『あの日の景色』



　死ぬのならポックリと
　会うたびに聞かされた

　病院で管だらけ
　アザだらけの腕や足

　「延命を望みますか？」
　「はい」と言う、不孝者

　苦しんで悲しんで
　それなのに言っちまう

　「生きてくれ」1分でも
　あんたの子でいたいんだ

　あの朝の景色なら
　マッサージを止めた顔

　恨むなら化けて出よ
　酒くらい付き合うぜ

『願い事』



　愛が欲しかった
　安心したり
　ドキドキしたり
　でも、はなれない
　愛が欲しかった

　夢を見始めた
　才能だとか
　可能性だとか
　でも、いつだって
　夢は夢だった

　生きていたかった
　普通に暮らし
　透明になる
　でも、ゆるされず
　死から誘われた

　何も欲しくない
　期待をしたら
　すがってみたら
　傷つくだけだ
　何も欲しくない

　願い事なんて
　しあわせなひとの
　遊びだと思う
　でも、叶うなら
　文字でも繋がりたい

『波音に耳を澄まして』



　波音に　耳を澄まして
　灼熱の　夏の真下で

　恋だとか　友がいないと
　人として　ダメな気がした

　「今のまま、それでいいの」と
　その海は　凛と囁く

　幸せも　重荷なんだと
　満ちて引き　ほかはやらない

　価値観を　どこに置くかで
　人生は　変わるみたいだ

　しょっぱくて　苦いくちびる
　波音に　キスをされてた

　泡となり　消える命を
　キミだけが　もて遊んでる


　
　

『青い風』



　恋が黄色い　鳥ならば
　雨に打たれて　死ぬだろう
　誰かが隠し　飼ったなら
　そいつは死ぬまで　泣くだろう

　「笑えないの」と　酒を飲み
　俺に甘えた　死神よ
　幸せ⋯やりたく　なったなら
　翌朝、死体で　浮くだろう

　それでも　それでも　愛したい
　青春みたいな　風が吹く
　わがまま　偽善も　かまわない
　本気で愛して　みたくなる

　そんな　女の　愚痴を聞き
　俺は　青い　風になる

『遠くへ行きたい』



　北海道や　沖縄へ
　北や南へ　行ってみたい

　海外旅行も　いいけれど
　日本語圏内　それがいい

　遠くへ行きたい　できるだけ
　現実なんかを　捨てるよう

　遠くへ行きたい　変わりたい
　知らない世界で　はしゃぎたい

　真っ暗闇の　住処では
　酸素も未来も　減るばかり

　お金はちっとも　ないけれど
　驚きたいんだ　死ぬ前に

　遠くへ行きたい　こんなにも
　世界は広いと　感じたい

　北海道や　沖縄へ
　「わたしは生きてる」叫びたい