…軋んで、壊れそうだ
碧く熾り続ける灰が、
保てる臨界点を超えて、
尚も、降り続いてしまう
その引力は、強すぎて
下手に、言葉をかけられない
言葉をかけた瞬間、
僕も君も、逃れられずに
引きずり込まれてしまうのが、
わかっているから
想いは深く、
胸へと、自然に落ちる
でも、口に出せば、
その境界は、溶けてしまう
だから、黙っていることが、
唯一の祈りであり、
抵抗なのだ
黙っているうちに、
何か大切なものが、
埋もれてしまわないか、
案じてしまう
題 降り積もる想い
生を共にしようという申し出は
未来を結ぶようでいて
本当は
それまでの時間を
どう扱ってきたかが
滲み出る瞬間だ
噛み合わないまま
差し出された結び目
気持ちは
置き去りにされた
それでも
時間は角を落とし
その結び目を
ほどかず
裁かず
抱えたままにした
円満は
時間を丸く整えようとする
円滑は
今を滞らせずに流す
ふたりは
円満でなくていい
円滑であればいい
その流れの中に
温かみは
あとから
生まれる
題 時を結ぶリボン
ひとがいっぱいいる。
風はつめたいけど
光があったかい。
おおきな手は、
見る前から出てる。
指はそろってない。
うまく掴めない。
触れたら、
あ、これ。
ぎゅってしない。
落ちないって知ってるから。
歩く。
足が早くても、
ひっぱられない。
つまずいたら、
上にいく。
上を見なくても、
連れていってくれる。
どこに行くかは、
まだわからない。
ざらざらな指
握ってみると
ぎゅっと返ってくる。
題 手のひらの贈り物
あなたの痛みを
わかろうとするように
私の痛みも
見てください。
この言葉は
私の中に常にある。
誰にも渡さず、奥にしまってきた。
軽く扱われては溜まらない。
すべてを分かることはできない。
だから、分かろうとする姿勢が欲しい。
世界で
誰か、たったひとりだけでいい。
けれどこの祈りは、
高い理想として抱えているのだと、
大人になって、知った。
別の物差しで測られ
見当違いな理解もあった。
それでも
その奥を叩き続けたら
ひらけた場所も、あった。
分かろうとする姿勢は、
わからなさを血の滲む手で
咀嚼した先にある。
題 心の片隅で
足跡がつく前の雪。
「私はこういう人間だ」と
言わされる前の、君。
守られても、隔てられてもいない白。
意味を引き受ける前の、ただの在り方。
沈黙ではない。
語られないままの白さ。
意識の輪郭が生まれる前。
期待も、評価も、役割も、
まだ触れていない。
名を持たない感情が、
確かにそこにある。
雪の静寂はやさしく、
同時に少し残酷。
降りしきるあいだ、
遠くと近くは溶け、
時間は粒になる。
白い面に残るのは、
何も起きていない、という気配。
忘却ではない。
抱えきれないほどの、前触れ。
世界は黙る。
土も、水も、芽吹く予感も、
雪の下で息をひそめる。
踏み入られない雪。
まだ誰のものでもない場所。
世界に名を与えられる前の、
完全な白さ。
題 雪の静寂