今までお元気でしたか
最近急に寒くなりましたね
あなたのような立派な木でも、寒いと感じる事はあるのでしょうか
私は急に寒くなったので、慌てて冬服を出しました
油断していました
なんというか、毎年こんな感じな気もします
なかなか人間というものは学習しない生き物なのかもしれません
毎年あなたが紅葉してから来るのですが、今回この時期にここに来たのは理由があります
実は海外に出張が決まり、今年いっぱいは日本を離れることになりました
あなたが紅葉する様子を見れなくて残念です
日本を出る前に、あなたの見事な紅葉を見たかったのですが、今年は暖かい日が続き準備ができてないようですね
あなたの紅葉があまり進んでいないようなので、少し心配です
急激な温度変化なので、お互い体調を崩さないようにしましょう
健康が一番です
日本にまた帰ってきますが、あなたはその頃眠っていることでしょう
次に会うのは来年の春ですね
たくさんの葉っぱで生い茂っている様子を想像すると、とても楽しみな気持ちになります
また会いましょう
「スリル欠乏症だな、おい治療の準備しろ」
医者は周囲の人間に指示を出す
医者は眼の前にいる、表情のない男に視線を向ける
無気力、無感動はスリル欠乏症の典型的な症状だ
スリル欠乏症とは、人体に欠かせない栄養素であるスリルが足りなくなる病気だ
これを発症すると、人生を無価値と考え始め、自分から何もしなくなる
重症化すると一人では何もできなくなり、自殺者もでる
予防法は常日頃からスリルを味わうこと
しかし、スリルとは危険と隣り合わせだ
人間社会が発展した結果、あらゆる危険が排除され、人類は慢性的なスリル不足になった
特に今年はひどく、連日スリル欠乏症患者が運ばれてくる
治療法は確立されている
スリルを味わえば良い
すなわち絶叫系が最適解
「先生、準備できました」
「よし、逆バンジー、やれ」
医師の指示で男が勢いよく、空へと飛び上がる
男がなにかを叫びながら、もがいているのが見える
「よし患者は正気に戻ったな」
「すぐに降ろしますか」
「いや、見たところ重症だ。もう少しスリルを味わってもらおう」
医者はもがく男を見上げながら確信する
自分はスリル欠乏症にはならないと
なぜなら自分には秘密がある
知られたら破滅する程の秘密があるのだ
その秘密というのは、私が医師免許を持っていないということである
バレるかもしれないというスリルは、この病気に対して良い薬だ
お陰で人生は楽しい
やはりスリルは人生を豊かにする
これだから医者はやめられない
飛ばないのかだと?
当たり前だ
翼だけでは飛ぶことはできん
なに言ってるんだという顔をしてるな
説明してやる
まずはコア、つまり中心部だな
なんでもそうだが、芯が通らないやつはどれだけやっても、何も出来ない
次に翼
ああは言ったが、やはり翼はいる
芯がどどれだけあっても、それだけでは飛べん
空を飛ぶという偉業をなすには、他から助けがいるということだ
3つ目はエネルギー
空を飛ぶというのはいろいろな方法がある
基本は燃料を使って、沈む前に浮ぶやつだ
滑空など風に乗って永遠と飛ぶやつもいるが、どちらにせよ離陸の際はエネルギーを使う
何、たんぽぽの綿毛は風でそのまま風に乗って飛んでいくだと
ばか、あれは飛んでるんじゃなくて、飛ばされてるんだ
4つ目がある程度の重さだ
軽すぎると、さっき言ったように、綿毛みたいに飛ばされちまう
重すぎるとそもそも飛べない
飛ぶ理由も飛ぶやつも
軽すぎず重すぎず、何事も程々が一番
最後は舵取り
飛んだところで行き先が決まらないと話にならない
飛ぶことはできるかもしれんが、飛んでいるだけだ
言いたいことは分かるな
俺達にはお前が必要だ
俺たちはただの飛べない翼だ
でもお前は違う
飛んで行きたいところがあるんだろう
お前にはちゃんと芯があって、
俺達のような翼がいて、
誰かを動かすエネルギーを持っていて、
正しい信念を持っていて、
行きたいところがある
十分だ
俺たちが飛ばしてやる
怖いだと
当然だ
飛ぶというのは、恐怖との戦いだ
そら、お前に向かって風が吹いてきたぞ
お前の進路を阻む逆風だ
だが、飛ぶには逆風が最適だ
さあ、行くぞ
風を受けて今、お前は飛び立つんだ
あるところに立派なススキ畑がありました
それは立派なススキ畑で地域の人々から愛されていました
ある日ここに宇宙人がやって来ました
「なんて素晴らしいススキ畑だ。アートを残していこう」
そう言って彼は立派な大木を残していきました
そう彼は宇宙の迷惑系のアーティストだったのです
しかし地球人には彼のアートは理解できませんでした
突如現れた大きな木に誰もが怖がりました
今では誰も近づきません
ある時、このススキ畑に、とある噂が流れました
噂を聞きつけ、二人の若者がやってきました
彼らはススキ畑をくぐり抜け、木の下に辿り着きます
背の高いススキでしたので、周りはススキだけしか見えません
まるで、世界には少年と少女だけしかいないようでした
少女は真っ赤になりながら言います
「あなたに伝えたいことがあります。えっと、その、あなたのことが―」
そして彼女は噂に従い、来る時に拾ったススキを前に突き出し言いました
「ス、スキ」
こうしてまた一組のカップルが誕生しました
程なくして、ススキ畑は恋愛成就の名所として語り継がれることになったのでした
めでたしめでたし
ようこそお越しいただきました。
ここは脳裏焼付サービスです。
脳裏に焼き付いた景色がないから、仲間にハブられそう
今際の際に思い出す光景がないと格好がつかない
今脳裏に焼き付いている物が気に入らない
そんなお悩みがある方に対し、我々はお手伝いさせていただいております。
皆様に人気があるのはコチラ
紅く染まった秋の山です
情緒があって良いと評判です
他にも桜やヒマワリなど花がある風景も人気です
おや、あまりお気に召されませんか
でしたら動物などどうでしょう
子猫や子犬を希望される方も多いんですよ。
他にも車や神社などの人工物
変わった所ではミドリムシの人もいましたね
流石に、あれはよく分かりませんでしたが
ああ、もしここにないものがご希望であれば写真や動画をお持ちいただければ、割高にはなりますが焼き付けることもできます
そういった方は家族や恋人のものを持って来られます
中には好きなアイドルを焼き付ける方もいますね
もちろん秘密厳守致します
えっ、止める、ですか?
焼き直しできるとはいえ、高くないお値段ですからね
よく考えるのも良いでしょう
大丈夫です
気にされることはありません
実際、初回は悩まれて見送る方も結構いらっしゃいます
こちらカタログになります
ご検討なさってっから、またご来店下さい
またのお越しをお待ちしております
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俺は自分が殺した男の前に立っていた
俺は他人の心を読むことができ、特に死ぬ間際に見せる脳裏に焼き付いた光景を見るのが大好きだ
十人十色とよくいったもので、その光景はバラエティーに溢れている
しかし、この男の脳裏に焼き付いた光景は、理解不能だった
まず脳裏焼付サービスってなんだ。
どこに需要があるのか
それで焼き付けて満足するやつがいるのか
この男の脳裏に焼き付いた光景が、その人生で数少ない女性(店員)との会話というのが悲しすぎる
というかこれ会話じゃないだろ
あと、その女性店員の笑顔は営業スマイルだぞ
くそ、モヤモヤする
心を読んでこんなに気分になるのは初めてだ
なにか気晴らしをしなければ
また誰か殺すか?
そう考えながら歩いている間、ずっとさっきの光景が頭に浮かび続ける
もしかして、あのしょうもない光景が脳裏に焼き付いたのだろうか
―今脳裏に焼き付いている物が気に入らない
―そんなお悩みがある方に対し、我々はお手伝いさせていただいております。
俺は目を閉じて熟考し、決断する
行こう、脳裏焼付サービスへ
この脳裏に焼き付いた光景を消しに―