窓を開けると風が吹き抜けた
反対側の窓も開けようと振り返ると空っぽになったベッドがひとつ目に入る
“受け入れられない”
“現実を突きつけられるから”
毎日もう居ないはずの君を見ているのが辛くなってあの日全て片付けてしまった君の荷物
そこは初めから誰もいなかったようになった
同時に君がここに存在した痕跡も全て無くなってしまった
それからずっと自分の手で君を二度失ったような感覚に苛まれ続けてる
自分勝手だと思う、自分勝手に後悔してるんだ
ごめん、本当にごめん
空のベッドをしばらく眺めてひとつ息をつく
風が通るようにそのベッドの近くの窓を開いた
“………!”
ふと、名前を呼ばれた気がした
#誰よりも 近くで
「ねぇ……あの、さ」
「ん?どした?」
「今は…ちょっとだけ離れて」
「なんで?」
「なんでも!」
「えー、いいじゃん」
そう言って彼女はぎゅうぎゅうとくっ付いてくる
良くない!非常に良くない!
私の心臓が、貴女への“好き”を伝えたい!って
ドクドクと叫んでるんだから!!
#伝えたい
僕の巣は、外の風がやさしく薄まって届く場所だ。
朝日のきらめき、昼の暖かな日差し、沈んでいく夕日、優しく光る三日月。
ここで過ごしていると時間の輪郭が曖昧になる。
ここにいると、急ぐ理由がひとつもなくなる。
アップライトピアノの前に座って、鍵盤に指を落とす。音は高くも低くもなく、ただ空気に溶けていく。弾いてはやめ、やめてはまた弾く。誰かが来る予定なんて、どこにもないから、曲は区切りを持たない。
ぬいぐるみはいつもの場所にいる。抱えれば、安心がすぐ形になる。
お気に入りの椅子に戻って本を開く。文字を追っているうちに、ページの隙間から眠気が零れて、僕はそのまま目を閉じた。夢の中でも、巣は変わらずに穏やかな空気のままだった。
目が覚めたら、小さなお風呂にお湯を張る。髪の先から足のつま先までしっかり温めて、湯気の向こうで外の音を想像する。
君は来るかな?来るかどうかは分からない。
でも、待つこと自体が、ここでは一つの過ごし方だ。
またピアノに戻る。今度は短いフレーズだけ。
飽きたらふかふかのベッドに横になり、天井から降り注ぐロウソクの光の粒を数えながら、静かに呼吸を整える。
ぬいぐるみ。椅子。小さなお風呂。ピアノ。ふかふかのベッド。
のんびり、ゆったりと時間が過ぎていく。
通路の向こうの玄関の気配に耳を澄ませながら、今日も巣は優しく僕を包んでいた。
お気に入りが詰まったこの場所で、来るかも分からない君を待ちながら。
#この場所で Sky side.S
……チリリン、と来客を知らせる鈴の音がなった。
にっこりと頬が緩むのを感じながら、僕は急いで玄関に向かうのだった。
知られるのが怖い
嫌われるのが怖い
傷つくのが怖い
弱い自分を見せるのが怖い
当たり前だ
信じていても裏切られることを知っている
素の自分で居れば居るほど深く傷つくことも知ってる
だからずっとそこに壁はあった
誰と接していようが何をしていようが
壁は変わらずそこにあった
なのに
いつからだろうか
そこにあったはずの壁が無くなっていたのは
いつからだろう
弱さを見せてもいいだなんて、思い始めたのは
不思議だね
きっと君は変わらず手を差し伸べてくれるのだろう
だったらもういっそ弱さも不安も全部
#あなたに届けたい
そう思ったんだよ
今日も優しくいられただろうか
今日も優しさを持てていただろうか
誰かに、自分に、優しく出来ただろうか
そう考えてしまうほど
少しずつ、少しずつ、何かが削れていくのが分かる
優しくありたい
#優しさ