博士はロボットを作っているらしい
感情をいれたロボットを作りたいのだと。
悲しみは喪失×記憶の強度だとかなんだとか
プログラムを何時間続けているのだろうか。
人間自ら必要とされない世界を作り出す意味が
僕には分からない
神話、宗教、文明、科学
人間らしいものを遭遇させたら
先祖の存在はどこへ消えるのだろうか
交わってはいけない
新たな未知は解明される前に他の全てが崩壊する
交わらないべきである
学問に収まる話ではない
それなのに、
世界が存在してはいけないモノに変わる瞬間が
もうそこまで来ている
未知の交差点
老いた庭師は
縁側に腰を掛けゆっくりと息を吐く
今日亡き妻と世話した庭の紅葉を焼くつもりである
炎にかつての声を
煙にかつての仕草を
灰に過ぎた季節の温もりを見た
昔の情熱はまるでないが
モノと引き換えに精神は満たされた
消えた時間は灰と混ざり
翌春の、来世の、
まだ見知らぬ誰かの芽吹きの予兆になるだろう
そう願ってまた息を吐いた
燃える葉
誰かさんが
誰かさんが
誰かさんが
見つけた
今日は誰が何を見つけるのだろう
期待、集団、自立、競争、友情、挑戦
時にそれらは
重圧、孤独、放任、比較、猜疑、混乱
と姿を変える
苦悩は理解され難く、
共感を浴びても意味はない
あいてしまった穴の型は見つかりづらいが
埋めてもらわねば進めない。
誰かが誰かを
誰かが誰かに
見つけられるその日まで
誰か
人間は夢がないとかなんとかいって
自分の色を見落とし
世界が暗く見える時があるらしい
人生は塗り絵みたいなもので、
その章が終わっただけだと思う
次のページをめくったら、
ただ白くて黒かっただけだと思う
鮮やかな蛍光色はここでおしまい
次は色鉛筆かな。
水彩かな。
ペン画かもしれない。
また染め上げればいい
人から色をもらえばいい
少しずつ本から会話から趣味から
暗く見えるのは平常仕様だよ
新しい絵が出来上がるなら
モノクロもなんだか悪くないね。
モノクロ
それでもあの夏の匂いは
胸の奥をくすぶっている。
蝉の声
湿ったアスファルト
蚊取り線香の残り香
大人を横目に
終わらない暑さに身を覆われて
小さな体は畳に転がる
戻らない時間と消えない記憶
いつかは忘れてしまうのだろうか
巡り巡る季節の裏で
未だ少しだけ思い出す
永遠なんて、ないけれど