手のひらの贈り物
小さい頃の記憶。
花を一輪つむ。
もう一輪、もう一輪とつみ左手に納めていく。
色とりどりの花弁たち。
これを栞にするのだ、とあなたは言う。
私もあなたに習い、一輪また一輪とつんでいく。
両手いっぱいの花が手に入った。
庭にある花畑はまだまだ広がっている。
これくらいにしようか、と言うあなたと共に
家の中に入りおし花を作るため花を乾かす。
二、三日待つらしい。
手伝ってくれたお礼にと
分厚い本とココアを持ってきてくれた。
ココアを飲みながら読み聞かせをしてもらう。
書いてあることは難しいけれどあなたの声は落ち着く。
そうこうするうちに私たちは寝てしまっていた。
少しだけ外が薄暗い。
あなたはまだ寝ていたので起こすまいと
音を立てずに外へ出る。
庭の花畑を見ているとあるものが目に入る。
「四葉のクローバーだ」
四葉は縁起がいいとあなたは言っていたっけ。
四葉のクローバーを一輪摘み取り家に入る。
それをあなたの手のひらにのせ、
私は隣で横になる。
起きたらどんな反応をするかなと想像し
あなたが起きるのを待っていたが、
あまりにも遅いためまた寝てしまっていた。
目を覚ますとあなたの後ろ姿。
机上には私があげた四葉のクローバーが
瓶の中に入っており、
それを見たあなたは優しく微笑んでいた。
心の片隅で
午前八時五分。
教室に入るあなたの横顔。
あなたを見つめるには特等席のこの場所で
今日も私はあなたに恋をしている。
ハキハキとしたその声も
チョークを持つ長い指も
たまに交わる視線も
全部が大好き。
そうずっと変わらない、3年間の片思い。
卒業すれば会えなくなる。
でも告白なんてできない。
だってあなたの薬指にはあなたが愛している人との
お揃いの指輪がはめてあるのだから。
でもね、
照れたら頭を搔く癖も
実はにんじんが少し苦手なことも
誕生日は手紙派なことも
全部私だけが知ってればいいのになんて思ってしまう。
誰にも言えない私の秘密。
あなたには迷惑かけないから
もう少しだけ好きでいさせて。
夜空を越えて
『火星は人が住めるかもと言われている。
もちろん宇宙服なしでは住めない。
だが現在、水や生命体の存在が期待されており
人類が住める可能性のある星とされている。』
学校の授業で太陽系の星を調べることになり、
私の担当は火星となった。
本に書いてあることを要約しながらプリントに写す。
最近はタブレットが授業でも主流となり、
図書室であるというのに
ほとんどの人がAIに頼っている。
私は本のほうが馴染みがあるため使わないが。
プリントを最後まで埋め本を閉じる。
(天体に興味はないがこれは面白かったな)
火星以外の色んな惑星のことや
衛生、恒星なんかも載っていた。
私は地球以外の星へ行きたいなんて思わない。
日本から出たいとも今は思わない。
けれど分野を問わずたくさんの知識をつけて
想いを馳せることも一興かと思う。
凍える指先
今日から始めたランニング。
ランニングのために新しく服も買った。
いざ走ってみると案外温まるものだ。
人も居らず雑音もない。
聴こえるのは鳥のさえずりだけ。
布団から頑張って出たかいがあったなと思った。
ただ少し指先が冷える。
手袋をつけてきた方が良かったかも。
いやこの手や耳の冷たさが冬を感じて良いではないか。
明日も走ろう。
三日坊主常習の私でも続けられそうな気がする。
きらめく街並み
家々の灯りが街を照らしている。
都会では星が見えない。
建物の灯りが多いから。
でも星が見えない代わりに街が照らされ、
きらめく夜景が見られる。
いつも独りだけれど、
この中で生きている私は孤独ではなかった。
街が私を照らしてくれる。
ひとりじゃないと思わせてくれる。