「どこにも行かないで」
その言葉が喉まで出かかっているのに。
心の中では叫んでいるのに。
現実の私が発した言葉は
「わかった。サヨナラ」だった。
物わかりの良いフリ。
諦めたフリ。
クールなフリ。
現実の自分に嘘をつき続け。
周囲にも自分の姿を欺き続け。
何も得るものはないのに。
むしろ失うばかりなのに。
全て解っているのに、その一言が言えない。
馬鹿な自分を自覚しながら、馬鹿な真似を繰り返す。
そして、自分の指の間から零れ落ちたモノを悔やみ続ける。
「君の背中を追って」
いつも君の背中を追っていた。
子供の頃から君は活発で、頭も良くて、クラスのリーダーで、皆に好かれていた。
それに比べて僕は、背も小さくて、勉強もスポーツも程々。
顔も並で目立つ事はなく、僕の事を知らない同級生も居るんじゃない?位の存在だった。
でも、君はいつも僕の事を気にかけてくれて、いつも声をかけてくれていた。
同情とか、クラス委員としての責任感とか、そんな事からだと思うけど、僕は嬉しかったんだ。
そして思ってた。
いつか、君に似合う様な、ちゃんとした大人になりたい。
君に見合う様な、いい男になりたい。
それが僕の原動力になって、ここまで来れたんだ。
君のおかげで僕は強くなれた。優しくなれた。
そして、今でも追いつけたとは思ってないけど、君が振り向いた時に見える程度の位置には居られたから。
君が僕を見つけてくれた。
見出してくれた。
そして、今。
今度は君ではなく、僕と君の愛の結晶の、小さな背中を追いかけてる。物理的に(笑)
やんちゃな娘に振り回されながらも、毎日充実した日々を過ごしている。
この上ない幸せを感じながら、君の笑顔に包まれて。
「好き、嫌い」
好き、嫌い。
貴方に対する私の気持ちは、いつもその二つの間で揺れ動いている。
女にも金にもだらしない所。嫌い。
嘘をつく所。嫌い。
私の気持ちを考えてくれない所。嫌い。
多分、私が貴方を嫌いだと思うポイントって、普通なら一発アウトな案件だと思う。
でも。
子供と動物に優しい所。好き。
困っている人を放っておけない所。好き。
嘘をついても、私を泣かせても、それでも最終的には私の所へ戻って来てくれる所。好き。
それで、結局好きが勝って、いつも許してきた。
でも、気づいた。
貴方の一番嫌いな所。
何をしても私が最終的には許すと思っている事。
そして、それに気づいてしまったら、流石にもうムリ。
もう、許せないし、戻れない。
気持ちは「嫌い」に振れたまま、そこから動かなくなった。
だから、サヨナラ。
もう、要らない。
「雨の香り、涙の跡」
外は雨。ジメジメ、シトシト。
洗濯物は乾かないし、髪型はキマらないし、お洒落しても服も鞄も濡れちゃう。
そして、それを理由に家に籠もる。
昨日までは一緒に居た貴方も居ないし。
もう、何処をどう見ても出かける理由が見当たらない。
強いて言うなら、涙の跡は傘で隠れる位かな。
でも、そんな気分にもならないし。
だから。
涙の跡がなくなるまでは。
気持ち良く、スッキリと出かける気分になるまでは。
この雨音に包まれて、一人の時間を大切に過ごしたい。
傷つく事も、その傷を癒す事も。
全て自己完結してから、外に出よう。
「糸」
糸。
細いけど、必ず何かを、誰かを、繋いでくれる。
服、靴、鞄。
蜘蛛の巣。
そして、人。
運命の赤い糸って本当なんだろうか?
それは解らないけど、でも。
確かに人との絆を感じる時がある。
それは、赤い糸ではなくても、確かに人と人を繋ぐ糸で、縁だと思う。
だったら、何故糸じゃなくてもっと丈夫なロープとかにしなかったの?って思うけど、あれは糸だから意味があると思う。
少しの力で簡単に切れてしまう糸。
だからこそ、切らない様に。
絡まらない様に。
長く紡げる様に。
努力が必要という事を示唆してるんだと思う。
運命とか、環境とか、運とか。
そんなモノだけに頼らず、自分も努力を続けろ、と言う戒めだと思う。