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5/31/2024, 9:13:32 AM

いつか君の流した涙が
熱に散り 雲に帰り 大地を潤し
やがて愛しい子の喉を刺す
甘い橙色になるように

身を裂くように響く声が
風となり 蝶を流し 種子を撒き
いつか晴れやかに笑う人の
両手を飾る花冠となるように 

優しい祈りが
例え残酷な絶望を経ても
いつか いつか光の射す
明日へ紛いなく続くように


‹終わりなき旅›

5/29/2024, 12:47:03 PM

口を開く、閉じる
「うわ、居たなら言えよ吃驚した……」

口を開く、閉じる
「何どうした、お腹すいた?」

口を開く、閉じる
「お前さぁ……」

口が閉じる、開かれる
「お前本当、アイツにそっくりだな」

口を閉ざす、視線が動く
飾り棚の上、写真立て

言葉はいつも、形にならない
別れも再会も、伝えられない

‹「ごめんね」›

5/28/2024, 1:34:46 PM

「いや、早くない?」
「暦的には夏だし良くない?」
薄ら寒い雨の中、またも冬の上着を引っ張り出した
私の隣、真白い腕を晒して君は笑った
「というか、どうやって来たの」
「お・し・ご・と」
「せ、世知辛い……」
ざわざわとさざめく大通り
カラフルに咲く傘の林を器用に抜けていく裾
「それで」
「うん?」
小走りに追いかけて、追い掛けて、道路の真ん中
ふと立ち止まる君は雨粒を透かしていた
「君の手を取ればいいのかな?」
「……うん、正解」
そういえばあの日は友引だったかと
遠ざかる意識の中、悲しく歪んだ顔だけが見えていた

‹半袖›

5/28/2024, 9:26:02 AM

「若い子は元気だねー」
「どしたの…って、あー成程」
青空に響く賑やかな歓声
砂埃と共に舞う、白煙の火薬臭さ
最初の最大イベントになるだろうそれに
ゆたり微笑まし気に目を細めた
「借り物競走とか楽しみにしてたんだよね。
 無かったけど」
「二次元のみであるあるな奴だ……」
「本当にそれねー」
忙しなく熱気を盛り上げるBGMは
少しばかり五月蝿くも
きゃらきゃらと楽しげな風に少しだけ
二人で足を止めていた

‹天国と地獄›

5/27/2024, 11:18:07 AM

「月に代わって…なんて台詞もあるけれど、
 今思うと不思議よね」
黒く柔らかな長い毛を梳く
不満気な唸り声が言葉を促すように小さくなる
「月にいるのは兎とか蟹とか女性とか、
 あとは嫉妬深い女神様だったかしら。
 どれも直接に裁く謂れは無かった気がするのよ」
結ばれた口元は何も語らず
それでも淀んだ黒い瞳は、確かな知性を持って
視線を上げた
「だからね、別に貴方だって、月を想う必要なんて
 どこにも無いのよ」
黒く柔らかな長い毛を梳く
しなだれる様に拘束した大きな身体を
月の下に覆う暴虐を
いつかその真円に、貴方が狂うのを忘れるまで

‹月に願いを›

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