『星になる』
全てがいやになったあの日、私は空を飛んだ。
逃げたんだって責められるのならば、
そうであるとしか言いようがない。
事実、私はいやなものから逃げたのだから。
でも、いやなものから解放されて嬉しかった。
大切なあなたを、また会えるその日まで、
私は空から守ってるからね。
『遠い鐘の音』
風に乗ってきたであろう、鐘の音が聞こえた。
近くにチャペルがあったから、
そこからの音かもしれない。
違うかもしれないのに、ほんのりと幸せな気分になる。
違ったとしても、
聞こえた鐘の音に誰かの幸せを願った。
『スノー』
数年ぶりに雪が降った。
たまたま、私もあなたもお休みの日だった。
お庭に出て、舞っている雪を嬉しそうに見ている、
あなたの横顔に思わず見惚れた。
5分もしないくらい、はしゃいでから、
寒いね、と言って家に入った。
コタツに戻って、一緒にアイスを食べた。
とても、とても幸せ。
次に雪が降る年も今日みたいに過ごしたい。
『夜空を越えて』
とても近くにあるように見える夜空に手を伸ばした。
当たり前だけど、
星に届くはずはなくて、掴むことも出来なかった。
私とあなたの距離は、
少なくとも夜空よりは近いはずなのに、
手を伸ばしても、伸ばしても、届かない。
何故か夜空よりも遠くにあるように感じる。
夜空よりも遠くにいる何光年も先のあなたへ、
太陽に照らされた月の光のような、
そんな光をあなたへ送る。
『ぬくもりの記憶』
どうしても私の記憶から消えることはない。
おそらく、忘れることが出来ない。
今はもうないぬくもりは、
私を暖めてくれる時もあれば、私を苦しめる時もある。
早く忘れてしまいたいと思う時もあれば、
ずっと私の記憶に居続けて欲しいと思う時もある。
寒い日に手を繋いで帰ることも、
少し大きめのベッドにふたりで寝ることも、
少し遅くなる日 には、
温かいご飯を作っていてくれたことも、
全部全部、私の中に染み付いている。
どうして急にいなくなってしまったの?
どうしてそちらに行ってしまったの?
私をひとり置いて行かないで。
私も連れて行って。