凍える指先でタップする。
薄暗い風が吹く中、電話番号をもう一度確認して、
勢いよく受話器のマークを押した。
きっかり3コール後に通じた電話に、
「ちょっと!助けてください西園寺さん!今僕追われてるんです!」
と叫んでみた。するとあくびを噛み殺した西園寺さんに、
「知らん。今何時だと思ってる?夜中の1時だ。良い子は寝ている時間だよ。俺は寝る」
と、無情にも電話は切られてしまった。
ここで諦めてしまうと彼は本当に寝てしまうので、
諦めずに電話をかけるべきなのを僕は学習している。
またきっかり3コール後に、
「景子くん。今度は何に巻き込まれたんだ?君は女性なのだから気をつけるべきだと、俺は散々忠告しただろう。それを無視したのだから、全て君に非がある。俺は今回は手伝わないぞ。」
「そんな〜。絶対西園寺さんが関心ある案件ですよ今回は。とりあえず話を聞いてみません?」
「君はそう言って、俺を何度も危ない目に巻き込んだだろう。今度は、」
消えない灯があればいいなと、考えたことある?
僕はある。
小さな頃に家中の電気が止まったことがあった。
ガス水道も同時に止まった。
何も知らなかった僕は、なぜ電気が止まったのか分からなかったが、ただ、暗闇の中、寒くて、心細くて、なんでもいいから灯りが欲しかったのを覚えている。
何も無くても燃え続ける消えない灯。
手放した瞬間、後悔した。
今でも時々、あなたの横顔を夢に見る。
あなたが居ないとずっとこのままだ。
だけど、いつまで経っても
あの日々の価値は変わらず、愛しいだろう。
祈りの果てには絶望があると思う。
何もかもを巻き添えにするのが祈りだ。
だが、それも叶わないなら?
後に残るのは絶望だけだ。
叶わなかった願いを次に燃やすものもない中
眺め続ける。
これを絶望と言わずしてなんという。
たしかに昔の人は絶望の中には、
光が紛れ込んでいると言った。
しかしそれが何になる?
圧倒的な絶望の中で、
人は希望を感じることができるのか。
それとも希望だけを信じるのか。
もし、そんなことが出来る人間がいるならば
その人は、「英雄」と呼ばれるだろう。
灯火を囲んで、風に揺れる炎を眺める。
チロチロと揺れる度に、
暗い紅色の光と闇が打ち寄せあって、
まるで別の場所のようだった。
もはやこの一瞬に100年たとうとも、
この風景は変わらぬだろう。
チリ、とふと指が痛む。
その時突然、昨夜の怪我を思い出し、
利き手ごと炎に透かし見た。
しかし、そこには、あったはずの傷が無い。
それも、薬指