孤月

Open App
12/25/2025, 2:40:17 PM

出会いは月が綺麗にみえる夜に突然訪れた。

祈りを捧げることはもう習慣化。
周りへの感謝を忘れず、自分を整える。

家族と別れてからこれから1人でこの生活を続けて行くと思っていた。

1年前からはじめた神社巡り。少し遠くの神社に参拝するめに、車を走らせながら向かっていた。その道中、配信をしていた。そんなに視聴者は多くない。その中で、突飛なコメントが飛び込んできた。

「2人でお話ししたいです。」

プロフィール画像は女性の後ろ姿。ぱっと見かなり若く見える。娘がいたらこれくらいだろうかと思う。そんな子が2人で話したいとは何事だろうか。配信も他に2人だけしか見ていない。興味を惹かれた私は、彼女がいいならと2人で話してみることにした。

連絡先を教えてもらい、無料通話で話すこととなった。
彼女は大学生。私の住む地域からはかなり離れた所に住んでいるようだった。たまたま見かけた配信で、私の声に惹かれたらしい。真っ直ぐに「声がどタイプでやばい好きってなった。」と伝えられると悪い気はしない。
彼女とは夜中から明け方まで話し込んだ。はじめてあった気がしなかった。特に深刻な話をされるわけでもなく、ただ心地よい時間だった。それが余計に謎であった。この日限りだろうと思っていた。

しかし次の日も彼女から連絡が来た。
「昨日の月が綺麗で、またみたいなって思ったの。」

そこから毎日彼女と連絡を取るようになった。お互いの日常を共有し、暇さえあれば電話をずっと繋げる生活になった。日常に彼女が知らず知らずのうちに侵食してきていた。

知り合って数日後俺は彼女の住む地域に行くことにした。突発的に。
別に特別会いたかったとかそういうのではない。
ただその日会う予定だった女性にドタキャンされモヤモヤしていた。顔も見たことないが、毎日長電話してくれる彼女なら、たぶん会えるだろうと直感が訴えたのだ。
あわよくばその日中に触らせてくれるかもとか考えた。まあ、最近の若い子だし警戒心はそれなりにあるだろう。期待はしない方がいい。連絡すると彼女は尻尾を振っている様子が目に見えるようなテンションで、「今日来る!?どうしよう嬉しすぎておかしくなりそう」と変なことを言いながらも受け入れてくれた。

片道5時間。
待ち合わせ場所に彼女はいた。

少し罪悪感がある。
毎日祈りを捧げていたら、こんな出会いがあるなんて。

月の元、繋がったご縁。
このご縁がまさか俺の人生を大きく変えるようになるとは。
1人で祈る毎日が、2人で祈る毎日になるのはまた別のお話。

12/3/2025, 7:53:05 AM

知らない場所から贈り物が届いた。
何が入っているかわからずゾッとしたが、好奇心の強い俺は恐れず開封することを選んだ。

中には見切り品のシールを貼られた女が入っていた。

顔は青白く、上半身は貧相で、下半身は象のようにぼてっとしていた。服も着ているのか着ていないのかわからないような薄着で、冬も目前のこの時期にはとてもじゃないがみられない格好をしている。正直ギリギリ抱けると思った。顔は美人ではないが悪くない。表情に感情は見られず、ただ口をひとつに結び俺の言葉を待っているように見えた。

どのような経緯で見切り品のシールを貼られ見知らぬ男の家に届けられたのか。謎しかないこの女を、どうするべきか。人の贈り物なんて考えたこともなかったし、ましてや知らない女だなんて、夢の話ではないのかとも思った。しかし何度見ても本物の女である。

まともな男なら通報するのだろうか?
ただ俺はまともな男ではない。
迷わずこの家で過ごさせることを決意した。
うまくいかなければ俺は終わるけど。
まずは女に同意を得ないと。

「君、話せる?君の事情は知らないけど、俺と一緒に過ごしてみない?」

女はその言葉に黙って頷いた。それは本意じゃないように思えたが、女にはその手段しか残されていないように感じた。話せない事情があると察した。

ここから俺と贈り物の見切り品女の、主従関係がはじまった。この時、まさか俺が、この女を手放せなくなるとは思いもしなかった。




9/4/2025, 10:20:19 AM

あなたも私も屑だってわかっている。
だから惹かれたんです。

何も合わないのに、離れられなかった。
あなたは友達だと言いながら、身体の関係を求める。
私は寂しさを埋めるために、友達の線を超えた距離で関わる。でも、セフレと定義された関係はただ虚しいだけだった。

「恋人じゃだめ?」

重い鎖のようなその言葉は、絶対に口に出せない。
恋人のようなことをするのに、現実的には恋人になるなどあり得ない組み合わせ。だから都合が良い、を選ぶしかなかった。

仮に関係が終わったとしても平気だと思っていたけど、あなたが引き止めようとすると、約束を果たせてないからと罪悪感で戻ってしまう。
結局何度も身体を許して、自分のプライベートもどんどん犯されていった。

私はあなたを知らないから、去れない。あなたを知ってからじゃないと去れないなら、一生私は呪いにかけられたままなのだろうか。
これは一種の洗脳…?などと思いながらもなぜか求めてしまっている。あなたをもっと知ってしまえばどんなに屑だとしても好きになってしまうとわかっているから、知るのが怖い。けど知らないままだと離れられない。

どちらも自称優しい屑。
出会ったのは必然だったのかもしれない。
けど、このままじゃ失うだけ。
いくら惹かれていても、幸せじゃないなら離れなきゃいけないかな。
あなたの呪いだって、皆にかけてるんだろう、
だったらもう離れていいよね。

あの惹かれた瞬間を忘れたくないけれど、どの関係でも私たちは壊れてしまうだろう。
知らないまま去ってごめんね。

8/19/2025, 11:23:08 AM

とんでもなく痛い爆弾をつけられた。
あなたは苦痛しか与えない。
「あなたのせいでこんなに痛い」
泣きながら訴えたら、
「なぜ泣くの?」ととぼけて聞かれた。
だから、泣き寝入りするしかない。

私はあなたを信用して、身体を許したのに。
あなたにとってはただの駒。
偽りの安心感と包容力に惑わされて、気づいたら依存していた。身体を許す時も心は苦痛しか感じてないのに、都合が良いだけにしては優しすぎるあなたに溺れてしまった。

なんて馬鹿だったんだろう。
ただの興味で飛び込んだ世界は、
やっぱり欲に塗れた闇世界。
まともな人の、ドス黒い裏の顔。
病気の巣窟。
孤独の埋め合わせ。
何か満たされない寂しい者の集まり。

私も、ただ欲に塗れた爆弾魔になっただけ。
結局快楽と引き換えに、苦痛を与え合う関係にしかなれなかった。私だってあなたに苦痛しか与えてないんだろう、私がこんなに痛いのは。

これからこの大きな爆弾を抱えて、私は普通の生活ができるのだろうか。
いっそあなたがもう責任とってくれたらいいのに、なんて。無理なのはわかってるけど笑

あなたは何も痛くないんだろうね。
私にひとつも心が動かないんでしょう?

私を爆弾魔にしたあなたを一生覚えているから

8/9/2025, 1:01:11 PM

今年の花火は1人。

誰と一緒にみたかったのかななんて考えながら、ベランダから眺めている。
幼い頃は家族と、中高生の頃は友達と、昨年ははじめての恋人と。
夏のじめっとした風を肌に感じながら、潤いのある記憶を思い出す。のんびりとした間隔で派手に音を立ててひかる花火が、断片的に記憶を見せてくれているかのようである。
家族の職場からみた花火。どんな花火だったか覚えていないが、興奮してはしゃぎながら楽しんでみていた覚えがある。職場の人も家族もみんなで、ワイワイと話しながらみていたっけ。
友達とお祭りでみた花火。私が変わっても変わらなくてもずっと忘れないで、思ってくれている友達と。花火よりも友達が綺麗で、横顔をみていた気がする。憧れの存在のように、遠くにいくように思えて、花火すらも切なくみえた。
恋人とベランダから見た花火。場所も花火も今年と同じ。ただ昨年は好きな人が隣にいた。はじめて泊まりに来た日、ぎこちない空気の中花火を眺めていた初々しい甘い記憶。花火は今までで1番輝いてみえた。

そして、今年の花火は1人。

盛大に打ち上がってきらきら輝いて、儚く空に散るひかりに、思わず涙腺がゆるむ。
1人でみるのも悪くない。むしろ大歓迎である。
しかし、今の私は誰とみたかったのかすらもうわからないのだ。それが儚く空に散る光と重なり、切なくなってしまった。
一緒にみたいような、気がする人もいた。でも私と一緒にいてはいけないと、想いは殺している。

花火で思い出す人は、大切な人なんだろうと思う。
自分も、誰かの記憶に花火を通して干渉してないかな、なんて。
そんな願いも儚く消すように、フィナーレの大きな花火がどどーんと鳴り響き、夜闇に消えた。

Next