《10年後の私から届いた手紙》
拝啓、10年前の私へ。
元気にしてる?
相変わらず、あの柔軟剤の匂いに包まれてるんだろうね。
変なの買って好きなのじゃなかったら怖いし、
結局、ずっと同じ香りを使ってよ。それが一番落ち着くんだから。
そっちは今、部屋が少し散らかってる頃かな。
「あとで一気に大掃除すればいいや」なんて思ってない?
悪いこと言わないから、こまめに掃除しなよ。
10年経っても、その癖だけは直ってないんだから(笑)
過去の恋愛で、いろいろあったね。
でも、そのおかげでメンタルは前よりずっと強くなった。
今は心だけじゃなくて、体も強くなりたくて、
自分のために必死に筋トレに励んでる……そんな君を誇りに思うよ。
大丈夫、安心しな。
そうやって自分を磨いてるお前のことを、
本気で、心から好きになってくれるやつが、ちゃんと現れるから。
今の私の隣には、その人が当たり前みたいな顔をして座ってる。
この人が、私の人生で「最後の人」だよ。
だから、今の努力も、自分自身のことも、信じていい。
毎日、筋トレ頑張ってるのも知ってる。
でも、今日くらいはいいんじゃないかな。
「自分へのご褒美」ってことで、
コンビニに寄って、一番甘いやつ、買って帰りなよ。
10年後の私は、今の君が踏ん張ってくれたおかげで、
結構、幸せにやってるよ。
またね。
《待ってて》
友達と恋バナする時は、いつも聞く専。
「いいな、みんな楽しそうで」と、心にもないことを思う。
同性が好きなんだと言って引かれるのが怖くて、
ずっと、自分を偽って笑う練習ばかりしてきた。
「早く彼氏作りなよ」「子供は絶対作りなね」
悪気のない親の言葉が、何度も私を刺す。
それはあんたの意見だろ。
飲み込んだ言葉の分だけ、気分が悪くなった。
情けなくて、単純で、嘘つきな私。
「元カノが忘れられない」
そんな勝手な理由で私を切り捨てたあの子。
「なんで私じゃダメなんだよ……」
溢れる涙も、憎しみも、全部抱えたまま。
ただ、私らしさを誰かに認めてほしかった。
深夜。すべてが嫌になって外へ飛び出す。
押し付けられた「普通」を、耳を壊すほどの爆音でかき消して。
鏡の前で、少しずつ変わり始めた自分の身体を見つめる。
重い鉄塊を持ち上げるたびに、「やるしかない」と心臓が跳ねる。
世界なんて救えない。誰かを守る余裕もない。
ただ、深夜の爆音の中だけは、私は私を救うヒーローだ。
私と同じように、偽物の笑顔で息が詰まりそうな君へ。
大丈夫。君は、ひとりじゃない。
この夜のどこかで、私も一緒に戦ってる。
財布の隅には、期限切れの「大吉」。
私のことを本気で愛してくれる人に会えたら、その時、私はこれを捨てるよ。
誰もいない静かで、綺麗な海辺。
嘘のない私で笑える場所へ辿り着くために、私は今日を完走する。
だから、いつか出会うあなた。
そこで待ってて。
《旅路の果てに》
日本の学校では「禁止」の二文字で縛られていた、メイクも、ネイルも、スカートの丈も。
けれど、ここでは誰も私を止めない。
「え、これも自由なの?」という最初の驚きは、すぐに弾けるような「ラッキー!」に変わった。
お気に入りのアクセサリーを揺らし、ネイルを褒められ、自分を彩るたびに、心までアップデートされていく。
でも、そんな自由と引き換えに待っていたのは、「全部英語の台本」という高い壁だった。
完璧主義を捨てて、手に入れたもの
「話せなくて、嫌だ!」
ひとりの部屋で泣いた夜もある。もっちりしていないパサパサのピザを喉に流し込みながら、お母さんの煮物を思い出しては鼻の奥がツンとした。ピザは好きだけど、毎日これじゃ修行すぎる。茶色い煮物が、世界一の高級料理に見えた。
けれど、ある日、私は開き直った。
「日本人なんだから、英語ができなくて当たり前じゃん」
そう思えた瞬間、殻が破れた。
仲間に発音を聞き、意味を教わり、必死に食らいついた稽古。
本番の舞台で、私は誰よりも堂々と、パワフルに自分を解き放った。
「前より明るくなったね!」
友達のその言葉は、どんなトロフィーよりも輝いて見えた。
安いガムと、温かい煮物
授業のあと、学校近くのお菓子屋で買った安いガム。
そのチープな甘さを噛み締めながら、羊や鳥が歩く豊かな自然を眺めた。
あの時のガムは、不安を乗り越えたあとの「勝利の味」がした。
今の私が笑っていられるのは、間違いなくあの日、自分で時間割を決め、自分でルールを塗り替えた私のおかげ。
日本に帰り、久しぶりに口にしたお母さんの煮物。
それは、驚くほど暖かくて、優しい味がした。
あの時の重たいキャリーケースに詰まっていたのは、不安じゃない。
「どこでだって、私は私になれる」という、一生ものの自信だったんだ。
<あなたに届けたい>
机の上には
ぐちゃぐちゃになった便箋
伝えたいことなんて
書き出せばキリがなくて
直接は送らない。
心では繋がってる、なんて
都合のいい勘違いをしていないと
もう、立っていられないだけ。
何も届かなくてもいい。
むしろ届かないほうが 好都合か。
月日が経てば
貴方も私を忘れるだろう。
貴方が思ってるより
私はずっと弱くて
出会わなければ良かったなんて
思ってしまう自分が一番嫌いだ。
I LOVE…
受験勉強忙しいのはわかってるよ。
頑張ってね…
なんてずっと思えるほどわたしは優しくない
会いたいし、触れたいよ
これってわがまま?
会いたいのに、連絡取りたいのにできないのがもどかしい
通知の来ないロック画面
あーあ、貴方と同い年なら良かったのに
別れてないのに
別れた感じ
生きてる心地しない
貴方から貰った手紙を抱きしめて
星降る夜に「好きだよ」とこぼした