「ささやかな約束」
部屋を片付けていると、ふと、昔の約束を思い出した。幼い頃に交わした、ささやかな約束。
それでもその約束は、私の中にしっかりと刻まれ生きる希望となっていたはずだった。けれど時が経ち、様々なものが変化していく中ですっかり記憶から消えかかってしまっていた。
約束の相手からの連絡も、途絶えてしまってから久しい。きっとあちらも忘れてしまっているのだろう。
忘れていたことが、忘れられてしまったことが寂しくて、切なくて胸が締め付けられるように痛んだ。
守られなかった約束は、心に小さな傷を刻みつけて静かに消えていった。
「祈りの果て」
私は、この祈りの果てに、希望など一切ないことを知っている。
それでも、自然と空を見上げてしまう。無意識に手を合わせてしまう。もう結果が分かっていることなど、祈ったところでその果てには何もないというのに。
それでも、どうか。
彼がまた、ただいまと笑ってこの家の扉を開けてくれますように。
「心の迷路」
彼の一言が私を心の迷路に閉じ込める。きっと彼は何気なく言ったのかもしれないけれど、その言葉は私に迷いを与えるものだった。
終わりのない迷路をぐるぐると彷徨っている私を出口に導いてくれたのは、彼女の言葉だった。何でもないことのように発せられた言葉は、私には出口までの道を照らす眩い光のように感じられた。
いつだって、私を心の迷路に閉じ込めるのも、そこから救ってくれるのも他者。
自分で抜け出せるくらい、強い人間になれたらな。
「寂しくて」
あなたに出会うまで、ずっと1人で生きてきて、寂しいなんて感じたこともなかったのに。
あなたがいなくなって、静かな部屋も、1人で座るには広すぎるソファも何もかもが寂しく感じる。
寂しくて、会いたくて仕方がない。
早くまた2人で、笑い合いながら言葉を交わしたい。
「心の境界線」
誰のことも信用できなかった。
自分の心に他者の心との境界線を引いて、そこに壁を建てて、ずっと自分を守ってきた。
でもあなたは、その壁をバラバラに壊し、境界線を土足で跨いで、私の心に侵入してきた。
私の心をめちゃくちゃにして、それでも私に大切なことをたくさん教えてくれた。
だから今度は私が、あなたの心の境界線を跨いで、あなたの苦しみに寄り添ってあげたい。