今日は大晦日。
嫌いな人も
死ぬほど転けて欲しいと思う人も
みんな口を揃えて
良いお年を!という
1年の終わりの日。
寝て起きたら年を越してたなんて
よくあること。
猫又もその一匹。
またある者は天使とも悪魔とも
しっくり来ることはなく、
ある者はフクロウに似ていて
夜中まで店を営業、
ある者は狐に似ていて
白雲峠に入り浸っていた。
それぞれの者たちが
それぞれのことをしながら
それぞれの形で年を越す。
一見普通とも言える平々凡々な文だが、
とてつもない平和が隠れている。
誰しも平和には気づけなくなるもの。
私もまたその1人と言えよう。
今年が終わり、
また新たな者に焦点を当ててみるかは
その日の気分次第。
ここでの今年もありがとうございましたは
"Good Midnight!"
にでも置き換えようか。
さようなら、2025年の巳年。
今年最後を四字熟語で表すと
睡眠万歳!
はい、寝ましょう。
光る海を
手漕ぎボートで移動する。
水面に映る星屑は
漕ぐ度に揺れて流れていく。
真っ黒な水が、
静かな辺りが、
ギコ…ギコ…と
漕ぐ音に集中させる。
月明かりだけが
私と一緒に
真夜中を過ごしてくれる。
腕が疲れてきたら
サンドイッチを食べたり、
本を読んだりする。
たまに昼寝して
流れに任せてみたり。
でも結局朝になっても
現在地がわからないまま。
真夜中に光るだけ。
冬だから
空気は寒くて冷たい。
ブランケットは
常に膝にかけておかないと。
雪は降らないけど、
雨も降らない。
瓶で海水を掬うと
星もキラキラと
瓶に入っていくみたいで
いつかの夏を思い出す。
遠い記憶の中、
サンドイッチの味と
星の光だけが忘れられなかった。
ここにあるのに
そこに無いような。
星はよく落ちてくる。
流れるんじゃなくて
落っこちてくる。
空に仲間外れにされて
泣きながら海に。
適当に瓶で掬っているように見えて
実は星を集めてた。
"Good Midnight!"
たくさんの
居場所を失った星に包まれて
今夜はゆっくり
夜に溺れていく。
森の匂い。
木々がお生い茂り、
辺りは緑で埋め尽くされていた。
人は私しかいないのでは無いか。
毎日そう思ってしまう。
ずっと言い聞かせるのだ。
もっと東か西の方では
人がわんさかいて、
街も栄えていると。
希望を失ってしまっては
生きる意味すら失ってしまう。
歩き続けてもずっと森。
木ばかりなのに
食べ物は見つけてしまう。
雨も定期的に降ってしまう。
生きてしまう。
そこら辺にいる木に問いかける。
好きな食べ物は何?
鳥ってどんな生き物だと思う?
花ってさ、君らと何か違うところあった?
当然何も返ってはこない。
歩いて歩いて、
たどり着いた世界の果てには
食べ物が無くて、雨も降らない。
ただただ
空が青いだけだった。
"Good Midnight!"
これでもう
生きることすら
できなくなっちゃったなぁ。
誰もいない静かな終わり。
私はどこか懐かしい風景と
見たことの無い動植物に囲まれながら
静かに目を瞑った。
ちょっぴり新鮮な
新しい空気。
心の旅路に
猫は共についてきてくれる。
知る人が誰もいなくても
私はひとりじゃない。
猫はずっとついてくる。
私が買い物に行く時も、
私が魔法を使う時も。
私の魔法を
猫だけは好きだと言ってくれた。
きらきらと
星を出すだけ。
チクチクして痛いし、
空にも浮かばなくて
落ちていくばかり。
それでも本当に綺麗に煌めいている。
居心地の悪いこの世界で
猫だけが私の居場所。
"Good Midnight!"
新しい街。
新しい人が
私と猫を迎え入れる。
役立たずの
この魔法でも。
分厚い氷がそこら中に広がる世界。
思ったよりも寒くはないが、
他より寒く、
まるで凍てつく鏡。
なんせこんな氷しかないとこだから、
教育を十分に受けてない。
この比喩とやらが
正しい使い方なのか、
ここの誰も知りやしないし
気にもしない。
氷売りの仕事は朝早い。
どの氷をどの分だけ
取って持っていくか、
あらかじめ決まっている。
ツルハシをテンポよく
同じ力の強さで振り下ろし、
取れた氷に紐を括り付け
持っていく。
荷車に乗せて、
何人かで押して運ぶ。
氷売り仲間はみんな
こんな寒い中でも平気だった。
けど、
私は冷たいのも寒いのも
何故か大丈夫じゃなかった。
毎日手袋を5枚重ね、
コートを重ね着して作業していた。
"Good Midnight!"
力仕事だけに見えて
こんな所にも
才能って、技術って、
いるんだなぁって。
私はただ
凍てつく鏡のように
そっと輪から外れていった。