アルミ合金のムニエル

Open App
2/17/2026, 1:55:17 PM

お気に入り

 ふと顔を上げてみると、時計は深夜一時を示している。
 栞を本に挟んで閉じる。何気なくスマホを手に取る。
 ホーム画面に2件のメッセージ表示があって、開いて見てみると本の感想が書いてあった。極力ネタバレはしないように気をつけてるんだなと、そう感じさせる内容だった。
 ストーカーの存在なんてまだ知らなかったから、結構なネタバレ喰らったなと。苦笑いをしながら、今読んでる場面とその感想を書いた。最後に口を膨らませた、怒ってる風なスタンプを送りつけた。相手はもう寝ているだろう。電気を消そう。
 電気は消した。明日もまた起きないといけないのに。また本を開いている。文字の羅列が、淡い。
物語を堰き止めていた紫色の押し花がされた栞を、横に避けておく。花の種類も、花言葉もわからない。でも綺麗な花だということはわかる。
 小さな栞が、ベッドに備え付けられた読書灯のオレンジ色に塗られる。花は黒くくすんで見えた。
花の栞はプレゼントされた物だ。プレゼントとは違うか。交換した物。
 私が使ってた鶴の栞に追いつく為に、もう少しだけ読んでおこう。

2/15/2026, 1:26:03 PM

10後の私から届いた手紙

10年後の私も、今これを読んでる貴方と同じように、10年後の私から届いた手紙を書いている。
何をしているのか、景気はどうなのか。人生相談めいたことを書いてくれているわけでもなく、何か助言をくれるわけでもなく、よくわからない哲学的なことを書き連ねているわけでもない。読んでも意味がない。そんな手紙を。
内容は、今貴方が読んでいるこの文章と一言一句全く同じらしい。
10年後も同じようにここで同じ文章を書いていると、10年後の私が、手紙にそう書いていた。
ここに書いてある文章を、おそらくさらに10年後にも、10年後の私からの手紙として書くのだろう。

2/15/2026, 8:24:14 AM

バレンタイン

明け方に見たUFOを、瞬きの間に見失ってしまった。
夕焼けにも似た朝焼けが、蹲ってる流れ星の上に見えた。まだ少し暗い。風が、まだ寒い。
家のベランダ。ゆっくりと片付けをする。ジッパーを開ける音が嫌にうるさく感じる。ジョギング中の初老の夫婦が、家の前を横切って行ったのが聴こえる。
銀色のパラボラアンテナなんて我ながら胡散臭いと思いながら、家族にバレないようにこっそりと鞄の下に押し込んだ。
2月14日。今日の朝が最後のチャンスだったのに。何ヶ月も粘ってたのに、結局いい写真が撮れなかった。
オカルトなんか、興味なかったのに。