ちっちゃい手のひらにちっちゃい足。
まんまるでぷくぷくの体。
か弱き儚き小さな命。
初めて姪っ子を見た時、そう思った。
義姉から「だっこしてみる?」と言われたが、あまりにも小さな命すぎるので怖くて断ったのを覚えている。
一歳を過ぎたら普通にだっこが出来るのに、なぜ生後すぐとか数ヶ月だと怖く感じてしまうのだろうか。
思い込みなのか、心配ゆえか、はたまた両方か。
慣れたら怖くなくなるのだろうか。身近に赤ちゃんはもういないが。
愛してるだとかI Love youだとか、そんな愛の言葉を言われたこともないけれど、別段言われたいとも思わない。
ただ側にいて寄り添ってくれるだけでいい。
特別なことは何もいらないの。
言葉じゃなくて態度で愛を示してくれるならそれでいいの。
私も同じようにあなたへと返すから。
彼女は明るく快活で、その場にいるだけで雰囲気が明るくなる。まさに太陽のような人でした。
誰もが彼女を好きになり、誰もが彼女に救われる……自分もその一人でした。
目の見えない自分にも変わらぬ態度で接してくれた彼女。的確なサポートをしてくれた彼女。
恋に落ちるのに時間はかかりませんでした。
彼女ともっとずっと一緒にいたい。自分だけを見ていてほしい。……自分だけのものにしたい。
そんな想いが胸の中に渦巻くようになりましたが、そんなことを彼女が望んでいるはずありません。
浅ましい自分の想いに悶々としていると気付かぬ内にしかめっ面をしていることが増えたらしく、彼女に何か悩みでもあるのかと心配されてしまいました。
まさか貴女が悩みのタネですとも言えず適当にはぐらかしましたが、嬉しかったのも事実です。
彼女が自分を心配している。
それだけで自分の心は喜びに満ちたのですから。
ああ……彼女を独り占めしたい。
自分の醜く性悪な心を満たすためにはそれしかありません。
ですがそれはいけません。
彼女に嫌われたくありませんから。
某小学生探偵のマンガで知ったのだが、テニスでは0はラブと言うそうだ。
そしてそこのセリフで「0は全ての始まり」とか「0からのスタート」とかいうセリフもある。
上手いこと言うなあと思ったのも15年前の話。
今、そのマンガは100巻を超えている。
……0から集める人は大変だろうなあ。
バン! とリビングから凄い音がしたから慌てて向かう。
私の目に飛び込んできたのは顔が白と黄色にまみれた弟の姿。
弟自身もびっくりしているのか固まったままこちらを見ようとしない。
「……何があったの?」
私の問いに弟は呆然と口を開く。
「……たまご、爆発した……」
「卵?」
もう少し詳しく訊くと、小腹の空いた弟はゆで卵を作ろうと思ったけどお湯を沸かすのがめんどくさく感じ、レンチン卵を作ったらしい。
「で、食べた瞬間に爆発したと……」
「姉ちゃん……これ、どうしよう……」
服と床と壁に飛び散った卵の残骸を涙目で見つめる弟。
いやまあ同情はするけど、どうしようと言われても私が提示できる選択は一つ。
「……自分でがんばれ。お母さんには言っておくから」
「……手伝ってくれないの?」
「……服の洗濯くらいならいいよ」
「うん。ありがとう……」
弟はそれから一人で頑張って床や壁をピカピカにしていた。
お母さんからはちょっと怒られたけど、本人が猛烈に反省してるからお咎めはなかったっぽい。
……生卵はレンチン、ダメ絶対。
そう思った出来事だった。
§
生卵は絶対に電子レンジに入れてはいけません。
企業などのレシピを試す時にはレシピ通りに作る&何があっても自己責任の心構えをしてから作りましょう。
さもなければ爆発します。