もうこれ以上は、どうにもならないだろう。ねじれたものは、もとに戻らない。
リセットしよう。新しい世界へ行こう。わかりやすい悲しさや、寂しさなんて、もうずいぶん前のものだ。ねじれたまま、それが当たり前のように進んできた。今はむしろ、お互いそんな状態がよかったのだろうという気さえしてくる。
後悔はない。ああするのが、お互いのベストだった。すべてにありがとう。もう次へ進もう。鼻歌を歌うように軽く通りぬける。
さあ、さようなら。
「La La La GoodBye」
いつのまにか、すっかりねじれてしまった。お互いがんこだから、そのまま突き進んでしまう。なかなか折り合ったりしない。でも何かの拍子に、ふっとねじれが解けることがある。うわっと気持ちがかみ合った気がして、もう最強かなというくらい盛り上がる。
このままうまく流れていくと思っていたら、なんだかまた少しずつねじれていく。ぐるんぐるんとねじれて、もっとややこしくなってくる。ちょっと素直になる機会さえ、もうよく分からない。そんなことが繰り返されていく。
くるくる、くるくる、どこまでも。
「どこまでも」
あの交差点を渡れば、家へと続く道だ。二人で歩く時は、なんてことのない交差点だったけれど、今日はとてもつもなく大きな場所に見える。車が結構なスピードで通りすぎた。その勢いにおされながら少し後ずさりする。
「じゃあね」と帰っていった人は、もうこの交差点を渡ってこないだろう。違う方向へ進んでいくのだ。もしかすると、その先にはまた知らない交差点があって、違う道から来てもまた出会えるかもなんて思ってしまう。
信号が青に変わった。たくさんの車がずらっと控えている。顔をあげて、いつもよりしっかりと地面を蹴って歩いた。
「未知の交差点」
前を早足で歩く人が、コスモスの花束を抱えていた。広告紙で無造作に包んだそれを、少し持て余したように持ち替えている。あっ。下に向けた時、はらっと一輪落ちた。
「あの、花が落ちましたよ」。「あっ、すみません。良かったらそれ、もらってください」。せわしなく振り返って申し訳なさそうに、その人は小走りで行ってしまった。
家に帰って、ガラスのコップにコスモスをいける。真ん中の黄色は鮮やかで、ピンク色の花びらは、とてもみずみずしく見える。秋の気配が一気に流れ込んだ気がした。
「一輪のコスモス」
夕方、外に出るともう薄暗くなっている。日が暮れるのが早くなった。枯葉の匂いが混じったような、少し冷たい風が吹きぬける。昼間はまだ暑かったので半袖だった。歩き出すと腕がひんやりとする。
「お疲れさま」。聞き慣れた声がした。隣の部署の人だ。「半袖? 元気がいいね」。長袖の薄いジャケット姿で、颯爽と通り過ぎていく。
「あれっ? あの人、あんな感じだったっけ?」。久しぶりに見た長袖姿のせいだろうか。秋の空気のせいだろうか。遠くなっていく後ろ姿は、いつもと違って見えた。
「秋恋」