長い時間をかけて読んできた物語が終わり、本をそっと閉じる。
時計の針はもうすぐ朝になりかけて、カーテンの向こうは明るい色に染まろうとしている。
世界中で私だけ。
私だけが、今この瞬間な、この物語を終えたのだ。

『静かな終わり』

ゆきほたる、というものがあります。
雪で囲いを作って、その中にろうそくを灯すものです。
寒い中、なんでわざわざそんなことを、と思われるかもしれませんが、これがなかなか暖かくて良いのです。
ろうそくの小さな炎が揺らめくさまも、その灯りを受けてじんわりと光る雪の囲いも、見ているだけで暖かく思えてくるのです。
雪の積もった穏やかな夜にはぜひどうぞ。

『雪明かりの夜』

どうしようもなく吹き荒れる暴風
バラバラと大きな音を立てる大雨
身動きすら取れず、しかしなんとか柱を支えたり穴を塞いだり、
騙し騙しでこの嵐を過ごしてきたのだ

嵐が過ぎれば、平和な日々が帰ってくるから
そう自分に言い聞かせ、祈りを込めておまじないを唱える

「この忙しいの乗り切ったら、今日で仕事納めだから…！！」

『祈りを捧げて』

年末年始も休まず働いてくださるすべての方に感謝します。

布団で横になったとき、
脇の下で伸びて寝ている犬の体温

『遠い日のぬくもり』

その場所で振り返ってはいけません。
仲間はずれにされた影が、じっとこちらを覗いているからです。
振り返ったことに気づかれてしまうとさあ大変。
影は音もなく忍び寄り、あなたの意識が前に向いた瞬間…

あなたをぱくりと飲み込んでしまうでしょう。

『光の回廊』