君を照らす月
最近、照明をあちらこちらにつけはじめた夫
防犯対策用にね敷地内ライト
エコ補助金があるんだってとリビングにLEDを
やたら理由を付けてくる
100均だよこれ おーとりあえず使えるな
太陽光発電足元ライトを玄関アプローチに
物入れを整理したから…
日暮れが早くなってきたからね倉庫にも燈を…
あとどこにあればいい?
「そうだ玄関ドアにも人感照明つけようか?
鍵穴見つけやすいだろう」
「ネエ、そのうちクリスマスイルミネーションみたいな家になっちゃうよ」笑いで茶化してみたけれど、本人はいたって本気だ
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「ありがとう、私のためにだよねこれ全部」
以前に増して明るさの感度が落ちた私
先月主治医から視野の狭さを数値で告げられた
知り尽くしている我が家でも暗がりに適応できなくなってきているのは薄々わかっていた
でもこんなに見えなくなっていたなんて…
彼も付き添ってくれていたんだあの日は
この沢山の満月の様な光
私の動線に配置してくれたんでしょ
私が暮らしやすい様に怪我のない様にって
私を見守るために
あの時、
君を照らす月でいようとか…あなたは思った?
なら 全く不器用で らしいよ
木漏れ日の跡
何じっと見てるの?
おばあちゃん、ほっぺによごれがついてるよ
ここにも
あぁシミのこと?
お日様と沢山遊んだからよ
おばあちゃんは木の下で本を読んだりお茶を飲んだりお昼寝したりするでしょ
木漏れ日って知ってる?葉っぱの間から入って来たお日様の光のことなんだ
ほら見て ちょうどほっぺが光ってる
本当だ
まきちゃんのお顔も
こことここにお日様がとまってるよ
だからあったかいでしょ
お日様がずーっとくっついているとそこが茶色くなってくるの
おひさまの足跡みたいなものなんだ
えーっ
わたしお顔あらってくる
おばあちゃんも早く早く
日焼け止めぬらなくっちゃ!ねっおばあちゃん
そっそうだね…
ささやかな約束
そもそも約束は苦手
自分から口に出すことはない
理由はそれにとらわれるからだ
「ねっ約束よ」
ちょっとのことにもこの言葉を言い放つ人
口癖なら勘弁してよと思うくらい
今日こそは言うよ
「1日一体いくつ約束をしてるんだってぇ」
言われた相手のこと考えてよ全く
「私、生真面目なんだから
あんたとの約束のことばかり気にしていなきゃならないんだからね」
ここまで言ってハッとした
あーっ
たぶん…
祈りの果て
うちのまちは夕日の景勝地らしいよ
この町出身のお天気お姉さんの推しだから
確かにね
私は日没後の光が好き
ほらこの茜色の残照は神秘的でしょ
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特に沼を見下ろす高台は
富士山と夕空と水辺が織りなす絶好のポイント
ラッキーなことに我が家の近く
住み始めて30年、リタイアした今は
この丘へ出向いては夕日で身を清めるのが日課になってきた
黄昏が似合うお年頃になったのかしら by妻
長年の穢れを流し身軽になりたいだけなのだ by 夫
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今年もダイヤモンド富士の時期だなー
夫が浮き足立ってきた一年に数回の特別な日
こればっかりは運と忍耐が必要でどれだけ足を運んでもそうそう見られるものではない
今日は間違いないさ自信たっぷりに夫が誘う
丘の上で 今日こそは と祈っていると
いつの間にか人垣ができていた
ここ数日で1番の人出だ
妙な連帯感が湧いてきていける気になってくる
昨日は直前の雲に惜しくもジエンドだったけど
そろそろ運命の一瞬だ 寒風に身を晒し真剣な眼差しで夕日に集中する人人人
歓声の後に静寂が訪れた丘では動きが止まった
卑弥呼を崇める古代人の様にただ魅入っている
ダイヤモンド富士だ
それもパーフェクトな姿
皆の祈りに応えてくれた
心の迷路
「おいおい考えてから喋れよ」
連れ合いにまた忠告された
「思いつきで行動するなよ
くじ引きじゃないんだから…」
今の私は軽快じゃなく軽率に見えるらしい
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先の先を考えてしまう癖
出口を俯瞰できるわけでもないのに
寝食を忘れて考えるばかりで行動ができない
心の迷路はどんどん複雑になりゴールは更に遠ざかる
何年か前まで自分はこうだった
最適の答えを探して心の中でシュミレーション
まずは一歩、ゆっくり進むことを病と老いから学んだ
1人先読みし過ぎて見えないものに心を注ぐより
まずは一歩踏み出して
ゆっくり進めば周りも見える
引き返す気楽さも生まれてくる
良かれとどんなに悩んで出した答えでも
先のことなんて誰もわからない
人生万事が塞翁が馬
うん、実感してるよ今の私は