永久恒星なんてどこにもないの
生まれたものは死んでゆくから
探している星は見つからないの
もう望遠鏡にも映らないから
死ぬ瞬間なんて視たくはないの
美しさを求めるのは罪深いから
お母様、みんな死んだら冷たくなるのね
だから永遠を誓うと切なくなるの
星も名付けられる生命だから
【星になる】
「いだっ」
「……何故、こんなところに」
「なぜって転寝日和の午後だから、それも経った今終わったけど」
「助教が涙目になって探してますよ」
「今日は休講だよ」
「経った今決めたでしょう」
「うん」
「先週の課題の、答え合わせなんですが」
「答えのある課題なんて出さないよ。なんにも面白くないったら」
「結局判りませんでした。締切だって昨日思い出して、徹夜です」
「一夜漬けじゃないか。君そういうタイプなのか、面白いね」
「判らないのが正解ですか」
「正解は無いよ」
「すると、鐘は鳴らないのかもしれませんね」
「何故そう考えたのかな」
「基本的に私たちは無関心だから」
「…………」
「それとも教授、貴方は『聴こえなかった』とでも言うんですか?」
「いいや。君の言うとおり、私たちは基本的に無関心で、無責任で怠慢だからね」
「そこまでは言ってません。早く起きてください」
「悪いね。ところで何か忘れているよ」
「なんです」
「君に足首を踏まれたんだが」
「教授」
「うん」
「次の講義に遅れます」
「そのようだね」
「急ぎましょう」
「ここから間に合うかな」
「走れば一分前には着きます」
「……では肩を貸してくれるね?」
【遠い鐘の音】
暖色と寒色、交互に照らされた夜道を踏み荒らしたくないので迂回した。
美しさとは想像を超える。
想像を超えるものは、やはり想像を超えて遥かに恐ろしいので、人は近づかないほうが良い。
それでも質感が気になって、手にすくってみる。
想像では柔らかな冷たさがあって、すっと溶けた。
実際には激痛に痺れがあって、じんわり熱を帯びたまま。
これが雪。
これが美しさの本性か。さらさらと溶けては消えず、べたりとした触感が残る。
それでも懲りずに、
逆さ箒の枝の幹。
座れない長椅子。
結べない星座。手を伸ばしてはいけないものの正体を確かめる。
明日は快晴。
細氷の眠りが夜道に敷き詰められている。
【スノー】
ホットなミルクに はちみついれて
きのスプーンでかきまぜる
ふんわりうかぶ やさしいできごと
あのひと こんやよくねむれていますよに
ベージュのカーテン
もう9じだもの
きっとまんまるね おつきさま
おきにいりのえほん
まだあったかな
ボロボロやぶれていたって いいの
いま なによりもふれていたい
すべてがあたたかで ありますように
むろん
すべてに かこも
ふくまれます
【ぬくもりの記憶】
不自然なことに気づいたの。からだの感覚が無くって。
夢の中でも、もう少し何かあると思うけど。うまく走れない怠さとか、熱を持たない痛みとか。
あとはなんだろう。忘れてしまった。
そうだ。
なんで貴方は怒っているの、とか。
どうして私は、謝っているの。とか……
やっぱり夢の内容って面白い。夢だと気づいたら、もっと面白い。
絶対に起こり得ないことに対しても、私は真剣に考えて。本気で向かって、全力で生きて。
莫迦らしい。
無駄な想像力に傷ついて。
目が覚めたら涙して。
現実はどう? 今朝見た夢よりも不自然じゃない?
何も思い通りにいかないじゃない。
回想して日記を付ける。他人のような私を書き留める。
体温なんて元から要らなかったのかも。
からだは芯から冷えていくの?
それとも末端から?
鉛筆がみつからない。いつも枕元に置いてあるはずなの。
【凍える指先】