「1000年先も」
あなたと2人で見上げた星空は、1000年先も輝いているのかな。私たちは弱くて儚くてすぐに消えてしまうけれど、夜空を静かに煌めく星々は1000年先も輝き続けて見守っていてほしい。
「勿忘草」
旅立たなければならなかった。人々を守るため、この国に平和をもたらすために戦う覚悟を決めた。
君に渡そうと思っていた小さな白い勿忘草は、結局今も僕の手に握られたままだ。君に別れを告げる時、本当なら渡すつもりだった。花言葉を借りて「僕を忘れないで」と伝えたかった。けれど、なんだか身勝手な想いに感じられて渡せなかった。僕が無事に帰ってくる保証はないし、帰ってくることができても何十年も後かもしれない。そんな不確かな未来に、君を巻き込むことはできない。
だから、勿忘草は渡せない。どうか君には、僕のことを一刻も早く忘れて幸せになってほしい。
「ブランコ」
帰り道にある小さな公園の寂れたブランコ。
公園の遊具の中でも1番人気であっただろうに、その面影は今はなく、風に揺られて小さく鳴いている。その姿がなぜだか私自身と重なりそっと腰掛けた。
ブランコなんて何年ぶりだろうか。こうして揺られていると、何も知らない無邪気で輝いていた頃の私がはっきりと浮かんだ。あの時のような輝きは今はない。けれど、忘れないようにしたい。
寂れたブランコは過去の大切なものを私に思い出させてくれた。
「旅路の果てに」
随分と長いこと旅を続けてきた。たくさんの人と出会い、さまざまな景色を見た。1人で始めたはずの旅に、いつの間にかあなたが加わって、賑やかになって。けれどそのあなたは私よりも先に消えてしまった。美味しいものを分け合って食べる楽しさを、美しい景色を共に見る嬉しさを、私に教えたのはあなたなのに勝手にいなくなるなんてずるい。
旅をする意味も楽しさも感じなくなり、もうやめようかと何度も考えた。
「僕はもっと、この世界の美しい景色を見たいし、たくさんの人と話をしてみたい」
懐かしい風に吹かれて、記憶の扉が少し開いた。甦ってきたあなたの声を聞いて、私は旅を続けることを決めた。
もしこの旅路の果てにもう一度あなたに会うことができたなら、私が見た景色を、出会った人々との話を、たくさん自慢してあなたを悔しがらせてやるのだ。
「あなたに届けたい」
庭に出ると、小さな青い花が咲き乱れ揺れていた。今年もそんな時期かと、暖かい光を放つ太陽を見上げながら思った。去年までは、この花の咲くのを1人で楽しみにしていた。けれど今年は、咲いたその小さな花を束ねてあなたに届けたいと強く思う。この可憐さをあなたと一緒に楽しみたい。美しいものをあなたにもたくさん見せたい。そんなふうに思えるということは、きっともう私は1人じゃない。
庭の青い花は花束にはできないけれど、花屋さんで青い花束を作ろう。そしてあなたの家まで届けて、びっくりさせてみよう。