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ーおかあさん、きょうのごはんなあに?
ー今日はハンバーグよ、あなたのだぁいすきな。
ーうわぁい!やったぁ!わたしね、おかあさんのごはんぜぇんぶすきなんだけどね、ハンバーグがね、いっちばんだいすき!!
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お惣菜が乗ったオレンジに光るターンテーブルの前でふと思い出す
人工的に温められたご飯で夜を終えるのはもう何日目になるだろうか
自炊とは簡単なものじゃないな、と母が証明してくれる
私もいつか、誰かのぬくもりになれるように
「ぬくもりの記憶」
努力って損なんですよ
どれだけペンを握り続けても
どれだけ地面を蹴り続けようと
どれだけ自分とにらめっこしようと
どの世界でも努力は一番になれないんですよ
天才ってなんにでもなれるんですよ
なにもしなくても頭が良くて
なにもしなくても足が速くて
なにもしなくても見た目が整っていて
どの世界でも生まれ持った物が強い人が一番なんですよ
悔しいなぁ、努力って損だなぁって思うでしょう?
ですが、努力家のみなさん、諦めないでくださいね
その灯火を燃やし続けてくださいね
いつか私が1番になって努力の存在証明をするので
「消えない灯り」
なんでもない土曜日の午後。
俺はテレビの前にいる。
某音楽特番で歌っているのはスーパーアイドル、またの名を俺の元カノという。
大型歌番組とだけあってグループの歌うまを集めたシャッフルチームで平成の名曲を歌っている。
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恐いくらい覚えているの
あなたの匂いやしぐさや全てを
おかしいでしょう?そう言って笑ってよ
別れているのにあなたの事ばかり
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テレビで歌う君と目が合う。
赤い唇を動かして歌っている。
カラオケで歌っていた君が重なる。
また忘れられなくなる。
「紅の記憶」
「あのさ、散歩いかない?」
23時、僕の部屋でそんな事を言い出す君。
「へぇ?今何時かわかってる?」
「え、わかってるよさすがに!」
「なんで行きたいのよ笑笑」
「え〜、なんかね、甘いの食べたくなったの」
「笑笑、それは緊急だわ、行こ」
「やった〜!」
寒がりなくせに寒い夜に外に出ようとする理由、僕には分かるよ。
寂しがりやでかわいい君の横顔を見つめた時、月にかかっていた雲が晴れた。
月明かりで少し君の顔に影が生まれる。
君がこの世界の陰りを知らずに、生きていけますように。
「君を照らす月」
結局さ、あんたは何になりたいわけ?
…なんだろう。何になりたいんだろう。
突如姉から投げつけられた問いは即答出来るものでなかった。
「歌手になりたいんだ、わたし。言えなくてごめん。」
「大学も行かない。春から東京に行く」
『…そっか!いい夢じゃん。大変だと思うけど頑張ってね。』
友達の告白にも即答出来なかった。なぜなんだろう。
私は何になりたいんだろう。
夢はあった。小学生の頃はアイドルになりたかったし、中学生の頃は医者になりたかった。
どれも現実的に無理だと知った中学3年生、夢を失った。
なりたいものも無く、3年間で見つかるだろうと進んだ普通科高校でも夢は見つからなかった。
高校3年生、夏。机に1枚の志望校調査と1本のボールペン。
この問いの答えは、
「終わらない問い」