語り部シルヴァ

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12/13/2025, 10:06:37 AM

『遠い鐘の音』

どこかで鐘が鳴り響いている。
反射的に身体を起こし周囲を見渡す。

「ははっ、あんたの故郷は鐘があったのかい?」
「あはは...ええ、毎日のように聞いていたもんで」
恥ずかしさを誤魔化しつつ答える。

故郷を出て街で働くことになったが
どんな運命かここでも鐘の音を聞くとは思ってもなかった。
故郷とは違う音色だがあの重く響く音を聞くと
反射的に体が動いてしまう。

鐘の音を聴いて休憩の指示がでるとこも故郷そっくりだ。

故郷から出たくて街に来たのに、
これじゃあいつまで経っても街に慣れそうにないな。

語り部シルヴァ

12/12/2025, 10:10:06 AM

『スノー』

静かに降り出す雪を口を開けて待っていた。
口に入った瞬間冷たい刺激が
一瞬脳にまで走ったと思いきや心はポカポカ。

楽しくなって何回も口を開けては飲み込む。
刺激を受けては心躍る。その繰り返し。

辛いこともこれで解決。何度も何度も脳が弾ける。
上着なんて要らなくなるくらいあったまってきた。

もっと、もっと欲しい!
口を開けるだけじゃだめだ。
高い所から思い切りジャンプだ!

これで...いっぱい...!


『えーこちら死体を発見。
原因は薬物の過剰摂取による幻覚や奇行の末
飛び降り自殺だと思われる。どうぞ』

語り部シルヴァ

12/11/2025, 10:15:15 AM

『夜空を越えて』

普段から手に届かなかった空も今なら届く。
...分厚い鉄さえなければ。
窓越しに見るとビルの群れが光り地上と
空の両方に星が見えるようでまるで別世界にいるみたいだ。

そうしていくうちに雲が地上を覆い隠す。
雲の上は...透き通った宇宙がちらっと見える。
地上からだとぼんやりしていた宇宙が
端っこだけだがこんなにも綺麗に見えるなんて...

空の旅をしてよかった。
普段なら見ることのできない景色だって
見れるんだから...
国を超えて空を超えて、
宇宙の端っこを見ることができて...

いい旅になりそうだ。

語り部シルヴァ

12/10/2025, 11:18:14 AM

『ぬくもりの記憶』

枯葉に体を埋めて眠る。
こんな寒い日にはこれに限る。
寒い夜はいつも暖かい場所のことを考える。
日が差す日中の公園とか少しボロい四角形の機械とか...

けれど一番頭に残ってるのは、頭を撫でられた時のぬくもり。
小さい頃頭を撫でられたことがよくあった。
今じゃその手はどっかに行ってしまったが...

毎日は鬱陶しかった。
けれどそれよりも嬉しさが勝っていた。
あぁ...今日はやけに寒さを感じない。
あの温もりが私を包んでくれているような気がする。

今日は...ぐっすり...眠れそうだ。

語り部シルヴァ

12/9/2025, 10:19:21 AM

『凍える指先』

指が痛い。
ポケットに突っ込んでも寒さを凌げてる気がしない。
いつもハンドクリームで保湿できてるはずなのに
指先が乾いて服の生地に引っかかる。

手袋を忘れた。
寒さが指先に刺さって風が染みる。
本当に指先だけが凍っている感じだ。

さっさと帰りたいのに今日は外せない用事がある。
我慢して用事を終わらせないと...

ポケットから手を出して自分の息を吐きかける。
赤くなった手は少し割れてしまった。

あー...また一から手入れし直しだ。

語り部シルヴァ

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