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12/8/2025, 6:12:46 AM

 あれ? すぐと言っていたのに来ない。駅を出て、冷たい空気に包まれている。吐く息が白い。今日は、かなり冷えている。はぁーっと何度か息を吐いてみる。白いもやが顔を囲んですぐ消えていく。子どもの頃は、よくこうやって遊んだなと思う。

 映画やドラマで白い息を吐きながら、セリフを言っているのを見ると、なんだかムードがあるな思う。きっと俳優さんたちは、寒くて大変なんだろうけれど、頬を寒さで紅くしながら、白いもやに包まれるのがいい。そのシーンをより盛り上げている気がする。

 ごめーん、と言いながら君が走ってくるのが見える。頬がほんのり紅くなって、白い息を吐きながらくる姿に、待ったのなんて全然気にならなくなる。

「白い吐息」

12/7/2025, 9:23:05 AM

 長年の習慣で、すっかり寝るのが遅くなっている。夜型なんだと勝手に思って夜更かししていた。でも体の不調があるのは、やっぱり早寝早起きしたほうがいいということだろう。

 少しでも早く寝ようと電気を消して横になる。なんだか目が冴えてなかなか眠れない。だいぶたっても一向に眠れないので、カーテンをちらっと開けて外を眺めてみる。

 遠くに見えるマンションの部屋の灯りが、何箇所かポツポツとついている。少ないけれど、まだ起きている人がいるようだ。なんだか仲間がいるようでほっとする。この部屋も誰かから、まだ電気がついているなと思われていたのだろうか。

 カーテンを少し開けただけで、窓の外の冷気が伝わってくる。しっかりと端まで閉めて、また横になる。少しずつでもいいから生活のリズムを整えていこう。眠れなくても目を閉じていよう…。

「消えない灯り」

12/6/2025, 7:23:38 AM

 年の瀬も迫ってくるととても慌ただしく、気がせいてくる。ただ、街の灯りは美しく、そこかしこでイルミネーションを楽しめる。でも、忙しい時は、そのキラキラがまぶしすぎる気がして、すーっと足早に通り過ぎたくなってしまう。

 少し疲れているかもしれないと思いながら、ちょっと立ち止まってみる。そこの街路樹につけられた灯りは一色で、温かみを帯びた優しい色みが連なっている。あぁ。灯りを見ると、ほっとした気分になってくる。寒いからだろうか。

 やっぱりこの時期の灯りはいい、そう思いながらイルミネーションの通りを過ぎた。少し高台に登って遠くに見えている山々のほうに目をやると、ふもとの街の灯りが点々と見えている。この時期は、特にゆらゆらと美しく揺れていて、それもよいなとあらためて思う。
 
「きらめく街並み」

12/5/2025, 8:19:46 AM

 あの引き出しの奥深くにそれはある。
もう会うこともないだろうと思っていたけれど、心のもやもやが晴れなくて、手紙を書いてみようと思った。もちろん出すことはない。
 
 本人を前にしては言えなかったことを、手紙には正直に書こう。それなのに、いざ書こうとすると相手が読むわけではないのに進まない。何だかまどろっこしい表現をしてしまう。妙に冷静になってかっこよく書こうとしたりする。もう正直に思いのたけを書いたらいいのに。

 なんとかがんばって書き上げると、それを丁寧に封筒に入れて封をした。それからあの引き出しの奥にしまった。それだけだけど何となく心の踏ん切りがついた気がした。

 それからあの封筒を取り出したことはない。時が経ち、その時のこともだいぶ忘れて、楽しかった時のことをぼんやりと思い出すだけになった。
 
「秘密の手紙」

12/4/2025, 8:47:09 AM

 それはもうひたひたと聞こえてきていた。朝晩のきんと冷えた空気。もう気軽な格好ではいられない。厚めの上着を着て首元をしっかりと包む。

 あんなに美しく紅く色付いていた木は、半分以上の葉が地面に落ち、枝が見えている。一面に落ちた葉をザクザク踏み締めながら歩いた。それもしだいに粉々になり、土へと還っていく。

 木が枝を見せ、骨格があらわになると、より風が冷たく感じられてくる。風をさえぎるものはない。短い秋が終わりを告げている。

 秋のはじめにはまだあった、虫などの生き物の気配もあまりしなくなってきた。地面もひっそりと静まり返って、冬を迎える準備が整っている。
 

「冬の足音」

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