心のざわめき
ある程度作品を読むと人柄が見えてくるという。
私は場合はある程度の文章量を読むと、文章のクセが脳内で色やカタチや香りなどのイメージに変換できる。
例えば、仄暗い中にも純粋さがみえるあの人の文章はどこか文学的で、桜の香りがする。
例えば、2次創作を元に発想を飛ばすあの人のまっすぐな文章は、黄色いセロファンで蓋をしたプレゼントの箱みたい。
心をざわめかせる文章はどこか、個性的でそれぞれ美しい。
星
拝啓、私の赤ちゃんへ
はじめまして。
貴方がこれを読む頃はもう立派な大人ということなのでしょう。
私はもうすぐ病で死にます。
死ぬことは怖くないです、寿命は等しく皆にあるものだから。
星にも寿命があるそうですよ。
小さい星は力尽きて黒くなるけど、大きな星は大きな力で爆破し、ガスとなりやがて新しい星の材料になるといいます。
私も貴方という星を生む、大きな星になれたかしら。
願いが1つ叶うなら
「嘘つき」
彼女の去っていく背中を僕は追いかける資格もなかった。
はじまりは昔のほんのひとつの嘘だった。
ひとつの嘘が不自然にならないよう、次々と出まかせを言い気づいたら沢山の嘘をついていた。
嘘を誤魔化すための嘘をまた吐いて誤魔化し、気づいたら嘘だらけの僕に君はあまりにもまぶしかった。
年月が立つに連れいつしか僕は嘘さえ本当のことのような錯覚さえ覚えた。
しかし、錯覚は幻でしかない。
ああ、神様。
願いが1つ叶うなら、
嘘だらけの僕に真実を語るくちを下さい。
ラララ
「ラララ、そーらをこーえてー♪」
歌をうたいながら夢をみる。
ヒーローが僕の目の前に現れてくれる夢。
悪い奴が次々と倒されて、手を差し出して、そして…
鉄格子がはまっている窓越しに空を見る。
鳥が自由に飛んでいた。
僕は知らない。
必死に助けを求めない者の所にヒーローは現れないことを。
僕は知らない。
自分が自分を救う唯一のヒーローになれることを。
question
クエッション、問い、知的好奇心。
Q.いつか好奇心は私を殺すだろうか?
「あんたの場合はそーッスね!」
「冷たいなぁ、南君」
助手の南が資料をどさりと私のデスクに置き、手の埃を払った。不機嫌そうだ。
「好奇心で毎回事件に首突っ込んで、命を危険にさらしてまで解決しようとするの止めません?」
「お母さんみたいだなぁ」
応募で探偵事務所に勤めてる少年の言葉とは思えない。
「南君はなんでこの事務所で働いてるんだい?」
「あんたの監視!浮気調査とかならともかく、殺人事件の依頼なんてぜってー断らせるッス!!」
前回の病院沙汰がよほど心配させたのだろう。
「傷なんて残ったら本当に嫁のもらい手がなくなるッスよ」
「その時は、南君にもらってもらおうかぁ」
「んなぁッ⁉︎」
耳まで真っ赤になっている、からかいがいのある助手だ。私はもう適齢期も過ぎているというのに。
カランコン、と一階の客間のドアが開く音がした。
「さぁ、次の依頼は何かなぁ?」