テーマ:優しさ
いつも必ずごはんを完食してくれて、食べ終わった食器を流しで水につけてくれること。
娘が夜中にふとんを蹴飛ばしたのに気がついたら、そっと自分のフリースをかけてくれること。
私が食器洗いや洗濯物なんかの家事で忙しそうにしていたら、娘の遊び相手をしてくれること。
朝、目覚ましアラームのあと10分くらい二度寝をしていてもそっとしておいてくれること。
晩酌しますか?といって、柿の種をお皿に出して、2人の間に置いてくれること。
優しい夫で、優しいパパ。いつもありがとう。
テーマ:安心と不安
部屋の寒さから逃れるように、布団に潜り込む。冷えた足先が、少しずつ温まっていく。
体が暖まるほどに、心もほどける。これだから冬の朝というのは布団から出られないんだよなぁ、と思う。暖かい安心感に包まれていつしかまどろんでいた。
夢を、見たらしい。
嫌なイメージだった。短い悪夢にぱちりと目が覚め、いつの間にか布団から出ていた手が少し冷えてしまっている。
体調が悪くなるといつもこうだ。私は、飲み忘れていた漢方薬を飲むために布団から出る。
お湯を沸かし、漢方の顆粒をぬるま湯で流し込む。体が少し暖かくなり、さっきの夢からくる不安も、いくらか薄らいだような気がする。
テーマ:記憶のランタン
「ふふ…」
薄暗い部屋の中。
手元の小さな光に照らされながら、
思わず笑みがこぼれる。
ぐー、ぐー、と寝息を立てる小さな娘。
その横で、母はスマホの画面をそっとスクロールしている。
もちろん、中は娘の写真で埋め尽くされている。
カメラを向けると、ほっぺに人さし指を当てる姿。
運動会では、ぶどうの衣装を身にまとって踊った。
みかんを両頬に添えて、無邪気に笑った日。
スクロールするたび、写真がぽっと灯るように浮かび上がる。
記憶のランタンのように、
スマホの光は思い出をよみがえらせる。
「…ぃたっ」
娘に背後から蹴られた。
スマホの光で起こしてしまっただろうか?
慌てて画面の光を落とす。
「…ぐー、ぐー。」
娘のほうを見る。
どうやら起きてはいなかったようだ。
指しゃぶりをする寝顔。
さっきまで灯っていた光は、もう消えている。
小さないびきを聞きながら、母も眠りにつく。
テーマ:君を照らす月
窓の外をのぞきこみながら、きょろきょろと月を探す娘。
絵本『おつきさまこんばんは』を読んでから、
空に月を探すようになった。
「おつきさま、みえないねー」
「雲さんとお話してるのかな?」
「あっ」
雲間から、ふいに月が顔を出した。
娘は少し興奮気味に、まくしたてる。
「おつきさま、くもさんとおはなししてたよ!
おつきさま、こんばんはだよ!
おつきさまがね、くもさんとね――」
「そうだね、雲さんとお話してたんだね。
お話が終わって、出てきたんだね」
「おつきさま、みえたよ!」
幼い瞳が月を見つめて輝き、
小さな手は光のほうを指さしている。
君を照らす月は、まんまるい形をしていた。
テーマ:木漏れ日の跡
授業中、ふと床を見ると、
木漏れ日の跡が揺れている。
キャンパスノートを机に広げ、
きれいな水色のシャープペンシルを使って
板書を写す。
窓は少し開いていて、そよ風が心地よい。
季節は、春。
自然豊かなこの白い学び舎で、
静けさのなかに先生の声を遠く聞く――
はっ、と人の気配で目を覚ました。
いつの間にか、眠ってしまったらしい。
「おはよう」
・・・ん?
「お母さん、ごはん」
「おはよう」
私は、寝ぼけたまま挨拶をする。
また学生時代の夢を見たようだ。
カーテンの隙間から差す朝の光に、
さっきの夢の余韻が少しだけ残っていた。