20歳(オリジナル)
私は化粧が上手くない。
いつもファンデーションを塗って眉を整える程度だ。
なので、成人式で着物の着付けとともに髪をアップにし、化粧してもらうのを楽しみにしていた。
人生初のガッツリ化粧。
プロの化粧を今後の参考にしようと。
近所の美容院で全てやってもらったのだが、終わって鏡を見た瞬間、愕然とした。
何だこのおばさんは。
頭上にアップした髪は昭和のお団子のようだし、普段あげない前髪を上げたせいで、面長の顔が強調されていて茄子みたいだ。
濃い化粧も、太い眉が田舎者くさいし、一重の瞼に塗られたアイシャドウは目が腫れぼったく見えるし、チークは濃くて漫画か日本人形みたいだし、濃い口紅は唇をやたら浮き立たせているし。
自分が見慣れないだけで、これが普通なのだろうか?
これで成人式に出席したが、ショックな事に、友人達は誰も「似合わない化粧してるね」とか「いつもの方が良いね」とか、私が期待したような事は、何も言ってくれなかった。
自分は自分をそこそこ可愛いんじゃないかと思っていたのだが、そうでもないのだと初めて理解した20歳の出来事であった。
三日月(オリジナル)
私はよく見る悪夢がある。
複数人がこちらをじっと見ている。
顔は誰だかわからないけれど、三日月のような笑った形の口だけがやたら目立っていて。
その口が、私を嘲笑っているような気がするのだ。
毎回、とても嫌な気分で目が覚める。
心理学や夢判断では、周囲の目を気にしすぎるとか、そういう診断が出そうではある。
でも、それはそう。仕方がない。
子供が小さいうちは仕事の早退や中抜け、急な病気の休みなど、周囲に負担をかけている自覚があるので、どうしても他人の目を気にしてしまう。
しかし、その場合は三日月でもへの字の形になりそうなのに、なぜ嘲笑う形なのかはわからない。
「ママ、三日月」
隣から急に子供の声がして、私はハッと我に返った。
キッチンで夕飯を作っている最中であった。
隣には踏み台に乗った4歳の娘がいて、包丁を持った私の手元を見つめていた。
(三日月?)
ここから月でも見えたのかと窓を探して頭を回したが、娘は短い手指をギュッと伸ばし、私が刻んでいた野菜を手に取った。
「ほら、三日月!」
それは、くし切りにした玉ねぎであった。
さっきまで鬱々と反芻していた夢の三日月とのあまりのギャップに、思わず吹き出してしまう。
「ほんとだ、三日月だね」
「あっ!お口にっこりもおんなじー!」
両端を指でつまみ、娘は口に三日月玉ねぎを当てた。
意味は全くわからないが、楽しそうである。
微笑ましく眺めていたら、調子に乗って生玉ねぎを齧り、
「ゔー!にがい〜!」
と、すごい顔をしていた。
私の悪夢も、次から口がくし切り玉ねぎになれば良いな、と思うのであった。
色とりどり(914.6)
人には色のイメージがあると思う。
太陽のような人とか、大人っぽい人とか、性格に色を感じる事もあるし、いつも着ている服や身につけている小物の色がそのままイメージになる場合もある。
自分が何色に思われているか、いただくお花のカラーでわかるんじゃないかと思っています。
で、これまでもらったお花のカラー。
圧倒的ピンク率。
ピンク身につけないし、決して乙女ではないし、オシャレでもないし、全く女子女子してないし、自分では淡白でクールキメてると思っていたのですが。
毎回首を捻りながら、どこがピンクなんだ??と、納得いかない気持ちで受け取っています(笑)
皆様のお花カラーはどんなでしょうか。
雪(オリジナル)
冬の夜。
外をトボトボと歩いていた。
吐く息が白く、寒い。
公園を出てからずっと泣いていた。
涙で頬はバリバリだ。
深夜呼び出された公園で、彼氏に別れを告げられた。
25歳から13年、長く付き合っていて、このまま結婚するんだろうと思っていた。
しかし、彼は既婚者だった。
しかも、奥さんと別れる気は全くない。
裏切られたと思った。
私の13年を返して欲しい。
意気消沈する私の靴に、何かがふわりと落ちた。
見上げると、雪。
多量の雪が、ふわふわと降り始めていた。
天気予報では朝まで降ると言っていた。
私はキツく目を閉じ、顔に雪を浴びながら、天に祈った。
どうかこのまま降り続け、公園にある彼の遺体や私の痕跡を全て消してくれますように。
君と一緒に(オリジナル)(異世界ファンタジー)
おいらの話をしよう。
おいらは人に変化できる鳥族で、吉兆の吉鳥だ。
物心ついた時にはもう籠の鳥だった。
幸福を呼ぶ鳥として自由を封じられ、鳥族の王が住まう屋敷の奥に囲われていた。
けれど、おいらに吉鳥の自覚は全くない。
だから、ただの迷信だ。
虹のような七色の尾羽と、成長の進みが遅いという特殊体質のせいで縁起良く思われただけだと思う。
何の力もなく、だからこそ籠からの脱出もできず、日々を無為に過ごしていた。
変化が訪れたのは、王妃が双子を産んでからだ。
鳥族では双子、特に雌は不幸を呼ぶとして忌み嫌われていた。
おいらと同じく迷信だと思う。
とはいえ、おいらを囲っているのにこの不幸。効き目がないとわかって自由にしてくれたら良かったのに、そうはならなかった。
彼女はおいらの近くに幽閉された。
彼女はおいらの事など何も知らずに話しかけてきて、一緒に歌ったり遊んだりしてくれた。
幼くて無垢で可愛かったなぁ。
成長してしばらくすると、彼女は色々連れ出されて戻らない事が増えた。
戻ってくる時は大抵大怪我をしていて、息も絶え絶えで床に横たわっている事がほとんどだった。
鳥族には色々敵がいて、戦闘に駆り出されているらしかった。
不幸を呼ぶ雌などいつ死んでも良いという周囲の思いが透けて見えて、おいらは生まれて初めて怒りを覚えた。
けれど、彼女は強かった。
生き残り、能力を磨き、美しく優しく強く成長した。
決定的な事が起きたのは、王を継ぐ試練を双子の雄が受ける場面でのことだった。
あいつは命惜しさに彼女を盾にしたんだ。
彼女はヤツの代わりに無事試練を乗り越えたが、それを知られる事を恐れた雄が彼女を殺そうとした。
おいらはその時、試練にちょい巻き込まれて籠から放り出されていたので、彼女とともに逃げ出す事ができた。
追っ手から逃れるため人型に変化したおいらを見て、彼女は驚いていた。
見た目がかなり年下の少年だったからだろう。
おいらの特殊体質の事を、彼女は知らない。
実は彼女の5倍は長く生きているおっさんなんだが、それは秘密だ。
初めての自由。
見た目相応に年甲斐もなくはしゃいでいたら、色々事件に巻き込まれた。その度に彼女に呆れられたり助けられたりもしたけれど、良い出会いはあったと思う。
彼女ははその間、こっそり恋したり失恋したりもあったようだけれど。
心配しないで、大丈夫。
おいらはずっとそばにいるよ。
彼女とともにいられるのであれば。
どこにいようとも、何があろうとも、楽しく生きていけるし、ともに死ねる。おいらは本当に、何の力もないのだけれど、彼女にとっての吉鳥でありたいと思うんだ。