せつか

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12/26/2025, 4:51:24 PM

窓についた水滴を指で拭うと、白に塗り潰された世界があった。
深夜だというのにほのかに明るいのは、雪明かりのせいだろう。雪が月光を反射して光を拡散させているのだ。いつもと全く違う景色に息をのみ、しばし見蕩れる。
街の屋根も、街灯も、街路樹も、全てが白に包まれている。街灯にこんもりと積もった雪は、まるでマシュマロだ。三角屋根も雲を載せたように丸く可愛らしいフォルムになって、思わず手を伸ばして触ってみたくなる。

――本当に、触ってみたいな。

ふとそんな事を思ってコートを羽織ると家を出た。
街は静寂に包まれている。ほとんどが眠りについているのだろう。

高いビルの屋上に辿り着く。
吐く息も白く、また降り出した雪がチラチラと暗い空から舞い降りる。
白以外の色を忘れてしまったかのようだ。
眼下に広がる白い雪は、やっぱりマシュマロみたいに見える。
「·····」

冷たいはずのその景色に、無性に飛びこみたくなった。


END


「雪明かりの夜」

12/25/2025, 9:37:30 PM

小説でも、詩でも、歌でも。
絵でも、彫刻でも、織物でも。
食事でも、建築でも、造園でも。
何かを造るという行為は、祈りに似ている。


END


「祈りを捧げて」

12/24/2025, 4:35:10 PM

一度だけ、ママに抱き締められた。
その頃はまだそんなにアル中の症状が深刻でなく、その日は酒が抜けてだいぶ気分がいいと言っていた。
客が優しかった、というのもあるだろう。
ママは私を抱き締めて、「ごめんね」と言った。
あの時のママの手のひらのあたたかさを、私は今でも覚えている。

それから程なく、ママはアル中が進行し酒が切れると私に暴力を振るうようになり、生活も荒んできた。
それでも私がママのそばを離れなかったのは、あの日の記憶が忘れられなかったからだ。
ママの優しい声。煙草の匂い。あたたかい手のひら。
たった一度のぬくもり。
あの日感じたあたたかさは、本物だった。


END


「遠い日のぬくもり」

12/23/2025, 9:47:35 PM

焚き火や蝋燭の炎の揺らぎは心を落ち着かせる効果があるらしい。
ガスコンロの炎では駄目な理由はなんだろう?
立ち上る炎の高さ? 炎の数?
どちらも現象としては同じなのに、シチュエーションが違うだけで全然意味が違ってくる。

いずれにしろ、火事には気をつけましょうね。


END


「揺れるキャンドル」

12/22/2025, 1:29:13 PM

気が付くと、とっくに夜は明けていた。
暗い部屋から廊下へと出ると、朝日が差し込み景色全体が白く輝いている。
その眩しさに目を細めながら、男はゆっくりと回廊を歩いていた。

眼下の広場ではそこかしこで朝のざわめきが起こっている。帰還した兵を出迎える者、勤務交代の申し送り、気の早い物売り達。今日からまた始まるいつもの日々。男には帰ってくる友を待つ余裕など無く、追われるように階下へ向かう。
角を一つ曲がったその先に、長身の影があった。

白い廊下に浮かぶ黒いシルエット。
いつもとは正反対の印象に、男は一瞬怯む。
「――ただいま」
黒い影は男のよく知る声で一言そう言った。
「·····」
何も言えずにいる男に、影はゆったりとした歩調で近付いてくる。いつもと同じ、跳ねるような歩き方だった。
背中に腕が回る。肩に顎を乗せてきた影に男は何か言おうとしたが、影はそれを許さなかった。
「何も言うなよ」
「――」
「しばらく、このまま」

陽が高くなるにつれ、光の範囲は広がっていく。
白く輝く回廊にこのまま二人、飲み込まれていくような錯覚に陥る。
それでもいいと、男は思った。


END


「光の回廊」

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