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8/4/2023, 7:40:15 AM

「…そろそろ起きたまえよ、ワトスンくん」

もうとっくに太陽が登りきっているというのに、私の相棒兼助手は未だに夢の中だった。すやすやと寝息を立てて、5分前には傍に立っていた僕には全く気付いちゃいない。

彼が目を覚まさない限り、僕の冒険は始まりやしない。さぁ早く起きたまえよワトスン。僕の相棒。僕の親友。

咥えていたパイプから口を離し、彼の手に唇を添えた。

「……これでも君は起きないのかい。」

少々呆れつつ、彼が目を覚ますのを待った。

8/3/2023, 3:17:22 AM

また、病室がひとつ空いた。
空になった病室の窓から外を見下ろすと、楽しそうに笑っている男の子とその家族が抱き合っていた。
ふと、少しだけ口角があがる。
こちらに気付いたのか、男の子が私に手を振った。
「ありがとう!」
そう言ってくれた。
手を振り返して、後ろを振り返ると、同僚がニヤニヤとしてこちらを見ていた。
顔が赤くなる。見られた。最悪だ。
「まさか君にもそんな一面があったんだな?ふーん?」
「減給にしてやる」

4/12/2023, 1:13:44 PM

【 拝啓 , 親愛なる君へ 】

やぁ、ワトスン。前までの暖かい季節が嘘のように去っていってしまったね。今はもう肌寒いほどだ。
コートを買ったんだ。茶色の暖かそうなコートをね。
君が居なくなってから、君が好きそうなものばかり選んでしまっているよ。食べ物も、雑誌も、服装も。
君が隣にいないとやっぱり変な気分だ。
椅子が一つ空いてるだけなのにな。全くおかしなことだ。

ワトスン、もし君がこの手紙を読んでいるのなら、笑ってくれるかい?
君がいなくなったのは、もう随分と前なのに、未だに寂しくなってしまうんだ。


返事は書かなくてもいいぜ、ワトスン。
君が読んでくれたらいいんだ。

僕が、そっちに行った時はまた、


一緒に冒険をしてくれるかい?ワトスン__いや、







4/11/2023, 10:11:51 AM

【 身を蝕む純愛 】

「ふ、っ……ぐ……ッ」
まだ夜は明けていない薄暗い部屋の中、自分の声だけが聞こえる。苦しみ、痛みをこらえる声。
禁術を犯す度、痛みが増してゆく。手が震え、死んだ神経に激痛が走る。痛みで気を失いそうになる。が、それも痛みで目が覚める。

何故、ここまでするのか。そう問い出す人もいるだろう。

ソーサラースプリームだから、世界を救う為だと勝手に思い込む輩もいるだろう。

否、私はただ彼女が幸せでいられるために……

彼女を守れたら、まだ人間の私で守れたら…

私が死んでも悲しまないように、嫌われた。


傲慢な皮を被り、彼女を突き放した。






ぐちゃぐちゃな、

けれど、

優しい


醜く歪んだ純愛だと、

4/10/2023, 12:04:43 PM

【 幸せな日 】

暖かい。前迄は冷たい風が頬を刺したのに、今では暖かく優しい風が頬を撫でてくる。目に髪がかかるのを手ではねながら、暖かいNYの街を歩く。
今日は異次元からの敵は今のところ感知していないし、気配は感じられない。ストールの形をしているクロークが、ちょいちょいと私の顔をつつく。つつかれた場所を触ってみると、風に吹かれてきた花弁が顔についていた。
可愛らしい、青色の花。

まるでどこかの異次元を移動できる少女によく似た花だと思った。

「クローク、今日は本屋にでも行こうか。」

そう話しかけると、クロークは私の頬を撫でる。

一般人からしたら、暖かく天気の春爛漫とした日

私、いや私達にとっては、幸せな日

【春爛漫】

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