世界に一人だけの君、世界に一つだけの愛、
僕はそれでずっと満たされていたというのに。
ああ、世界が一つじゃなかったなんて。
青い髪を結い上げた君、
ヒヅメを凛々しく打ち鳴らして駆ける君、
湖底で静かに眠る単結晶の君、
右足の小指の爪の形が違う君、
僕を知らない、僕のものじゃない、無数の君。
どこに居たっていつだって全部僕のもの。
君は全部ぜんぶ、この僕だけの、だから、だから。
だからすべての世界の自分を殺して回る。
そしてすべての世界で君はこの僕だけを見る。
さあ、一つの愛だけの世界線を拓いていこう。
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世界に一つだけ
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所感:
この話を詰めていくと「僕」はいつか「君だけが居ない」セカイに辿りついて泣いてしまうんでしょう。
◆好きな色《6月21日更新のお題》
色に全然こだわりがないせいで、身につけるものも持ち物も部屋に置くものだって、ついつい有り物から適当に選んでしまう。
けど好きな人ができたらその人の好きな色を着るようになり、一緒に暮らし始めたら家具も小物も同じ色が増えたりもして。染まる、染められるって、こういうことなんだと理解した。
それで、今、少し困っている。
一人になっても、いつまで経っても独りになれなくて。
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◆日常《6月22日更新のお題》
一年に一回、検査を受けに来てくださいね。
そんな指示が出されたから、毎年同じ日付で来院予約を取るようにしはじめて6年目。一つ分かったのは、同じ日付でも曜日は一年に一つずつずれていくってこと。
これまではずっと平日だったから有給休暇で堂々お休みを確保できるチャンスだったのだけど、今年は土曜日。なぜだかちょっと惜しい気分。
せっかくなので予約は午前に入れて、午後からはのんびりしようと思っている。
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好きな色
日常
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所感:
慌ただしい。
毎朝、犬の散歩してるんですよ。
あの日は台風が過ぎた翌日で、砂利浜には木切れが沢山流れ着いてて、犬は大喜びしてました。
遠くにも海の様子見に来てるような人がいて。
漂流物マニアさんかな、とか思ってました。
それから半年くらい後ですかね、また朝の散歩してたら急に声をかけられたんです。前の台風の次の日に、この犬と散歩してたのはあなたですか、って。
なんでも、その人は人生に思い詰めて、思い余って海に来てたんだそうです。
でも、犬が木の枝を集めて走り回っているのを見ていて、それがあまりに楽しそうで、羨ましいなと思っているうちになんだか気持ちが楽になったんですって。
「あなたとワンちゃんのおかげで、元気です」
そんなふうに、ほんとうに何もしてなくて、ただ散歩してただけで人から感謝されることなんてあるんだなぁ…って、台風が来るとたまに思い出します。
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あなたがいたから
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所感:
そこに誰かが居るだけで、何かが起きること。
◆落下《6月18日更新のお題》
落ちているのだか周りが浮揚しているのだか。
雲の中では何もかもがふわふわと曖昧で素敵。
空が遠ざかって丘の緑が鮮明になってやっと、
ははん、これは私が落ちているのだと分かる。
緑の中に白い羊がぽつぽつ見えてきたころに、
さて、これは夢ではなかろうかと気がついた。
怖くもないロマンティックな速度に身を任せ、
ひゅうひゅう風切る音に全身を包まれたまま
どこまでも落ちていきたいような、さっぱり
目覚めてとっととがっかりしたいような。
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◆相合傘《6月19日更新のお題》
あの人も私も用心深い質だったからね、天気予報で40%以上の数字をみかけたら折り畳み傘を鞄に入れるのが、揃って習慣のようなものでした。
だから、相合傘なんて一度もしませんでしたよ。
揃って真面目で不器用で、傘を忘れたふりなんて、そんなの端から思い付きもしなかったのよ。
娘時分に戻れるなら耳打ちして教えてあげたいわ。
今はね、こうしてお墓に傘を差し掛けてあげたりね。
ちょっとは喜んでくれてたら嬉しいのだけれど。
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落下
相合傘
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所感:
なんとなく、ふわふわした話ぶりの方々。
アキレスに追われる亀のように、
明け方に白くかすむ月のように、
ずっと懸命に走り続けてみても、
僕の未来はいつも遥か先にある。
辿り着く日が来るかも判らない。
千年前のご先祖様が夢見た世界、
そのどれか一つが今だとしたら、
僕の今は誰かの未来といえるの?
もし千年後も世界があったなら、
そのどこか、その未来のどこか、
僕の想う未来を生きているひと、
居てくれたら嬉しいのだけれど。
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未来
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所感:
(6月17日のお題、書きかけでした)
はたして未来は誰かに託せるものでしょうか。