あじゅ

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2/21/2026, 11:30:42 AM

昔のあの子は、可愛いと噂の女の子だった。柔らかく揺れる茶色っぽい髪に、ふわふわのスカート。零れ落ちそうな程に大きな丸い目とふっくらとした頬。我が侭で、意地の悪い性格。彼女はまさにお姫様だった。
小学校は彼女のお城で、先生も生徒も彼女にとっては従僕か奴隷かといった状態。そんな中、地味で目立たない私がいじめの対象となったのは当然だったのかもしれない。
比較され、蔑まれ、暴力と暴言によって、幼い私は形成されていった。とはいえ、別段悪いようになった訳ではない。早い話、酷く冷めていたのだ。

中略

同窓会で再会した彼女は、あの頃など見る影もない姿をしていた。痛んで引き千切れそうな金髪に、不相応な服のフリル。横に大きくなった体躯と荒れた肌。我が侭で、意地の悪い性格だけがあの頃と変わらなかった。
鼻息荒くわめき散らす彼女の金切り声が、私の元へ一直線に向かってくる。何事かをまくし立てていたが、一つも意味を持ってはいない。その手が振りかぶられたことで、彼女は警備に引きずられていくことになった。
「大丈夫?あんなのに絡まれて、災難だったね」
何時だったか、いじめに加担していた女が声をかける。かつての仲間をあんなの扱いとは呆れたものだ。
「別に、平気だよ。むしろ……」
見た目しか取り柄のなかった女が、その唯一すらも失いわめく姿がとても滑稽で。
「自分がどう見られているのかも理解できない幼さに、心底同情するよ。」
嗚呼、何だかとても愉快だ。

2/13/2026, 12:47:51 PM

雨が降っていた。暗い空と、反射した光にクラクラとした。蛙が、煩かった。あの日の温度を、今でも鮮明に覚えている。それなのに―――

君の声だけが、思い出せない。

梅雨。雨ばかりで憂鬱な、主に6月頃を指す。彼がいなくなって、凡そ10年。雨は、嫌いだ。

――中略――

嗚呼、思い出した。あの日、君が言った言葉を。
走る。ただ、息を切らして。約束を果たす為に。だからお願い。
あの場所で、待っていて。

1/22/2026, 10:25:41 PM

みんなには無くて、僕にはある特別なこと。
例えば教科書の中身が少し変わっていたり、前に見たはずのニュースがまるきり無くなっていたり、昨日まで元気だった近所のお婆さんが、1週間も前に亡くなっていたりするような、軌道修正されていく世界から切り離された記憶を視る力。
みんなといるのに、ひとりぼっちみたいな疎外感を抱えている。近いのに遠くて、まるでアニメや漫画を見ているような感覚。いつかみんなが、自分の知らない何かになっているのではないかという恐怖に、それでも狂えない自分が憎らしい。
ふらりと立ち寄った公園の先、大きな木の下にある、いつもとは違う何かが目についた。音を立てて開いたそれから出てきた人型の何かが、嬉しそうに言った。

「やっと見つけた、僕のタイムマシーン」

1/14/2026, 9:42:52 PM

ひとでなし。きっと、私を指すための言葉。
初めに言ったのは、いったい誰だっただろう。両親の葬儀の時か、クラスメイトと言い争った時か。兎に角、産まれて此の方感情の高ぶり等というものを感じた事の無い私をひとでなしと表現するのは妥当だと、子供ながらに思ったのを覚えている。
そう、何も感じない。その筈なんだ。今、握られた手が酷く熱いのも、心臓が嫌に速く跳ねるのも、喉が渇いて言葉が出ないのも、きっと、何かの間違いのはずで、だから。

――また、あなたに会いたいです

そんな優しい顔で笑わないで。私は、貴方なんかに会いたくない。これ以上、掻き乱されたくない。人になんて、なりたくない。ひとでなしであり続けたいのに、貴方が不安そうな、そんな顔をするから。
「……たまに、なら」
笑ってほしいと、思ってしまった。もう、戻れないと心が叫んでいる。嗚呼、本当にどうしてこうなってしまったのだろう。

11/16/2025, 10:06:41 PM

溶けて消えてしまいそうだ。
夜闇の中で儚く笑う君に、ふとそんな不安を感じた。冷たい風に吹かれた木々が、ザワザワと音を立てる。



君を照らす月

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