そんじゅ

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10/31/2022, 12:58:11 PM

なにせ極楽では全てが満たされていて、困ることも苦しいことも何一つない。

六道輪廻を巡り尽くしてやっと辿り着いたんですから誠に有り難いことなんですけれど…夜な夜な聴いてたメロディックデスメタルが突然ヘンデルのメサイヤに変わったみたいな、じんわりした居心地の悪さ…って言って伝わりますか?ははあ、やっぱり分かりにくいですよね。

満ち足りすぎて物足りないだなんて贅沢でしょうが。
でもどうしてだか昔を懐かしく思うことが増えてしまって、ついに「僕らあの頃は大変だったけどね」なんて、地獄の思い出話に花を咲かせた瞬間です。五色の彩雲が一瞬で真っ黒に濁ってぽかりと大きな穴があきました。

そこからもんどりうって真っ逆さま、今こうして冥府の穴へ向かって落ち続けてるってわけです。
永劫の時をかけてあんな高いところまで昇っていたのに堕ちるのはあっという間なんだなァ。

今度は鬼に追われながら「極楽に居た頃は大変だったね」なんて言ったらどうなるか試してみるつもりです。


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「懐かしく思うこと」

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所感:
懐かしく思っているだけじゃ戻れはしない場所があり、戻せもしない仲があります。上手くいくか失敗するか、ともかく何か行動してみて駄目だった人の話です。

10/30/2022, 11:29:59 AM

映画でもラノベでもループものって人気あるでしょ?

壊れたレコードみたくひたすらループする時の中に突然放り込まれた主人公。目覚めるたび同じ日付同じ時刻を繰り返す、その謎を解き明かせ!みたいな。

ちょっと不思議だったんだよ。

原因究明してループをつき破れば元の時間軸に戻れるって前提で登場人物みんな頑張るじゃん?本当に戻れる保証もないのに楽観的すぎやしないかってね。

あれ、なかには解決してないケースもあるのさ。

ループを切って繋がった先が、実は異次元異世界で。
物語の続きは、またもう一つの物語。

ぴったり元の世界に戻ったようでもどこかが違う。
たとえほんの僅かな誤差だったとしてもだ。
……僕はうっかり気付いちゃってね。けどまたループし続けて元の世界を探すのは諦めることにしたんだよ。

走馬灯に君の顔しか映らないだろうってくらい毎日毎日君のお通夜に立ち会って、延々と不気味な事件のヤマを追って、正体の分からない何かと戦って。

もう、いいや。

今こうして君は生きてるし、僕も生きてる。
それでもう充分かなって思えちゃった。

ただ君の薬指の指輪が僕の贈り物じゃないだけさ。



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「もう一つの物語」

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所感:
本当はアプリの過去文章から一つ選んでビハインドを書いてみたかったのですが、上手くまとまらず時間切れ。仕方なく、また可哀想な「僕」が一人生まれました。

10/29/2022, 11:41:04 AM

「自分の指も数えられないこんな暗がりの中でも君がそうして光って見えるのは、君の力じゃない。遥か彼方の太陽が君を照らしているだけだ。

君自身が輝かしい存在かなんて誰一人気にしちゃいない。僕もそんなことどうだっていい。善人なのか悪人なのか、そもそも人間なのかすら関係ない。

君はただ、太陽の光をその身で存分に反射し、この世界へわずかにでも影と境界線をもたらす灯りとしてそこに在れば良いんだ。そこに居てくれさえすれば。

誰かの役に立ちたいって言っただろう?
何もせずただ居るだけで良いなんて上等じゃないか」

そして八千万年。

知らない神にそそのかされた私が、万物に影と輪郭を与える灯りの役割を任されて長い時が過ぎた。

私が他には何の役にも立たぬと判じた神よ。
どうやらそれは間違いだったようだよ。

光を反射するだけでなく、私のこの身体は太陽の光を八千万年に渡って吸収し内へ内へ蓄え続けてきた。

今日、ついに蓄光の限界を迎えた私の身体は、初めて自ら煌々とまばゆく輝いた。暗がりも私も神も光の奔流に飲み込まれ、あらゆる影も輪郭も明るく融けていく。

白い光に満ち満ちて、やがて世界は消滅した。

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「暗がりの中で」

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所感:
暗さが分かるってことは、きっとどこかから光が届いているはずで。じゃあ、その光源の在処を探してみよう…と思ったら明るすぎてバッドエンドになりました。

10/28/2022, 11:09:23 AM

こういうアプローチもいいかと思って、とあなたが差し出してきたフラワーアレンジメントは薄オレンジと褐色がいかにも私好みのモダンな色合わせで、けど、それ以上に驚いたのはふんわり漂ってくる甘い香りだった。

「これって紅茶の香り!それにチョコレートも」
「驚いてくれた?アレンジのテーマはティータイム」

チョコの香りはコスモス、紅茶はこっちのバラ…と順に教えてくれる。ドームシェイプのデザインは、花達の甘やかな香りと相まって、まるでガナッシュケーキみたいに美味しそうな姿をしている。

鼻を寄せて一つひとつ匂いを確かめていると、ウサギみたいな表情だと笑われた。

「花を食べるほど食いしん坊じゃありません!」
「…そうじゃなくって。かわいいなって、見てた」

…ああ、こういうアプローチって、そういう意味で?

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「紅茶の香り」

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所感:
紅茶自体ではなく、その香りをもつ何か…と考え中にふと思い出したのがチョコレートコスモスでした。香りは人や場所の記憶を鮮明に連れて来るから不思議です。

10/27/2022, 9:40:15 AM

「愛言葉。これは造語ですか」

ンㇽバヤの問いかけの発生源に目をやると【21世紀極東電子音楽集IV】のタイトルが光電子ジュークボックスのパネルにチカチカと瞬いていた。

今はENGLISHが地球人類の共通会話言語なのに、系外惑星出身の彼女は地球の地方言語も習得したいと毎日あれこれ積極的に文化教材を触っている。最近は音楽を聴くのが面白いらしい。

「21世紀って!また古いの探してきたね」
「チロカㇽ…淡黄褐色ハツカネズミの脈拍のように早い拍子の曲が多くて、飽きません」

パネルに手を置き、耳下のインナーホンを同期させるとすぐに私の耳にも賑やかな音が流れ込んできた。視界に映った歌詞字幕を確認する。

「そうだね。愛言葉…感謝や親愛を相手に伝える言葉、といった意味なのかな」
「愛の、言葉」

確証はないけれど、日本語ならきっと合言葉(password)との言葉遊びの意味合いも掛けられていて、二人だけのとても親密なやり取りを歌っているに違いないと補足すると、ンㇽバヤは嬉しそうに微笑んだ。

「かつての地球人も愛情深く暮らしていたのですね」

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「愛言葉」

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所感:
「愛言葉」といえばDEKO*27。無印からIVまで全部好き。今年、2022年は初音ミク生誕15周年…ってそうか!今の中高生はもうボカロネイティブ世代なのですね。

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