同じことの繰り返しの日々
週に5日働いて、2日休んで
2日は小さく見ると違うけど大きな変化はない
5日×52週は同じことの繰り返し
月~金は感覚がバグる
せいぜい休み明けが月曜で、明日休みの疲れが金曜くらい
それでも生きていく
毎日毎日、やったーという感覚とともに生きていく
退屈なときもある
動いていても、代わり映えのしない日々だから
逃げ出したくなるときもある
安心なはずなのに、変わらないことが急に怖くなるから
消えていることもある
……感覚だけど
それでも1日1日と生きた日々を積み重ねていく
人に自慢できたり羨ましがられたりするような毎日じゃないけど、
疲れを感じる身体をベッドに預けて、
布団の温もりと柔らかな触感に癒されて、
そのままあなたと一緒に、落ちるように眠りにつく
バイバイ、今日、おやすみ
誰よりも柔らかい毛に包まれた暖かい身体を寄せてくる今日はゴロゴロと喉を鳴らす
「今日も可愛いね」
優麻は会う度にそう言ってくれる
はじめは上手く返せなかった
嬉しかったけど、それよりも照れ臭かった
まっすぐに伝えてくれるのがわかってたから
でも、その言葉のおかげで少しずつだけど変われたよ
頑張って可愛くなろうと努力した
受けとめたいし伝えたいと思って頑張って自分の感情を出すようにした
不思議と自信がついたんだ
ありがとう
友達に「可愛くなったね」とか「なんか幸せそう」とか褒められるようになったよ
全部全部、優麻のおかげ
誰よりも私を信じて、好きでいてくれてありがとう
「優麻ー!」
前の私なら大きな声出すことも、手を振ることさえも恥ずかしがってたな、と笑みがこぼれる
「香乃、今日も」
「かっこいいね!」
笑顔の私と、驚いているあなた
覚悟しておいてね
『20歳の鵜飼美琴様へ』
そう書かれた封筒が玄関の前に投げ込まれていた。
てか、私まだ19だけど。
悪戯だろうけど面白そうだから開けてみる。
柔らかく細かく波打つような罫線がひかれた紙が2枚入っている。
よく見てみてもやっぱり何も書かれていない。
「なんだ、この悪戯。ちっともおもしろくない」
期待はずれの手紙と封筒を机の上に投げ出す。
スポットライトを浴びるように光が差し込んでいるのに、誰の目も向けられていない。
夜、大学入学とともに始めた日記はすっかり日課になっていた。
机に向かうと視界に入ってきた手紙に驚く。
真っ白だったはずの紙は、色がついている。
「黒?いや、藍色?」
暗い色のなかに色味を感じる。
それに、少しばかり今より整っているけれど、確かに私の字だ。
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なんとかなるから
あなたのしたいこと、好きなことと向き合いなさい
大丈夫、私がなんとかするから
私を、あなたを、信じなさい
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女子同士で騒いでる
「あげたっけ?もらってない人いるー?」
「あ!いた!はい、ハッピーバレンタインー」
「どうぞ」
「てか、先輩に渡しにいったの?」
「えー、そんなむりだよ。ちょっとクラス覗きに行ったら先輩いっぱいもらってて」
俺らは中には入れない
今日は受け身に徹する日
くださいとか言っている男もいるけど、こっぱずかしくてそんなこと言えない
サッカー部のマネージャーからはもらった
部員全員にあげるとは聞いてた
まさか、チョコケーキだとは思わなかった
もらえたことは嬉しい
でも、いまだにそわそわしている
彼女は女子の輪の中でもらってはあげてを繰り返している
しばらく続きそうだ
お昼休みはあと5分で終わる
放課後は当番だから急いで先生のとこにいかなければ行けない
まだもらえていない
もらえるかもわからない
今日はずっとそわそわしている
そう、今日ドキドキ過ごしているのは女の子だけじゃない
俺はずっと待っている
彼女からのチョコならなんだっていい
手作りかどうかとか、大きさとか、関係ない
もらえば来月は俺の番がくる
俺のこと考えて1日過ごしてもらえるから
「菜穂子…」
いつか一緒に行こうと約束していた丘は思いの外風が強い
初めて会った、愛おしさを感じたあの日と同じ服を着た菜穂子が立っている
お気に入りの帽子を押さえながら、腰に届きそうなほどの髪は風に委ねている
綺麗だと思った
「菜穂子!」
風に負けないように声を張る
彼女がゆっくりとこちらを見る
いつだって優雅だった。なのにいつからか苛立ちに変わっていたゆっくりとした動き。今は柔らかさしか感じない。
「…きて」
「いって…」
「いきて」
風が吹く。先ほどよりもずっと強く。
目を開けていられないほどに強く。
風がやんで、目をゆっくりとあける。
現実がやってくる。
散らかり放題の部屋に、変わり果てて汚いと言われかねない自分の姿。そして、菜穂子がいない世界。
わかったから。生きるから。
その後に、もう一度会いに行くよ。
菜穂子がいなくなって気づいたこと、気づけたことあるから。
だから、俺を待っててくれよ。
俺をおとしたあの時のあの笑顔で。