教室。先生の問いに対して皆が静まり返る。
静寂の中心で、1人だけが静かに手を挙げた。
そして見事に正解を言い当ててみせた。
そんな人に、いつか僕もなってみたい。
張り詰める空気に潰されない。
誰もが責任を押し付け合う中、誰に流されるでもなく自身を信じ、自ら発言できるようなカッコいい人間に、なってみたい。
そう願ったところで僕の芯は変わらない。
変わろうとしない。
静寂の中心でスッと手を上げるあの人を眺め、静寂であることに努める。
そんなくだらない人間であること。
だけど、どうせ皆んなも同類だろうから。
紅葉は燃えるように赤くて綺麗だ。
だから紅葉狩りというものが存在する。
人は美しいものに囚われる。だけど美しく無くなってしまえばお終いだ。
人々を感動させた紅葉でさえ、燃え尽きて地面へ落ちてしまえば邪魔だと言われる。
誰もが羨ましがるあの人だって、落ちぶれてしまえば誰も見向きなんてしないでしょ?
人は今1番燃えているものが好きだ。
それはたった一瞬でも。暖かさを求めるように燃えている葉へと飛びつく。
燃え尽きれば次の葉を探す。
葉に火をつけるのは、暖かさに飢えた獣だというのに。
いつも通りの月明かりが暗い部屋を照らす。
貴方のいない部屋はやけにキレイで、それでいて寂しげだった。
貴方に別れを告げた今日の夜。
部屋に入ってベットに沈んだ。
暗い部屋には窓からの冷たい風と、静かな月光だけが流れ込む。
本気で好きだったの。私が浮気相手だって知る時までは。
昼間のデートなんてしたことなかったのに、横にいる女の子とはするんだ。なに?その笑顔。
私じゃダメだったんだね。
後悔なんてしていない。
ただ、貴方のいない夜が冷たくてキレイだっただけ。
今日だけ許して。
もう強がれないから。
今日だけは何もできないから。
お願いだから、今日だけは許してほしい。
別に何が辛かったとか、今日特別嫌なことがあったとか、そんなんじゃなくてさ。小さな小さな嫌なことが今日になって溢れただけなんだ。
とっても辛い人しか泣いちゃダメなの?
世界で一番辛くなきゃいけないの?
自分が泣きたくなったら、泣いて良いでしょ。
自分のことなんて自分にしか分からないんだから。
強くない自分を、今日だけ許してあげてね。
あ、あの匂い。
あ、あの服。
あ、あの髪型。
なんか、誰かに似てるかも。
あの人。いつも頭の片隅にいるあの人。
ふとした瞬間に思い出しすあの人。
「寂しい」そう感じた時に「誰か…」そう思うたびに、1番に顔が浮かぶあの人。
ねぇ、あなたは誰?なんで私の記憶に出てくるの?
なんで、誰かも分からないあなたを思い出すと、胸が苦しいの?なんで、私はあなたを思って涙を流すの?
誰か、誰か分かんないのに…
あなたを探してしまう私がいるの。