おぼろげ

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2/18/2026, 8:41:36 AM

【お気に入り】※長文注意
―喫茶店の薫り―
「マスター、いつもの」
「………は?くたばれ」
榎本がカウンター席に座り、格好をつける。
それに答えたのは堀川京だ。名前は京と書いて、みさと、と読むと教えたがそんなことは榎本の頭にもうない。
「てか、今日は俺等が皿洗い当番だろ?さっさと終わらせるよ」
「だから、マスターいつもの、って言ったんだよ」
「あっそ。皿洗いしよっかー。」
今は客足がない。というか、もう夜だ。でも、夜になるにつれ、喫茶店には沢山人がやってくる。
「ねね、俺、1回位言ってみたいんだよね。マスター、いつもの。って言ってお気に入りの飲み物が出てくるやつ!」
「どうでもいい。」
京はいつもはボケ担当だが、二人きりだと榎本が馬鹿すぎてツッコミ担当に必然的になってしまう。
「てか、飲み物出すって…亮に頼めよ。」
「八木さん?八木さんは忙しいでしょ。」
「俺も忙しいわ。」
「堀川さんは暇だろ」
「よーし。分かった。明日の朝日は拝めないと思え」
榎本はカウンター席の高さのある椅子から飛び降りる。ようやく皿洗いする気になったらしい。
「えー、でも、なんか出してよ〜」
「亮に頼め」
「堀川さんの料理食べたい〜」
「ルイボスティー位しか淹れられないよ?」
「じゃあ、レイルボスティーってやつで」
「ルイボスティーな」
俺は手際よくルイボスティーの準備をはじめる。隠し味の蜂蜜も入れて、レモンも少し……あぁ、いつも、こうやって麗奈に……
「できたよ」
カウンター席に座っている榎本にルイボスティーを置く。榎本は自分でかっこいいと思っているのか、地味に低い声でありがとうマスター、と言った。
「う〜ん。あんま好きじゃない味。」
「だったら飲むな」
「でも、」
榎本は榎本らしい満面の笑顔をして、はっきりと言った。
「優しい味がする。これ、八木さんには出せないよ。俺のお気に入りだね。」
こんなことを言う子だったっけ。俺は、少しドキリとして、照れ隠しで八木さんの話にした。
「八木さんには敵わないって。」
「じゃあ、マスターいつもの、って言ったらこれ出してよね」
「もうやらない。」
「何飲んでるんですか。私にもそれください」
いつの間にか百花が喫茶店に来ていた。
今日も、喫茶店には賑やかな声で溢れている。

2/16/2026, 10:09:49 PM

【誰よりも】
誰よりも、優しくて、美しくて、綺麗な人。
それは、君。
誰よりも、君のことをわかってたのは僕。
だったはずだった。
君の首を絞めていたのは、
誰でもない、僕だったんだね

2/15/2026, 10:18:45 PM

【10年後の私から届いた手紙】
10年後の手紙を、小学生の時に書いたんだけど、
その手紙、まだ開けていない。というか、その手紙の在り方も分からない。先生に預けて……どこに先生はやったのだろう。
もう、とっくのとうに10年なんて経っている。
僕の知らないところで同窓会とかあったのだろうか。
先生のただの気まぐれだったのだろうか。
どこかのお便りに載っていたのだろうか。
はたまた、まだ先なのだろうか。

このお題で小学生の頃の10年後の手紙を思い出しました。……結局、手紙は今も届かないです。
まあ、その当時に書いた時の下書きがあるから、いつでも見れるんですけどね。
え?KY(空気読めない)だって?知るか。だって、小学生の自分が「別に、どうせ先生の気まぐれだから、もう見ることなんてないだろ」と思って、せっかく書いたのだから、下書きは、卒業アルバムに挟んであります。とんだクソガキですね。
じゃあ、ちょっとした返事を書いておきます。

10年(+何年か)前の自分へ
まだ手紙届いてません。同窓会の情報は早めに受け取ってください。
あと、下書きは取っておかないでね。楽しみがなくなるよ。
10年(+何年か)後の自分より

2/15/2026, 12:31:12 AM

【バレンタイン】
ちょっぴり甘くて
ちょっぴり切ない、
バレンタイン。
女の子はそうなのかもしれない。
けど、
男にとっては、
戦場の日。
チョコいくつ貰った?
見えないけど、尖った刃を突き刺す日。
男のプライドが嘘をつく。
1日中、チョコの視線を見逃さない
本命チョコの匂いを見逃さない
そんな、甘い会話で人を刺す。
バレンタインとは、そんな日だ。

2/14/2026, 2:24:48 AM

【待ってて】※長文注意
―喫茶店の薫り―
「母さん、?」
夜、物音で目を覚ますと、母さんがどこかに行こうとしていた。俺は眠い目を擦りながら定まらない視点を母さんに向ける。
母さんはこっちに気付き、目を見開いて驚いていた。
「どこ、行くの?」
母さんは何も答えない。俺の家は貧乏だった。だけど、心優しい母さんがいる。それだけで、俺は何も気にしなかった。
「いい?亮?」
母さんは俺を抱きしめて、優しく語りだした。
「こんな、ダメな母さんでごめんね。」
「そんなことない、母さんがいれば、俺はそれで…」
「いい子でいるのよ。」
母さんは俺の額に優しくキスをして、ドアに手をかけた。
「待ってるからね、!母さん!」
「……」
少し立ち止まった後、母さんは優しく微笑んだ。
「ええ。待ってて。」
けれど、今も、母さんは帰ってきていない。
約束なんて、口だけだった。母さんは、分かってたんだ。きっと。

「八木!起きろ〜今日バレンタインだぞ!チョコ位つくれ!喫茶店の中でも一番料理美味いのお前なんだからな!トリックオアバレンタインチョコ!」
「それ、ハロウィンだぞ?訳すと、バレンタインチョコをくれないと悪戯するぞ、になるけど大丈夫か?」
「あ、起きた」
同い年の京に起こされた。なんだか、過去の夢を見ていた気がする。
母さんは帰ってこなかった。でも、仲間ができたんだ。
「?亮?」
母さん、今、どこに居ますか?俺は今、元気に楽しくやってます。
俺は、待ってるからね。
「生チョコなら昨日作って冷蔵庫に入れてある」
「よっしゃ!食べていいの?」
俺は、俺の道を進むから。

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