ストック1

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2/3/2026, 11:04:20 AM

彼は1000年先も見通す未来視の能力を持っている
彼の能力を欲しがるものは多い
そのため、彼の力を悪用されないように、時の権力者は彼に広い屋敷を与え、そこから出ないように命じた
彼の人としての尊厳を守りたいものたちは、一生を屋敷の中で過ごさせるつもりかと抗議の声を上げたが、決定が覆ることはなく、彼は残りの人生を屋敷で過ごし続けることになってしまう
ある者は嘆かわしいと怒り、ある者は哀れみ、ある者はしかたのないことだと諦めた
しかし彼自身はこの処遇について、どう思ったのか
一生屋敷の外へ出られぬことに絶望したのか?

己の自由を奪い去った権力者への憎しみをたぎらせたのか?

自らの力が不幸を招くならと、閉じ込められる運命を受け入れたのか?

歓喜
彼は、黙っていても食事が与えられ、必要なければ人とも話さなくてよい
そして、よほどのことでなければ、ある程度のワガママが許されるその環境に、抑えきれぬ喜びをあらわにしたのだ
なぜ彼は、ここまで喜んだのか?
高待遇であるのは確かだが、それだけで屋敷から一生出られないことを許容はできない
普通ならば
彼は普通ではなかった
彼の未来視は、1000年先をも見通せるのである
それこそが理由であった
いわく

「漫画やアニメという娯楽があまりにも面白くて、時間がいくらあっても足りないのだ」

彼は遥か未来の、漫画・アニメと呼ばれるものにハマった
それまでつまらない人生を送ってきたと自分を評価していた彼だが、未来視でたまたま発見したこれらに、心を奪われたのだ
これらの娯楽さえあれば、もう他に何もいらない
生きている以上、人は己の人生に責任を持ち、働かなければ生きられない
しかし、時の権力者は彼を絶対の安全と引き換えに閉じ込める決断をした
彼にとっては、自分のために権力者が楽園を作ってくれたような感覚だ
彼は楽しんだ
未来の娯楽をただひたすら楽しんだ
さらに幸いなことに、彼には他人と楽しさを共有するという欲求がなかった
自分が楽しめれば、他人との交流などどうでもいい
それが彼の楽しみ方である
歴史書によれば、彼は己の悲運を悲運とも思わず、能力を悪用されるくらいならば、人のため、自らを封じようと決意した高潔な人物として記されている
だが実のところ彼は、自分が一生楽しめる環境を手に入れて喜んでいただけであった

1/29/2026, 1:09:06 PM

I LOVE... myself
そう、俺は自分を愛している!
おい、誰がナルシストだって?
そういう意味じゃないんだよ!
俺は他人に対して優しいだろ?
自分で言うなって?
事実なんだからしょうがない
で、なんで優しいかって言うと、自分のことを愛しているから
心に余裕があるんだよ
自分を愛する余裕があるから、他人に優しくできるわけだな
自分を愛する余裕のない人間は、他人に優しくできないかもな
そもそも他人に気が回らないか、他人を憎み始めるか、そんな感じが多いんじゃないの?
たぶんな
まあ、他人に優しくできるけど余裕がなくて、その優しさでさらに自分を追い詰める人もいるか
一方で俺は楽しく優しさを発揮しているから、余裕があると言えるわけだ
そんな優しい俺はだな、心に余裕のない人間に寄り添って、健全に他人へ優しくできる存在に変身させたいわけだ
俺にはすごい力はないけど、できる限りそういうことをして、優しくなれた人間が他の人も救うようになったら万々歳
そうはならなくても、ひとりの人の心に余裕をもたらしたことは事実なわけだ
そうすると俺ももっと自分を愛せる
お互いハッピー
ま、俺の活動はまだ始まったばかりだけどね
手始めに君が自分を愛せるように協力をしよう!
俺のさらなる活動のための礎となってくれ!
なんてね
冗談はさておき、自分を愛せば目の前の世界は明るくなるぜ?
俺と一緒に自分への愛を取り戻しに行こう!

1/26/2026, 11:39:19 AM

「ミッドナイトってさあ、なんかリッチじゃない?」

突然友達がそんなことを言い出した
言ってる意味がわからないね

「何がリッチだって?」

「いや、わかんないけど、言葉の響きとか雰囲気とか!」

本人もわかってないんかい
なんか曖昧なこと言ってるし
じゃあこっちは同意も否定もしかねるよ

「たとえばさ、モーニングはもちろん身近で親しみやすい感じじゃん」

「もちろんってなんだよ
共通認識みたいに言われても困るよ」

この友達はそういうところあるんだよね
自分の感覚を常識だと思っちゃうところ
身近とか言われても、私にはまったく理解できないんだけど

「アフターヌーンは、リッチまでいかないけど、なんかお洒落に食事してるイメージでしょ?」

でしょ?じゃないよ
また当然のことみたいに
というかお洒落な食事のイメージって……

「それアフターヌーンティーの影響じゃない?」

「あっ、そうかも!」

ハッとした表情をしたと思ったら、理由がわかってスッキリしたのか、爽やかな笑顔になった

「それでさぁ、ナイトはシュッとしたかっこよさみたいな、そんな感じだよね」

曖昧すぎて言ってることが理解できない
シュッとしたかっこよさって何?
と言いたいところだけど、これはなんとなくわかる気がする自分がいる

「忍者とか暗殺者とか、闇に潜んで仕事を遂行、みたいなイメージ?」

「そうそう!
まさにそれだよ!
なんだ、わかってるじゃん!」

友達は嬉しそうだけど、わかったのはナイトだけだし、これは友達の好みをある程度知っていれば簡単なことだ

「それで、その謎の感性だとミッドナイトはリッチってことなんだね」

「その通り!」

やっぱりわかんないな
私なんて深夜アニメしか浮かばないよ

「ミッドナイトのリッチ感がやっぱり、特別な気がして好きなんだよね」

どう考えても理解するのは難しいな、その感覚
感性なんて人それぞれなんだけど、どういう経緯でそういう感覚になったのかものすごく気になる
友達関係をずっと続けてれば、いつか理解できる日が来るのかな
まあ別に、気にはなるものの、理解できなくてもいいと思ってるのも事実だけどね

1/25/2026, 1:15:17 AM

友人の作品が展示されるというので、とある展覧会に来た
芸術みたいなのは、僕はよくわからない
けど、展示されていた作品は僕でも超力作なんだろうとわかるものだった
見ていてなんとなく心地いい
そんな作品

友人の作品を楽しんで、他の展示も見ていこうと周っていると、ひとつの作品に目がいった
タイトルは逆光
正面を向いた人の姿が黒く塗りつぶされていて、後ろには光が差している
なるほど、逆光だな

「この作品が気になりますか?」

関係者らしきスーツを着た人が近づいてきた

「あ、はい
なんとなくですけど」

「この作品は、作者の人類への絶望を表しているんですよ」

なんだか重そうな作品だな
ちょっと面白いなと思っただけなんだけど

「作者は人類に心底絶望しているらしく、それを表現して伝えたかったそうです」

うーん、人類への絶望をみんなに伝えたかった、か

「でも、絶望してるならそもそも絶望した相手にアピールする意味あります?」

「私もそう思います
人類への未練たらたらじゃないかと
そもそも作者も人類ですからね」

自分だけ特別だと思ってるのかな?
他の人類とは違ってわかってる側だぞ、と

「なんか、そう聞くと残念というか、痛い感じがしちゃいますね」

「痛いですねぇ」

そんなふうにうなずき合っていると、ヒゲを蓄えた中年男性が笑顔で近づいてきた
なんだ?

「私の作品を好き放題言ってくれるじゃないかこの野郎!」

作者だった
怒ったような口調だけどなんか嬉しそうだな

「この人、喜んでいるのでご安心を」

関係者の人が僕に耳打ちする
まあ、怒っているようには全然見えない
なんで喜んでいるかはわからないけど

「この作品はね、人類への絶望を表しつつも、後ろから光が差している
ひとつの方向だけ見ず、振り向きさえすれば希望が見えるのだということを、自分に言い聞かせている
そんな意味もある絵なんだよ」

あー、そう聞くとなんだか自分の中の葛藤も表現した深い作品って感じがするな

「というのは建前で
そういうテーマを持たせたら深そうに見えて面白いんじゃないかと思ってノリで描いただけだ
私は別に人類に絶望してないからね
むしろ大好きだ
特に私の作品に目がいった君なんか最高!
私の作品の要は深いと見せかけた軽さとくだらなさだ!」

ものすごく軽い作品だった
でもそういうのも面白いかもしれない

「この人はなにか伝えたいとかではなく、本当に軽い気持ちで作品を製作して、それが評価されてしまう人なんですよ」

メッセージや深いテーマを持つ作品よりも、そういう作品のほうが僕の好みなのかもしれない
僕は説明を聞いてこの逆光にすごく惹かれた

「ま、もし逆光を気に入ったなら、私の他の作品もネットで調べてくれるとありがたいね
他の実物の展示は……そのうちどこかで何かやるだろ」

「今の所予定はありませんが、そのうちやるつもりではあります」

「うん、よろしく頼むよ
じゃ、私はこれで失礼するよ」

上機嫌で去っていった
作品も人柄も、面白い人だったな

「では、私も失礼します」

「あ、はい
ありがとうございました」

友人の作品を見に来たけど、思わぬ出会いがあったな
せっかくだし、ちゃんと調べてみようと思った
さて、僕はもう少し他の作品も楽しむとしよう
他にもいい出会いがあるかもしれない

1/22/2026, 11:42:32 AM

「タイムマシーンが完成したぞ、助手くん!」

博士はついに狂ってしまったようだ
一昨日まで「タイムマシーンなど作ることは不可能なのだよ」なんて言ってたのに
きっと研究に没頭しすぎて頭をやられてしまったんだろう

「そうですか
では明日病院に行きましょう
大丈夫、博士ほどの人なら治療すればすぐ元通りです」

「ぶん殴るぞ助手くん
私が製法を手にし、昨日から徹夜して完成させたというのに、病気扱いとは」

なんてことだ
きっと博士はガラクタを作って、それをタイムマシーンだと思いこんでるんだ
可哀想に
僕がもっとしっかりしていればこんなことには……

「本当に蹴り飛ばすぞ助手くん」

「だって博士はタイムマシーンが不可能であることを証明したじゃないですか」

その時、僕は心底安心したのでよく覚えている
タイムマシーンは歴史改変とかの心配があったからだ

「確かに私は証明した
しかし、それは方法のひとつ
法則のひとつに過ぎないのだよ
別の法則を利用すれば可能であることがわかった
そしてタイムマシーンは完成したわけだ!」

そんなバカな
仮に実現したとして、一回徹夜しただけで完成するはずがない

「一日でそんなもの、開発できるんですか?」

「不可能に決まっているだろう
法則がわかっても、様々な手順、段階を踏んで、成功と失敗を繰り返し、長い時間をかけねばそんな高度なものは作れんよ」

何言ってるんだこの博士は

「でも、完成したんですよね?」

「完成した
しかし私は完成させただけで、ほとんど作っていない」

どういうことだ?

「君に紹介したい人がいる
未来から来た私です」

目の前に博士の面影のある、しかし博士より年齢を重ねたであろう女性が現れた

「なつかしい顔だな、助手くん
未来の君はもっと老け込んでいるというのに、ピチピチじゃないの!」

嘘だろう

「未来の私は長い時間をかけてタイムマシーンを完成させ、現在へやって来た
未来の技術ならタイムマシーンを簡単に作れるらしくてな
タイムマシーンを製造する機材も持ってきて、私にも作ってくれたわけだ」

理解が追いつかない
なんで過去へ行ってタイムマシーンを作ってあげちゃったんだ

「ただ、コアとなる機械は、持っていくと時間跳躍時にタイムマシーンの不具合を引き起こすから、持ってこられなかったのだ
だから現在の私に作り方を教え、完成させてもらったわけだな
若いから吸収が早くて助かった」

思い切りタイムパラドックスな気がするが大丈夫じゃないだろう
僕は頭が痛い

「これ、色々とマズいのでは?
歴史が変わってしまいますよ」

「問題ない
君たちの歴史は今を生きる君たちのものであるからして、私が介入したところで、それ込みで君たちの歴史になる
ちなみに、私の未来は何も変わらない
別の時間軸となるわけだ」

「だから助手くん、心配はいらない
私たちと一緒に、時間旅行を楽しもう!」

何をバカな
そんな説明をされても、介入すること自体が危険行為じゃないのか?
それに、行った先で何が起こるかわからないし
ここは僕が常識人枠として狂気の博士たちを阻止せねばなるまい

「わかりました、行きましょう!」

……誘惑には抗えなかった
ワクワクした自分に嘘は吐けないのだ
僕は二人の博士とともに嬉々としてタイムマシーンで旅立つのだった

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