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12/14/2025, 4:31:05 PM

『星になる』


小さい頃に夢見たことがある。
数多輝く天を照らす星になりたいと。
母親は一生懸命に生きたらお星様になれるかもねと言った。

だから、私は一生懸命になった。

それでも、いっぱい頑張っても、1番にはなれなかった。
クラスで、1番になったらもらえる星のシールを、私は一度も手にすることができなかった。

私は星からいちばん遠い存在だった。

でも、母親は、私のことを抱きしめ、私はぼろぼろと大粒の涙を流して泣いた。

「お母さん、あの星は、なんて言う星?」
「木星っていうのよ」
「……すごく、輝いてる。綺麗だなぁ……。」
「……木星はね、自分の力で輝いていないのよ。太陽の力を借りて輝いているの。」
「太陽……?」
「そうよ。太陽。
星は、独りで遠く輝いても、届かない時もある。
でも、誰かと一緒になったら時には一番星にだってなれるの。」
「一番星……」
「それに、この宇宙の星は、全ての星が一番星なのよ。ただ、見えないだけなの。

あなたはもう、輝いているわ。私のお星様。。」


お母さん

あの時は、ありがとう

私は、本当にその言葉にどれだけ救われたか分かりません。

お空にいるお母さんへ
聞こえてますか。
私は、今も、誰かの宇宙で輝けているのでしょうか。

12/8/2025, 3:40:13 PM

『雪原の先へ』

白い吐息に荒い呼吸。
視界は曇り、吹雪で前がよく見えない。
もう感触の無い手に、凍った瞳
この雪原を超えた向こうには何があるのだろう。

手をどれだけ伸ばしても届かず、足は雪に埋もれていき、次第に1歩も動けなくなった。
溢れる涙は雪原に解け、私はとうとう願いを叶えることができなかった。

11/30/2025, 11:34:55 AM

『君と紡ぐ物語』


「貴方の名前は?」

世界中の人が私を嫌いになって
世界中の人が私を忘れて
そして
私はようやく───


11/30/2025, 1:31:45 AM

『失われた響き』


ふと、目にに入った公園
草が伸び切り、もう長い間整備されていないようだった。

私は錆び付いたブランコに腰掛け、キィと揺らし、当時の記憶を思い出していた。


「今日帰ったらゲームしようぜー!」
「おう!ルーム作ったらさっさと連絡しろよ!」

聞こえてきた小学生の会話。
あぁ、そういえば、ゲームも昔はローカル通信が主流だった。

何もかもこの端末で完了してしまう時代。
もし、この端末がこの世から消えたら──ふふ、この文も誰にも届かないね。

11/27/2025, 1:52:15 PM

『心の深呼吸』


猫の毛づくろいをするのを眺め、送信ボタンを押す手を止めた。


私は画面を閉じ、ベッドに仰向けになって倒れた。
自然とあふれてくる涙に、1階から聞こえてくるテレビの声

どの世界にも私はいなくって
誰にも必要とされなくって
生きている価値なんかない

ずっとこう思いこんでいた。


切り離していたのは、自分だった。
彼、彼女たちは私に手を差し伸べてくれた。
だが、自ら壁を作り、踏み込まなかったのだ。
踏み込めなかったのだ。

“ブーブブ”

通知音がなり、慌ててスマホを見る


“ありがとう”のかわいらしいスタンプが送られてきており、私は再び涙が止まらなかった。


そっと通知をoffにし、静かに目を瞑った。

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