思いの大きさなど本当はそれほど関係ないのかもしれない。
呪いと呼べるほど深くても、
軽く掠めるだけの思い出ほど浅くても、
人は傷ほど大切に持ち歩いてしまうから。
どうして正しさや優しさを向けられた記憶ではなく、
傷や痛みの跡だけを何度もなぞってしまうのか。
なぜ切実で真っ直ぐな言葉より、
ふいに囁かれた嘘の方が何倍も胸に残るのか。
その答えに辿り着けたら、
私はあなたを否定できるだろうか。
きっと私は、
あなたの最大の欠点すら最大の美徳としてしまうんだろう。
私を変えたのはいつだって幸福ではなく痛みだったから。
____傷
夜の闇は前触れもなく、私と君をこの場所へ引き戻す。
始まりも終わりも分からなくなるぐらいの時間彷徨っても、
気づけば元の場所に戻ってしまう不思議なこの場所へ。
好きと口にすれば壊れてしまいそうで、
沈黙ばかり増えていった。
好きと口にすれば何かが生まれてしまいそうで、
距離だけが遠くなっていった。
もしももう一度君の目の奥を覗けるなら、
私はまた同じ道を選ぶのだろうか。
もしもこの結末を変えられないと知っても、
俺達はもう一度出会うのだろうか。
出口なんて、最初から探していない。
ただ、同じ場所に君がいると信じたかった。
私は、ずっと迷っていたい。
俺は、ずっと迷っていた。
君のいない明日が怖くて、君のいる今日が苦しかった。
___心の迷路
指先で触れた冷たい画面の向こう。
あぁ、きっと今日もそう…。
ふっと笑う君の気配。
最後の静かな沈黙。
ただ私の中に深く根を下ろした君の声が、
静かな波紋を広げるだけのそんな夜。
君はいつまでそこにいてくれるのか。
目を逸らしたその一瞬で、また消えてしまうのか。
そんな不安を抱くことさえ、私の自由じゃない。
"おやすみ"
君の柔らかい声に、新しい未来を見てしまう。
切れそうな糸でしか繋がっていないのに、
なぜか分かり合えているような気がしてしまう。
きっと私たちは終わらない。
そんな確証のない予感が、
いつもこの関係を少しだけ救ってくれる。
___予感
君は知ってる。
文字ひとつで私を突き放せることも。
声ひとつで私を呼び戻せることも。
無関心を装った余白で簡単に揺らぐ私を見抜いていて、
相手にしなくても待ち続ける私をそうして試してる。
都合のいい時だけ、君のペースの中でだけ生きる関係。
それでも通話で軽口を叩いて、
"ちょっと話したかった"と言えば
私がまた簡単にほだされるのも分かってる。
そうやって私の弱ささえ、君は上手に飼い慣らしてきた。
既読がつかないメッセージ
それは君のずるさと私の未練が、
見え透いた形で並んでいるだけ。
___既読がつかないメッセージ
夜の底で光るスマホの画面。
君の名前が浮かぶたびに胸の奥で疼く影。
かける言葉はいつも半分冗談で、
本当の気持ちはいつも半分沈黙で。
笑い合いながらすれ違い、黙り込んでは繋がってしまう。
どうして…と問いかければ、
君は煙のようにそれをかわして結局何も言ってくれない。
だから私は、答えのない問いを抱えたまま眠る。
嫌いじゃない、でも好きとも言えない。
それでも消せないのは、君の声が夜の静けさを割って、
私をまだ選んでいるかのように響くから。
答えは、まだ。
だけどいつだってその「まだ」が、私たちを生かしてきた。
___答えは、まだ…