目の前で電車が行って、バックを見れば、忘れ物に気づいた。電車を降りると、予報にはなかった雨がパラパラと降り出した。やれやれ、と思う。何とか一日を終えて帰宅する。
夜、横になって思う。電車に乗り遅れたから、気になる人に出会えた。忘れ物のおかげで、間に合わせに買ったものが、なかなか使い勝手がいいと気づけた。傘も貸してくれる人がいた。
いい一日だった。眠りに吸い込まれていく。
今日にさよなら、おやすみなさい。
「今日にさよなら」
この間、コップを割ってしまった。テーブルで袖が引っかかって、あっと思った時には、コップが弧を描いてスローモーションのように落ちていくのが見えた。
少し奮発して買ったお気に入りのものだった。ずっと棚に飾っておいても仕方がない、このまま使わないままになってしまうかもしれないと思って、日常づかいにした。
あー、こんなことなら飾ったままにしておけばよかった。いやいや、使っていた時、その佇まいや、使い心地にずっと癒されていたはずなのだ。そのひとときを楽しめたのだから。
まだ信じられない思いで、割れたコップを眺める。それにしても、お気に入りのものに限って早く割れてしまう気がする。また、お気に入りを探そう。そう思うと少し心が軽くなってきた。
「お気に入り」
素っ気なくしかできないし、
ぶっきらぼうだ。
誰よりも素直になれない。
それなのに本当は、
誰よりも君を想っていると思っている。
「誰よりも」
今できることをしてください。やりたいことは、先送りせず、やってみてください。
頭の中だけで、とやかく考えて、できるかなんて心配しても、もう十分色々悩んできているのだから。
たとえ、うまくいかなかったって、挑戦したということだけでもよかったと納得できるから。やってみる前に、あれこれ思い悩むのはもったいないのです。
とにかく、興味を持ったことは何でもやってみてください。
「10年後の私から届いた手紙」
デパートの地下を通ると、たくさんのかわいい缶が並んでいた。よく見るとチョコレートを入れたものだった。
缶入りが流行っているらしく、色々な種類がある。どれも趣向を凝らしてあり、かわいらしい。思わず缶のデザインばかりを目で追ってしまう。チョコレートを食べた後、このサイズだったら何を入れるかな、なんて考えていた。
自分用に一つ買おうと思った。缶を選びながら夢中になる。目移りしながらも、美しい花の絵がついた小さな缶を選んだ。丸いチョコレートが二つ入っていた。
大切に袋を抱えて外に出る。マフラーを巻くと、ふわりとチョコレートの甘い香りがした。
「バレンタイン」