クリスマス。それは、キリストの誕生日。いつの日かそれは恋人と、家族と、大切な人と過ごす日になっていった。
今日はクリスマス。雪が白いベールみたいに降り注ぎイルミネーションがいい差し色となり人々を輝かせる。というのは妄想の中の話で私は1人部屋の中。誰か来てくれないかなぁ……なんて考えながら外に出る準備をする。何故今日バイトなのか…虚しくなった自分を慰めているとあっという間にバイト先。私が少女漫画の主人公だったら今日運命の出逢いを果たすだろうな、まぁそんなこと起きないんですけど…
夕方のケーキ屋とは忙しいものであっという間に夜。恋人達に囲まれながら背中を丸めたイケメンがきた。振られたのか。と哀れみの目を向けていると「あ、あの!姉さんが貰ったら喜ぶケーキってなんですか!」と話しかけてきた。えこれは、主人公になれるチャンス?と思いながら答えようとした時、プルルルル。彼の電話が鳴った。「あ、ごめん!今お店着いた…すぐ買ってくるから待ってて!」…「すみません…」
バイト終わり。イルミネーションを見ながら
「サンタさん。来年は私を主人公にしてください」と必死に願いながら帰った。
「僕、もう無理かもしれないんだよね。」
急に言われたその一言。俺は必死に理解しようと思考を巡らせたけどやっぱり理解出来なくて、「え、?なんて?」ってきっと1番しちゃダメな反応をしてしまった。
「んー、一言で言うと、死にたい?的な?笑」
そうやって、へらへら笑いながら言う君の顔を、俺はどんな風に見てたんだろう。その場の時が止まったような感じで、表情筋を動かすことも許されないような。そんな感じだった。「え、なんで、俺に、?」息を飲み、瞳孔が震える中、俺は言葉を紡いだ。
すると君は少し間を開けた後に言った。
「君の事が好きだから…いや!ごめん。変、だよね!引いた、?」
そう、焦る君を何故か俺は抱きしめて、静かに泣いていた。
"俺も、好き"
貴方はずっと、私の言う通りにしていればいいのよ。
そう、母に育てられた。きっと、母にとって私は自分の成し得なかった夢を叶える為の人形だったのだろう。だから私は母の言う通りにしてあげた。毎日の運動や食事制限。ましてや関わる友達さえも母はせいげんした。私は可哀想だったのだ。“自分の夢を自分で叶えられない母“が、哀れで仕方がなかった。
あれから時はたち、今日は高校の卒業式。母は、泣いていた。そんな母の胸に私は思いっきり刃物を突きつけた。
グサッ。というおとを立てると思っていたが案外静かに刃は、母の肺を貫いた。グルグルと音を立てながら何かを必死に伝えとうとする母。私はそんな母の横に行き、そっと囁いた。
これで、夢が叶うね。か弱いお母さん。
眠たい目を擦りながら私はデスクと向き合う。明日の資料作りだ。うちは世の中で言うブラック企業と言われるところだと思う。毎日残業して、睡眠もまともに取れていない。でも、私はどうしても辞められない。だって、"仕事がある"ということは、私は誰かに"必要とされている"ということになる。私はその実感を得ることでしか生きていけないのだ。
正直、その感覚さえ味わえればなんでもいいのだが生憎、こんな性格なので私を必要としてくれる人なんて居ない。だから私は仕事に依存する。
ふと、私は動画配信アプリを付けた。これを聴きながら仕事をするのが最近の日課だ。
"あ、いつも配信来てくれてるよね?こんな遅くに、いつもお疲れ様。体調崩してない?大丈夫?僕の配信聞くときくらいは、ゆっくり休んでね"
社畜でも、私を必要としてくれるなら…そんな思いで仕事をやってきた私。初めて、心配された。しかも見ず知らずの人に。
ドッドッ。胸の鼓動が早くなる。
…今日くらいは、ゆっくり休んでもいいかもしれない。私は少しだけ、明日が楽しみになった。
おかーさん!だぁーいすき!
そう言って私は母の胸に勢いよく飛び込む。優しい声、暖かい体温。全てが伝わってきて、思わずぎゅーっと抱きしめたくなるような。そんな母の愛情が大好きだった。
あれから何十年と経った。
私ももうすっかりおばさんと呼ばれるくらいの歳になってしまった。
「お母さん。おはよう。」私が、母の部屋に入ると
「どこなのここは!貴方だぁれ?私、自分の家に戻らなくちゃ!」そう言いながら部屋中を散らかしている母の姿があった。そう、母は重度の認知症になっていた。お父さんは母がまだ軽症の時に他界しているので、今お母さんを助けられるのは私しかいない。「あら?貴方どこかで見たことがあるわぁ。綺麗なお顔ねぇ…まぁ、なんで泣いているの?ほら、こっちに来なさい。私が拭ってあげるわ」
その言葉はまるで、小さい時好きだった母の愛情にとても似ており、私はまた、涙を流した。