ハクメイ

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2/1/2026, 12:52:33 PM

「あれが、例のやつか」
とても幼く、拙い少女の声が聞こえた。
「そうだ、会話は不可能らしい」
貫禄のある、渋い男性の声が聞こえた。

近くのブランコが、風に揺られて軋んだ音を出す。
土を踏み締める、足音が鳴り響く。
ごくりと喉唾を飲み込む音が聞こえた
何かを構えた、金属音も聞こえた。

一つの足音がこちらに近づき
「大丈夫だ。そのまま目を瞑っていてくれ」
と、男性の声がそう語りかけた。

「さて、やるか。課長?」
「年上には敬語を使って欲しい物だがな。まぁいい、
戦闘開始だ!」
少女が合図を出したのと同時に、奥から、何かの咆哮が聞こえた。
それはまるで、水に溺れたような叫び声だった。

破裂音が聞こえ、何かを切る音が聞こえ始める。
それと同時に、まるで水風船が割れたような、そんな音が聞こえ続けた。
いっとう激しい音を皮切りに、戦闘音は止まる。

「まだ目は閉じててくれ!まだ…見なくていい」
男性の声が、少し遠くから聞こえた。
「心海警部?民間人の保護は任せたぞ」
幼い声がそう言った。
男性の声が近づき、この体を持ち上げる。
大丈夫だ、と言われるまで目を閉じ続けていた。

お題『ブランコ』×『水売り』

1/31/2026, 2:20:04 PM

その世界はボロボロだった
現実とうつつの世界が入り混じった、そんな世界。
瓦礫が散らばり、空が割れ、星が溶けている。
辺りには、沢山の死体があった。
人間、動物、怪物や、キメラまで、多種多様に。

そんな世界を、一人の女性が眺めていた。
ベージュの髪を肩まで伸ばし、カーキのコートを羽織っている。
清廉な顔立ちに、可愛げがトッピングされたそんな顔。
コートと同じ色の眼で、崩壊する世界樹を見つめる。
爆弾を落とされたかのように、いやそれ以上に、世界が死にかけていた。

『答えは決まった?やなぎ』
どこからか、声が聞こえた。
体に刻み付けられたかの様な、そんな感覚を覚える。
「うん。決まった」
やなぎと言われた女性は、深呼吸して、答えを伝えた。
「あなたの提案は断るよ。とても、魅力的なだけどね」
『…なぜ?』

「この旅でね、この世界の事が大好きになったんだ。
この世界は醜くて、ひどく腐ってて、とっても狂っている。そんな世界だ。」
「でも、だからこそ。感情が、生と死が、人生が、とってもとっても、美しくなる。それに気づいた」
やなぎは微笑む。もうこの世にいない友を思いながら。
「だからね、断るよ。"この惨劇を無かったことにする"という、あなたの提案はね。」
『……』
「あなたの提案に乗ったら、私達が友達だったことも、苦しくて乗り越えた過去も、見たかった未来を望む感情も、無かったことになってしまうんでしょ?」
『そうだね』
「私はこの世界で生きてみせる。私の愛する世界で、私の大好きな人達を思いながら、未来を創ってみせる。」

声は、暫くの間黙り、嬉しそうに言葉を書いた。
『そっか……ありがとう。その答えは、私が求めていた答えだったのかもしれない。私がこの世界を生み出した目的を、叶えられた様な気がするよ。』
不思議な声は、そう言ってどこかに消えた。

旅時の果てに残されたのは、狂って、死にかけた世界だった。
それでも彼女は笑う。この世界で生きていることを。
「さてと…愚者として、いっちょ頑張りますかぁ!」


お題『旅路の果てに』×『爆弾』

1/30/2026, 12:38:51 PM

そこは、薄明色に染まっていた。
道も、家も、木もない。
ただ薄明色へと、空間が変化し続けている。
縦も横も、奥も手前も、何もかもわからない空間を、一人の少女が、てくてくと歩いている。
ガラスの様に透明な髪が、肩下まで伸びて外側にハネ、顔にはガスマスクをはめている。

「次は1940…え!戦時中じゃないですか〜今日はハズレだな…スニーキングが大変なんだよ〜」
マスクでこもった声を上げ、少女は歩き続ける。
「タイムトラベルも、肉体労働ですね。
たった一つの手紙を届けるのに、手間がかかりすぎですよ。やっぱり辞めようかな…でもあの人怖いんだよな〜ビジュが」

時間移動の郵便屋は、誰に訊かせる気もない愚痴を、歩くための燃料とし続けた。

お題『あなたに届けたい』×『タイムトラベル』

1/29/2026, 11:26:59 AM

そこには、たくさんのパソコンが転がっていた。
薄暗く、無機質な部屋の真ん中に、ゴミの山が形成されている。
古臭い大きな物、ノートの様な薄い物、家におけそうな物。図鑑が作れる程に、豊富だ。
その山に、壊れたパソコンが、新たに投げ込まれた。
投げ込んだのは、カーキのコートを羽織った女性だ。
ベージュの髪を肩まで伸ばし、大人びていて、可愛げのある顔をしている。

「これで最後かな」
一仕事終えた様に、ふーっとため息をつく。
深夜の公園にいるかの様に、彼女は物思いにふけた。
「人工知能ってのは怖いね。"愛して"と命令しただけで、こうなっちゃうんだから」
パソコンのそばにある人骨を眺めて、そう言った。

お題『I LOVE…』×『人工知能』

1/28/2026, 10:48:29 AM

そこは草原だった
風になびき、花や木が一つも無い、そんな草原。
中央には土でできた街道が、真っ直ぐと、地平線の向こうまで続いていた。
その道を、二人の旅人が話しながら歩いていた。

「本当に、この先に街があるんですか?」
灰色の、綿飴をちぎったような髪をした少年が、そう聞いた。全身を紺のマントで隠している。
「そのはずなんだけどね。なんせこの次元は、毎秒位置が変わっちゃうからね。めんどうだよ」
ベージュの髪を肩まで伸ばし、カーキのコートを羽織った女性が、そう答えた。
少し大人びて、それでいて無邪気な顔だ。

「確か、交易で盛んな街ですよね。
にしては、街道が整備されていないですけど」
「うーん、そうだねぇ……
まぁ、無かったら無かったで、その時考えよう」
「僕達の生活賭かってるんですからね!
この依頼をこなせなかったら、もう何かを質に入れるしか、穏便な手段は残されて無いですよ、やなぎさん」
やなぎと呼ばれた女性は、へいへい、と軽返事をした。
そうして喋りながら歩いていると、地平線の向こうに、建物が見え始めた。

「あ!あれですかね?僕、先行ってます!!」
少年は、鬼ごっこのように走り出し、その勢いでおもいっきり跳躍をした。
マントがその体を隠し、ぐにゃりと体が捻じ曲がる。
腕が翼となり、脚がもふもふの体毛に埋もれ、獲物を掴めそうな爪が生える。
それは人サイズの、灰色の梟だった。
梟はバサバサと、大きな翼をはためかせ、街の見える方向に向かって飛んでいった。
「ちょっと待ってレーラ、その街は多分…ってあーあ、行っちゃった」
レーラと呼ばれた少年、梟の姿はもう見えない。
やなぎも、駆け足でその後を追った。

数分走り、やっとレーラに辿り着いた。
彼は大きな梟の姿で、立ち尽くしていた。
やなぎは、彼が無言の理由をすぐさま悟った。
目の前にあったのは、街だった。確かに街だ。
火をつけたら全てが燃えそうな、木製の一軒家が立ち並び、中央には噴水と井戸がある。
奥には塔のような何かが、街を守るように建っている。
しかし、街が、街であるがための、それらがなかった。
「やなぎさん…これは…」
「ゴーストタウンだ。人なんて、いない。そんな街」

お題『街へ』×『幽霊』

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