靴紐を結ぶのが苦手だった。
蝶々結びをするとどうしても縦結びになってしまい、すぐ解けてしまう。だから靴紐の無い靴を選ぶようになった。
ある時、サイズはぴったりで色やデザインは好きだけど靴紐がついてる靴があって迷った。
迷った末に買って、さてどうしようと考えて、靴紐をちょうどいい固さで固結びにしてしまえばいいと思い付いた。そうしてちょっとみっともなくなったところをボタンで飾ると、意外にも「いいじゃん」ってなった。履いて使うと、靴紐も解けて来ないし好きな色のボタンで足元を飾れて満足出来た。
発想の転換というか、そういうのって大事だな、って思ったという話。
END
「靴紐」
生きている限り、正解なんて分からない。
自分の命が終わる最後の最後、それを超えた更にその先にしか、答えは分からない。
選択は正しかったのか。
それは誰にとっての正しさだったのか。
その選択で悔いは無かったか。
それを考えた末にしか、答えは見えない。
自分が満たされて終わったとしても、周りの人間は不満だらけなのかもしれない。
自分は悲しみにくれていても、結果として良い方向にいくこともあるかもしれない。
自分の選んだ答えが周囲の正解とまるで違うかもしれない。
かも、かも、かも。
穏やかに過ぎるはずの時間が複雑に絡み合う。
答えはまだ、見えない。
END
「答えは、まだ」
あのリズムしか思い浮かばないのは年齢だろうか?
END
「センチメンタル・ジャーニー」
窓を開けると鋭い鎌のような三日月が見えた。
銀色がかって見えるからだろうか、怜悧な刃先は触れたら切れてしまいそうだ。
眼下には灯りの落ちた街と凪いだ海。
深夜二時。誰もが寝静まる時間。
ただ一人、眠れない男は窓辺に凭れ月を仰ぐ。
「おーい、元気でやってるかい·····?」
空へ向けて呟いた声を、月だけが聞いていた。
◆◆◆
甲板から見上げた月は銀色のスプーンに見えた。
揺れる波に船の灯りが反射している。
グラスの氷が一つ、カランと音を立てて溶けた。
深夜二時。見張りの自分以外、仲間達はもう寝ている。思いを馳せるには好都合だ。
「アンタはちゃんと、眠れてる·····?」
空へ向けて呟いた声を、月だけが聞いていた。
◆◆◆
互いの声は遠く離れて届く筈もない。
けれど。
たった一人凭れた窓辺で。
寄りかかった甲板で。
確かに君の、気配を感じた。
END
「君と見上げる月🌙」
日記やスケジュール帳というものが続かない。
自分の字が嫌いだからだ。
読めればいいと言いながら、買い物メモでも自分で書いた字が気に入らないと破って捨ててしまう。
昔買った 読書日記も、一週間くらいで自分の字の汚さが気になってやめてしまった。
空白だらけの手帳はそのうちゴミ箱に行き、無駄なお金を使ったと後悔する。
今は読書管理アプリやパソコンのソフトで日記を打つから、字の汚さを気にする必要が無い。
便利になったものである。
END
「空白」