アルミ合金のムニエル

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2/23/2026, 11:40:34 PM

Love you

冒頭部分を心の中で復唱する。舞台裏から向こうが明るく、微妙な騒めきを感じる。耳鳴りがうるさい。
ようやく勝ち取った、名前のある役だった。
プライベートでも経験がないのに、練習だけは何度もしてきた。こんな自分がふさわしいのかと悩んだ時もあった。なかなか思う様にいかないこともあった。
着たことがないような煌びやかな衣装。相手役はとっくに出ている。
深呼吸。
花束についた手汗を、そっと拭きながら。

2/23/2026, 8:46:23 AM

太陽のような

ふと立ち寄った神社には、縁結びの御利益があるらしい。入り口で飛蝗の交尾を見たから、強ち嘘ではないのかもしれない。
平日だというのに、結構な人が並んでいた。カップルで腕を組んでる人もいれば、そうでない人も。十字架のネックレスをした老婆も、そこに並んでいた。
本堂の屋根には、夕陽が反射していた。
傍に佇む摂社は誰にも見向きもされず、刈りきれていない雑草だけが、そちらに首を垂れていた。
飛蝗がまた一匹、足元に飛んできた。
恋御籤の結果は、末吉だった。

2/21/2026, 1:48:17 PM

0からの

 アーチェリーに、憧れていた。
 しんと静まり返った空間で、たった一人で立つ感覚は、これまで触れたことがないような澄んだ清水が、すうっと体内を通り過ぎていくようだった。吐いた息が白く濁って、前が見えないような錯覚。実際そこまで寒くはないし、白い息は吐いてない。それなのに。
 弓懸が冷たい。少し、肌寒い。
 足袋から伝わる温度が、体を強張らせる。これではいけないと思いながらも、緊張も相まっていうことを聞かない。
 足踏み、胴作り、弓構え、打起こし、引き分け。会。
 一つ一つ、動作を頭で唱えながら弓を引く。弦輪がギリギリと音を立てながら弓に力を伝えて、左手の親指の付け根に乗せた新品の矢に、より一層の緊張を与える。
 胸を張る。胸を張る。背中は逸らさないで。
 弓を持つ手をほんの心持ち上に上げる。そっと、的を見つめる。
 離れ。
 残心。
 大丈夫。あと三回チャンスは残ってる。

2/20/2026, 1:13:52 PM

同情

 千羽鶴が一羽、また一羽と飛び立っていく。次は何色の鶴が飛んでいくのだろうかと、そんなことを考えるのが、唯一の、日々の楽しみになっていた。
 病室は白く、広い個室だった。
 なんのためにあるのかわからないような、謎の軌道を描くカーテンレールを、目で、追った。
 窓から見える、雑居ビルを眺めた。鶴と一瞬、目が合った。
 リノリウムの床と、スリッパのツルツルしたようなザラザラしたような、なんともいえない感触は、いまだに慣れないけれど、高校の廊下よりかは、いくらかマシに感じる。
 今はちょうど四時間目。時間だけが過ぎていく。来客用の椅子に座ってみたけど、いつもと違う景色が見えるかと思ったけど、変わらない。だめだね。薬のせいで、頭が働いてないや。
 誰かが手紙をくれたから。先生が、千羽鶴を持ってきたから、千羽鶴が一枚、また一枚と崩れ落ちていく。明日の起きた時に、何色の鶴が床に落ちているのだろうかと、そんなことを考えるのが、唯一の、日々の楽しみに、なっていた。
 首に巻いた縄の跡は消えたけど、学校には、まだ行きたくないから。
 千羽鶴が一羽、また一羽と飛び立っていく。次は何色の鶴が飛んでいくのだろうかと、そんなことを考えるのが、唯一の、日々の楽しみになっていた。
 眠くなってきたな。

2/19/2026, 11:50:08 PM

枯葉

大学生になったので、家を出てやった。カブトムシを買ってやった。近所の店に売ってた幼虫は、五匹で千円だった。
一限目だけの日。なんとなくサボってみた日。水槽の中の腐葉土が、少し動いたのが見えた。

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