。
ホームズの興味を引く事件だ。さぞかし“楽しい”ものなのだろう。少し立ち止まり息を整える。

「ワトソン、最近3ポンド太ったね?運動が足りていないんじゃないか?」
彼が大きな声で、それもロンドンの街中で言う。私は、恥ずかしい気持ちで、ホームズの方へ走ってゆく。心做しか、ホームズの目がキラキラと子供のように輝いて見えた。

「さぁ!僕のいない間の3ポンド分、僕と一緒に埋めていこうか」
「……ハハ!勿論だよホームズ!」




ロンドンの街には、探偵と退役軍医の声が響いていた。

【これからも、ずっと】

4/7/2023, 12:15:10 PM

【 沈む夕陽と魔術師 】


疲れが押し寄せてその場にへたりこむ。これ以上この場にいたら頭がおかしくなりそうだ。いや、もうおかしくなってるのかもしれない。異次元へと行ったのが何日前だったかも忘れてしまった。どのくらい経った?2日?それとも3週間だろうか。いや、もしかしたら1時間だけかもしれない。異次元と現実とでは時間の流れが違うと教えられた。魔力がもう残り少ないのか、手がいつもより震えている。スリングリングを付けて、いつもより何回か多く回す。ポータルをくぐると、サンクタム・サンクトラムの大きな窓の場所に出た。窓辺に座り、窓に体重を預ける。ちらりと外を見ると、沈んでゆく夕陽が見える。赤く、綺麗に輝いている夕陽。大きな窓には、夕陽の光が入り、明かりがなくとも照らしてゆく。
夕陽。ここは異次元では無い。現実世界。クロークが私を包み込んで、手を撫でてくる。このまま寝てもいいよ。そう言っているのだろうか。

「…御言葉に甘えるよ、クローク。ありがとう」

礼を言い、目を瞑る。