「秘密の標本」
本棚の奥から木箱を取り出し、カタリと開けた。
木箱の中には鮮やかな紅の葉や、淡い桃色の花びらがその色を保ちながら所狭しと入っている。
私は昔から綺麗な花や葉っぱを拾っては押し花や押し葉にして収集し、疲れた時に見ては癒されていた。
そんな木箱の一番上にある、四つ葉のクローバー。これだけは他のどの花よりもどの葉よりも鮮やかに輝いて見える。
あの日、あなたが私にくれたクローバー。
もうあなたはいないのに、柔らかな緑色は今もあの時のままで。
抱きしめるようにギュッと胸にあて、そっと木箱にしまった。
「光と影」
ずっと影に生きていた私を、あなたが照らし出し、見つけてくれた。
いつも、いいことばかりじゃなかった。今まで影にいたのに突然照らし出されて、眩しかった。光のもとに連れ出されてうまく息ができないこともあった。
それでも。
あなたが照らしてくれたから、私は今ここにいる。
あなたが光に連れ出してくれたから、私は笑うことを知った。
だから私も、いつかあなたの影を照らし出せる人間になりたい。
「tiny love」
珍しく遅めに起きた朝。リビングへ行くと、彼は既に仕事に行ってしまっていた。しんとした部屋に少し寂しさを感じながら見回すと、テーブルにラップをかけたお皿とメッセージがあった。
『おはよう。仕事に行ってきます。朝ごはん、ちょっとしっぱいしちゃったけど良かったら温めて食べてね。』
お皿には端の焦げた卵焼きと少しアンバランスなタコさんウィンナー、そしてサラダがのっていた。
準備で忙しいながらも一生懸命作っている彼の姿を頭に浮かべながら温めたご飯を口に運ぶ。
私が作るのとは違う甘めの卵焼きは新鮮で焦げの苦味がきいている。
きっとこれが小さな愛なのだろうと噛み締めながら、彼の朝ごはんを平らげた。
「消えない焔」
何度心が折れかけても、自分に愛想がつきそうでも。
私の焔は消えることはない。
どんな大雨の中でも、あなたという太陽が輝き続ける限り、それに焦がれる私の焔は消えない。
いつかきっと隣で輝けるまで
「終わらない問い」
どうして私はここにいるの?
なんのために生きていくの?
物心についた時から私の中にある、終わることのない問い
いつか答えを出せる時が来るだろうか
その時はきっとあなたに傍にいてほしい。