バレンタイン
きっとあの人は僕には興味がない。授業が同じになれば話す程度の仲なんだ。今日は普通の日と変わりない。期待なんてするだけ無駄だ。もしも、貰えたとしても義理だろう。僕なんてあの人からしたらただのクラスメイトと変わりない。甘味を送り合うほどの気はさらさらないでしょう。だけども、今日という日はなぜか希望を持ってしまう。微かな灯りのように、一縷の望みのように夢を見てしまう。
そうだ、今日はバレンタイン。
待ってて
あの日、絶望の底に沈みきった私をその手で救い上げてくれたあなた。あなたは蜘蛛の糸。あれから私はあなたへと陶酔してしまった。もう私の視界にはあなたしか写らないの。例え、あなたと住む国が違っていても、存在する次元が違っていても私が"アナタ"と呼ぶのはあなたしかしない。この火中からあの日のようにあなたを救えるのは私だけなの。あなたは私の首に巻かれた生命線。あなたは、お空に輝く星のように私に希望を与え、運命のように私に人生を賭けさせる。
私はあなたを救うから待ってて。そしてもう一度私を救い出して。あなたに忌み嫌われても、何でも差し出す。
お金でも、人生でも、私のすべてをいつまでも貢ぐ。
だって、あなたを愛しているのだから
伝えたい
心の中で思うことは簡単なのにどうして、口には出せないのだろう。難しい言葉じゃない。誰かを否定する言葉ではない。口にすることで損をするわけでもないし、お金が減るわけでもない。ただ、面と向かって言うとなると恥ずかしさが込み上げてくる。毎日何度も思うのに毎日言うことができない。この言葉を言わないでずっと過ごすなんていうことはできない。誰かの言葉を借りて言うことはしたくない、自分の言葉で自分の口から言いたい。この大きな感情を込めた大切な言葉を。あなたの手を握り締め、目を合わせて、そっと優しくこの言葉を優しくかけてあげたい。。「あなたと一緒に生きていられてよかった」なんて少しよそよそしい感じがする。だから、「いつもありがとう。愛してるよ」とあなたに伝えたい。
この場所で
「あなたとはもう一緒にはいられない」と言われてからもう何年たったのだろうか。あなたはどこへ行ってしまったの。あなたと過ごしたあの日々はどこへ還ってしまったの。私が今覚えているのは、あなたの後ろ姿と海へ沈んでゆく真っ赤な夕焼けだけ。幾つもあなたへ手紙を送っても届いているかはわからない。もう一度、あなたと笑い合っていた日へ戻りたい。だから、私は今日も此処であなたを待つの。
あなたと出逢ったこの場所で。
誰もがみんな
町を歩けばカップルで歩く人がいる。友達数人のグループで笑い話をしながら歩く人たちもいる。誰かと電話をしながら足早に行く人もいれば、一人でのんびりと音楽を聴きながら歩く人がいる。そこには優劣や惨めさを感じとることはない。でも、心のなかには寂しさや怒り、脆く崩れそうな感情が震えながらでもあるのかもしれない。私は寒空の下、一人佇んでいるとそう思うことがある。孤独に冷えきり、幽かな灯りで暖をとるように生きる現代では、一人を強く感じることが多いだろう。だけど誰も一人ではない。誰もがみんな誰かに愛され、誰かに必要とされるときが来るのだろうから。
友達や家族、恋人ほかにも言葉で表せない関係性でもきっといつか、あなたは誰かの必要不可欠な存在になる。もしくは、誰かを必要不可欠な存在とするかも。そう思えば、寂しさで世界に溶けていきそうな夜でも、少しの灯りで自分の輪郭を取り戻せるから。