白井墓守

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11/17/2025, 2:40:43 AM

【君を照らす月】

君を照らす月を、僕は食べたいと言った。

すると君は笑って、僕にこう言った。

「お腹空いてるの? 仕方ないなぁ、ほら月見バーガーだよ」


毛むくじゃらの狼男が血走った目で、ヨダレをぼたぼた垂らしながら空腹を訴える発言は、聞く人にとっては見も毛もよだつような恐怖を与えるだろう。
しかし、目の前の天女の生まれ変わりかとも思えるズレた感じの人間は、どうにも掴めない性格で、こちらの狂気が宥められるのを感じる。

俺は大人しく、小さな小さなな手から唾を飲み込んで目を離し、小腹をも満たせないようなバーガーが一口で胃に入れる。

「どう? 美味しい?」
「…………うん」
「あは! やっぱり、秋になったら一度は月見バーガー食べなきゃ、秋って気がしないよね!!」


とある月下で。
狼男としての呪いに悩まされる男と、天女のような不思議な人間が出会うことにより、新たな物語が始まる。

――これは、食べたくないものが、泣きながら食べることになる話。


……続かない。

おわり

11/15/2025, 10:58:03 PM

『木漏れ日の跡』

「木漏れ日の跡って知ってる?」
「なんだそれは」
「この世の中にはね、妖精さんっていう者が居てね……!」
「お……おう?」
「その中に、木漏れ日の妖精さんが存在するんだって!」
「お、おぉ?」
「木漏れ日の妖精さんはね、木漏れ日から木の下を歩く人間たちを見ていて、これだ! と思った人に付いていって、幸せを届けてくれるんだって! でも、木漏れ日の妖精さんが着いてるかどうかは、着いてる本人には分からないの!」
「あー」
「でも、たまに『あれ? なんか自分ちょっと運いいな、この頃』って思うことあるじゃん? それが木漏れ日跡現象、通称木漏れ日の跡って、訳!」
「……そうか」
「あーあー、僕にも木漏れ日の妖精さん、ついて来ないかなぁ! 妖精さんと一緒に暮らしたーい!」
「なぁ、一つ聞くが」
「なに?」
「その妖精さんとやらは、宿主に一緒に居るのがバレると居なくなってしまうとかいうシャイな一面は合ったりするのか?」
「いや、聞いたことないけど? なになに、誰かと一緒に居るの見つけたの!? 誰誰? 教えて教えて! 僕も妖精さん見たーい!!」
「……お前は、無理じゃないか?」
「な! なんでそんな酷いこと言うのーー!?」
「いや、だって……妖精さんが着いてるの、お前だぞ?」
「…………へ?」

おわり
 なんか今日は地の文書く気になれなかった。

11/15/2025, 2:20:05 AM

『ささやかな約束』

ささやかな約束をした。
五分後には忘れていて、たまにふと思い出すことがあるような……よくある普通の何てことない約束。

きっと、この約束を叶えることはないだろう。
なんて馬鹿みたいな僕は思っていたのだ。

――どうして、そんな事思えたのだろう。

幸せ過ぎたからだろうか。
僕は誰でも知ってる当たり前ことを失念していたのだ。
……人が死ぬなんて、当たり前のことなのに。

「君との約束、今ここで果たすよ」

僕はそう言って、彼女との約束通り。
物言わぬ彼女の唇に、最期の口付けをした。

『もしも私が死んだらね、最期にキスしてね! そしたら、そうだなぁ……もし他に好きな人が出来ても、仕方ないから許してあげる! ……だって、あなたには幸せになって欲しいから』

おわり

11/12/2025, 11:22:02 PM

『心の迷路』

心の迷路って何だろう。

ぐちゃぐちゃな気持ちだろう。
好きなのに、嫌い。
あの人は笑ってくれて嬉しいのに、もしかしてあの笑みは営業スマイルで裏で私をあざ笑っているんじゃないのか、と疑ってしまったり。

そんな出口の見えない、心の迷路に迷い込んだときは上を向いて生きよう!
太陽から浴びる光が、あなたを前向きな思考にしてくれます(個人差あり)
俯いて歩いていると、太陽の影を見つけてじめじめとする。

上向いて進むので、もっともっともっと!!!
そして気がつくでしょう、太陽の見える方角に。
目印が増えましたね!!

他にも……
お腹が空いて空腹なのは、あなたが生きている証拠!

そのアンハッピーもいずれハッピーになる。
そう思うと、心の迷路も悪いばかりではないのかもしれませんね!!



「なんだ、この安っぽいビラ」

おわり

11/12/2025, 8:09:26 AM

『ティーカップ』

ティーカップにトイプードルが入っている映像を見たことがあるだろうか。
大変可愛らしいものだ。
SNSで、よくバズる。

では、ティーカップにおっさんが入っている場合はどうなのだろう?
大変汚らしいが、これもSNSでバズるのだろうか。

今宵、大学生となる矢島喜多郎は、目の前に、久しぶりに出した母の遺品のティーカップから、変なおっさんと目が合うという、人生初の奇天烈な邂逅を体験している。

「よぉ、坊っちゃん。どうした、キティがバックなステイにキューリを置かれたみてぇな顔しやがって……まさか、チェリーじゃねぇよな?? ははっ、これは厄介だ。拗らせオタクボーイが一番面倒くせぇんだからよぉ」

「喋った」
「そりゃあ喋るさ、そっちこそ眼球付いてないのかい? オレっちには、立派な歯がついてるのが見えんだろぉ?」

そう言ってソイツは、妖怪ネズミ男みたいな出っ歯を突き出して、キリーンっと輝かせさす。
なんだこれ、イケメンの歯でしか見たことがないぞ、てか現実でもあるんだ、アニメの表現しかないと思ってた。

てか、なんだ。そもそもこの生き物は。
江戸っ子と口の悪いB級アメリカン映画のキャラと、なんかタダのそこらの飲み屋の酔っぱらいみたいな喋り方は。せめてどれかに統一出来ないのかよ。

僕がうずうずと、腹の中で言葉を洗濯機のようにグルグルしていると、アイツは立ち上がって前髪をキザにさっとかきあげ(しかも、また何故かキラキラがでてる、なんだこれ)こう言った。

「じゃ、盟約通り、オレっち今日からココに住むから、お世話よろしくな、オタクチェリーボーイくん」

「はい?」

これは、呆気に取られる僕と、ティーカップに入ったおっさんが一緒に暮らし始める物語。


……続かない。

おわり!


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